2004年に韓国にて放送された人気ドラマを原作としたTBS日曜劇場『ごめん、愛してる』は、幼い頃に母親に捨てられ、裏社会で生きてきた主人公・岡崎律(長瀬智也)が、運命の女性・三田凛華(吉岡里帆)と出会うことで、本物の愛を知っていく究極のラブストーリー。
本作でヒロインの凛華役に抜擢されたのが、『カルテット』での怪演が記憶に新しい、女優の吉岡里帆だ。京都の小劇場から一歩ずつ着実に、ここまで歩みを進めてきた吉岡に、自身が演じる凛華という人物について、共演者について、そして「ブレイク女優」と言われることへの思いを聞いてきた。
「猫にデレデレの長瀬さんは親近感がわきます(笑)」
ーー『ごめん、愛してる』の放送がスタートしましたね。吉岡さんから見た作品の印象を教えてください。
吉岡:現場では、スタッフさん、監督、俳優部もたくさん意見を交わして撮影しているんですけど、それがものすごく画面に出ているなぁと思いました。話し合って改良した部分が、ちゃんと劇的なシーンとして映っていて。
原作へのリスペクトも忘れていないので、韓国ドラマの世界観というか、どこか懐かしい感覚やロマンチックな雰囲気を、リアリティの中で感じていただける作品になっていると思います。
ーー現場で話し合って…というのは吉岡さんも意見を出したり?
吉岡:そうですね。年代が下の私や坂口くん(坂口健太郎)でも、自分たちの意見は責任を持って言うようにしています。
ーーそれは周りの方々が意見を言いやすい環境を作ってくださっているのでしょうか?
吉岡:長瀬さん(長瀬智也)も、大竹さん(大竹しのぶ)も「思ったことがあったら、なんでも言っていいよ」っておっしゃってくださるんです。なので、懐を借りて飛び込むように意見を言ったり、質問させてもらったり。
ーー素敵な先輩方ですね。主人公・律を演じている長瀬さんはどんな方ですか?
吉岡:長瀬さんは、本当に嘘のない方だなと思います。テレビで見たまんまで、男気があって、優しくて、兄貴肌で、安心してついていける方。長瀬さんが真ん中に立ってくれるだけで、安心感があるので、頼もしいなぁと思います。でも、猫の話になるとデレデレモードになるんですよ(笑)。
ーーそれは長瀬さんの意外な一面です。吉岡さんも猫がお好きなんですよね。
吉岡:はい。私も猫が大好きなので、デレデレの長瀬さんをみると親近感がわきます(笑)。この間は、長瀬さんが飼っている猫のみーちゃんの写真も見せてもらいました。
ーー吉岡さん演じる凜華が、思いを寄せ続けているサトル役を演じている坂口さんの印象はいかがでしょう?
吉岡:坂口さんは綺麗な顔立ちで、身長も高くて、トップモデルで、王子様みたいな二枚目なイメージを持っている方が多いと思うんです。だけど、私は坂口さんの本当の魅力って、天然から炸裂する三枚目な部分だと思っていて。一緒に話していても全然飽きない、人間性の面白い方なんです。もっともっと話したくなるような。
ーー坂口さんは、ピアニストの役ということで、1ヶ月間猛特訓をしていたとのことですが。
吉岡:本当にすごいですよね。1ヶ月間、猛特訓したとしても、普通だったらあんなに素晴らしい「革命」は弾けないと思うんです。だからもう…陰の努力と天性の才能を感じますね。
ーー坂口さんは、現場であまり努力している姿を見せない方なんですか?
