東京都議選での自民党の歴史的な大敗北。そんな中、自民党公認候補の中村彩氏の「敗戦の弁」として多くのメディアが取り上げた場面について、中村さん自身がTwitterで疑問を呈し、話題を呼んでいる。
「マスコミの切り取り方もコメンテーターの適当な憶測も本件で大変勉強になった。国政に対する意見を求められて答えたつもりだったが全て『敗戦の弁』として総括されてしまうようで怖い」、「失言に気を付けて詳細を話す→努力虚しくマスコミに都合良く切り取られる→(無限ループ)。マスコミの編集ではなくネットで今後会見系は自身で丸ごと録画・配信せねば!」
4日に放送されたAbemaTV『AbemaPrime』では、スタジオに中村氏本人を迎え、メディアによる〝切り取り方〟〝偏向報道〟についての議論を行った。
中村さんは「自分が負けた原因として語ったつもりは全くないんです。一国民、一都民としての意見だったのでそう言ったんですけど、『同じ自民党なのに自民党批判をして恩を仇で返している』みたいなことを言われて、不本意だなと。敗戦の弁を述べた後に質疑応答に入って、という説明が全くなく、中村彩の敗戦の弁としてそこだけが切り取られていたので、編集に悪意があるだろうと思いました」と主張。「敗戦の弁」として述べた部分とは違う、国政に関する質問への回答部分が切り取られたことに違和感を表明した。(「自分の言葉で素直に語ったつもりだった…」 マスコミの「敗戦の弁」報道に苦言ツイートの中村あや氏が心中激白)
元キャリア官僚でコンサルタントの宇佐美典也氏は、自身のブログで「私はこの選挙結果を受けての第一印象は『こんなメチャクチャな選挙ありかよ!』というものでした」と綴った。
「メディアは都政とは関係ない加計学園問題や豊田議員のパワハラ問題で自民党に猛烈なネガティブキャンペーンをかけるという展開で自民党にお灸をすえるというムードを作り出しました」「大手メディアは、今回の選挙にあたって『国政は国政、都政は都政。都議会議員選挙は東京の未来の課題を都民が知り、誰に未来を委ねるか判断する場所です』というスタンスをとるべきだったのではと思います」(宇佐美氏のブログより)
「安倍やめろ!」コールが話題になった、投票日前日に行われた秋葉原の演説会。安倍総理が応援演説を行ったのは、他ならぬ中村氏だった。
「私はまさに宇佐美さんと同じことを、安倍さんと並んだアキバの演説でも言ったんです。東京の未来をどこに託すかが争点ですとも言ったんですが、ほとんど聞いてもらえませんでした」。
社会問題を体験するツアーを運営している一般社団法人リディラバの安部敏樹代表は「メディア自身には、取材対象が伝えたいことを伝えるための機能という自己認識がなく、基本的には、視聴者が見たいというものを作ろうというスタンスなのではないか。むしろメディアは立場を明確にしたほうがいい。『無色透明です』と言っている時点でそれはおかしい」と話す。
一方、「新聞にしてもテレビにしても決まった枠、決まった尺の中で、どうにか視聴者に伝えたいことを伝えようと頑張っている。ネットでずっと垂れ流しているのと違い、編集しているからこそ質が担保されていて、故に多くの人が見ている」とも指摘、「中村さん発言の切り取り方だけを見てみると、明らかに都議選と国政と関係づけようとか、それを通じて安倍政権批判をしようという意図もあったんじゃないかなと思っちゃう。ただ、自民党に所属している以上、引き受けなければならないことでもあると思う」と述べた。
安部氏の意見に対し、ハフポスト日本版の竹下隆一郎編集長は「人間である以上、言葉っていうのは切り取られるんだと。それを前提に会話っていうのは成り立つんだっていうことをベースに話さないと、メディアは悪い、マスコミは悪いっていうすごい単純な話になって、面白くない会話になってしまう」と話す。
その上で竹下氏は「テレビを見ていて、逆に中村さんはすごく良いことを言ったと感じた。あそこが切り取られたことで、誰も敗因を分析する人がいない中、自民党のお金の問題や議員の罵倒の問題を指摘して、それが伝わったのはいいことだと思う。誰も言わなかったことを、中村さんはきちんと言ったと、私はポジティブに捉えた」と話した。
そんな中、司会進行を務めるテレビ朝日の小松靖アナウンサーが〝メディア側の立場〟から発言した。
「私たちは選挙報道については非常にナーバスになっている。いろんな意見が分かれているもの、意見が対立しているものに関しては、多角的な視点を提供するということが放送法第4条に定められているので、近年は本当にそこを厳密に運用している。例えば、候補者や政党によって、報じる分量などに差を付けないように努力している。客観性を重視する結果として、投票直前になると、ほとんどテレビで本当に投票の判断基準になるような報道が見られないような状況になってきてしまっている」。
小松アナはAbemaTVでキャスターを務めて1年以上になる。時には、地上波放送とは〝真逆の切り取り方〟をした内容を伝えることもある。
「コメンテーターの方や、視聴者の意見をお伝えしながらも、時には自分の思ったことを言っている。すると、コメント欄には『テレ朝のアナウンサーにしては珍しいな』みたいな意見が寄せられる。〝テレビ朝日のカラーとはそぐわない〟みたいな捉え方でしょうか。だけど、僕は、それはそれでいいことだと思っている。ここで働いている私という個人が世の中を見た感想だし、この局にもいろんな人がいるんだっていうことでもある。やっぱりネットで『大人の事情をスルーする』というコンセプトで番組をやらせていただいてるので、"本当はどうなの?"という問題に一歩踏み込んで、みなさんと一緒に考えたいという気持ちでやっています。だけど、会社から『お前、会社の方向性と違うことやってんじゃん』って言われたことは1回もない」。
その上で小松アナは「私の知る限り、自民党をdisるために中村さんの発言を切り取って、貶めるためにそう編集しているんじゃないか?という声もあるが、そういう意図はないはずだ」と話し、自分の信念を貫き、自民党からの出馬を選んだ中村さんを「今回落選したが、政治家の鑑なのではないか」と称賛した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)