
来年2月に韓国・平昌で開催される冬季オリンピック。なんと、その競技の一部を北朝鮮で行う計画があるという。
20日、韓国のト・ジョンファン文化体育観光相は「平和のオリンピックになるべきだ。その核心には北朝鮮選手団の参加があり、平和のオリンピックとする過程を通じて行き詰まっている南北関係の改善、解決になるオリンピックになればいいと考えている」と発言。

韓国の中央日報は、スキーなどの一部の種目を北朝鮮の「馬息嶺スキー場」で行う案も検討中だと報じている。馬息嶺スキー場は2013年、金正恩委員長の肝いりで建設。聯合ニュースによると、北朝鮮側がオリンピック会場として利用できると共同開催を呼びかけたものの、韓国側は実現不可能だと拒否していたという。
さらに、北朝鮮の平壌や開城で聖火リレーを行うことや、北朝鮮応援団の訪韓の検討や、女子アイスホッケーでは南北合同チームを結成する案も浮上。韓国アイスホッケーの女子代表選手は「信じがたいニュース」「こんなことがあるのか」「五輪を目標に血の汗を流してきた私たちに対してひどすぎる仕打ち」という反応を示している。
IOC国際オリンピック委員会のバッハ会長と北朝鮮国際オリンピック委員会のチャン・ウン委員は、あすから韓国で開催される世界テコンドー大会を訪問、これらの項目について話し合う可能性があるとみられている。

朝鮮半島で緊張状態が続く中、北朝鮮と韓国がオリンピックの場で手を携えることはあるのだろうか。
スポーツ評論家でオリンピックにも詳しい玉木正之氏は「オリンピックはもともとスポーツ大会ではなく"スポーツを利用した平和運動"だと言える。"オリンピックに政治を持ち込まない"とは誰もいっていないし、実際、第一回大会から、開催地が政治的な動きの中で決まってきた歴史もある。女子アイスホッケー選手たちの反応は、オリンピックが政治で動くのは仕方ないけれど、競技の中にまで政治を持ち込むなということだろう」と話す。

「スポーツには"競技をしているときだけの平和"がある。例えばサッカーには"90分間のナショナリズム"という言い方もある。政治的ナショナリズムとは違う形のナショナリズムで戦い、90分経ったら終わる。そこにスポーツの虚しさもあるが、ある意味スポーツを利用してそこから何か突破口にできないかという動きはあるだろう」(玉木氏)
聖火リレー案についても、「聖火リレーで板門店を通り抜けるという方法もある。面白いとは思うが、IOCは北京大会から聖火リレーのルールを変更、他国を通ってはいけないことにした。つまり、アテネから直接開催国に聖火が来るので、もし平壌を通って平昌に行ったら、韓国と北朝鮮は同じ国だということになってしまう」と説明、「実際に競技をやるというのも、1%くらいの可能性」との見方を示した。
朝鮮半島情勢に詳しい元共同通信ソウル支局長の平井久志氏は「韓国の大統領はFIFA(国際サッカー連盟)会長が来た時も、2030年のW杯を日本・中国・韓国・北朝鮮の4カ国で開催したらどうかということを提案していたので、今回の話は第二弾という形になる」と説明する。

「新政権には北朝鮮との関係改善を唱えていて、北朝鮮も唯一の例外としてテコンドーの選手団がソウルに行くことを許可している。国連の制裁決議が出る中、面白い玉を投げたと思う」と話した。
過去には、アメリカと中国が卓球を通じて関係改善を目指した「ピンポン外交」の事例もある。1971年の世界卓球選手権大会で日米中選手団が交流し、大会終了後には米国選手を中国に招待、翌年のニクソン大統領の訪中にもつながったのだ。
玉木氏によると、88年のソウルオリンピックは「壁を超えて」をスローガンにしており、東側と国交正常化のきっかけになったという過去の体験がある。また、過去の国際大会では、両国の選手がそれぞれの国旗ではなく「統一旗」で参加したこともあり、スポーツを通じた南北融和に対しては、韓国の人々にも特別な思いがあると指摘した。

これについては平井氏も「韓国の憲法では、朝鮮半島全体が韓国の領土だと定めている。聖火リレーを北朝鮮でもやるということは、韓国国内で世論調査すれば圧倒的に賛成するし、歓迎すると思う。保守の中でもあまり注目を浴びてない平昌五輪を盛り上げるためにいいアイディアだと思う人たちが多くいるのでは」と推測。「北朝鮮としても韓国をアメリカから引き離して北朝鮮側に引き付けたい。開城工業団地の再開や、鉱山開発のためにも、時期が来れば南北対話に応じる姿勢はあるはず。だから、金正恩が肝いりで作った馬息嶺スキー場を国際世論の中にデビューさせることであれば非常に魅力的な話であると思う」との見方を示した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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