吉岡:基本的に疲労感とかは見せない方です。いつも元気で穏やかで、にこにこしていて、さすがだなと。役者さんとしても尊敬できる方です。
ーー律とサトルの母親を演じている大竹しのぶさんとも初共演ですね。
吉岡:大女優さんなので、失礼なことを言ってしまったら関係性が崩れてしまうんじゃないか、一緒のチームとして認めてもらえないかもしれない…とか、いろいろ考えてたんですけど、実際にお会いしたら、そんな心配どこへやら。大竹さんは私みたいな新人にも気配りしてくださるような、とっても思いやりのある方で。それに、とってもチャーミング。可愛くて自由奔放で、その自由さには、役者としても、女性としても憧れます。大竹さんみたいになりたいって素直に思いました。
「好きって頭で考えるものじゃないんだろうなって」
ーー今回、吉岡さんが演じられる凜華は、何事にも真っ直ぐで純粋な王道ヒロインという感じですよね。『カルテット』での有朱役や、『ゆとりですがなにか』での悦子先生役などクセのある役を演じるときとは何かが違いますか?
吉岡:今までやってきたトリッキーな役柄たちは、キャラクター性として私の背中を押してくれていたんですけど、凜華は役としての突発的な特徴はなくて、そういった部分を見せる役でもないんです。凜華を演じるときは、もっと人間の内側にある、心の動きとか、細かい部分を見せたいなって。
ーーなるほど。
吉岡:なので、こういうキャラ!と決めつけないようにして演じています。今までは、「こういうキャラを作っていくぞ」と決めて、それに向けて動いていたのが、今は自分でも凜華がこれからどう動いていくか分からない。相手のお芝居を受けて、変化していくような感じです。クセのあるキャラクターたちを演じるときとは、また違った面白さがありますね。
ーー演じる上で、どんなことを意識していますか?
吉岡:これはどんな役でも通ずるんですけど、その子のダメな部分を出していきたいなと思うんです。凜華の場合だと、不器用で素直になりきれなくて、影ながらでしかできない…そんな情けなくて弱いところ。普通だったら、ヒロインは良いところを見せていくものかもしれないんですけど、そうじゃなくて、視聴者から見ても、人間くさいなと思ってもらえるようなキャラクターでありたいなと。
ーーご自身が凜華と似ているなと感じるところはありますか?
吉岡:1つのことに真っ直ぐになれるところかな。私もこれをやると決めたら、もうずっと一途なんで。一途に思い続ける気持ちとか、スタミナには共感できます。
ーーでは、24年間片思いすることになっても…?
吉岡:切ないですよね…。うーん、24年間は、ちょっと無理かもしれない(笑)!
ーー(笑)。
吉岡:でも、凜華を見てると、24年間も思い続けられる人と出会っていることが奇跡的だし、少し羨ましいなとも思います。出会いたくても、そんなに思える人に簡単には出会えないだろうから。ある意味、凜華は幸せかもしれないですね。思いが報われなかったとしても…。
ーー確かに、24年間も思える人と出会えているというのは素敵なことですよね。凜華はサトルのどんなところに惹かれたと思いますか?
吉岡:サトルの魅力は、やっぱり天真爛漫さですよね。あとは、天才ピアニストという才能。1話でもサトルがピアノを鳴らしているシーンがあるんですけど、ただピアノを鳴らしているだけなのに、凜華が目を離せなくなる、という描写がすごい好きで。好きって頭で考えるものじゃないんだろうなと改めて感じました。
ーー一方、律の魅力とはどんなところだと思いますか?
吉岡:律は、ぶっきらぼうで口も悪いんですけど、傷ついてきている分、痛みを知っている男性なんです。人の痛みも分かる。だから、凜華も彼にはなんでも話せるんですよね。律を見ていると、一見怖そうだったり、厳しそうな人ほど、話してみると分かってくれることもあるんだなぁと思いました。人は第一印象では判断してはいけないし、話してみて初めてどういった人なのか、人となりが分かるんだなぁと。
ーー吉岡さんは律とサトルだったら、どちらを選びますか?
吉岡:……難しい。この手の質問は、いつも迷うんです(笑)。でも、やっぱりサトルは鈍感で、凜華は劇中でもたくさん傷つけられているので律かな?律みたいに相手がどう思っているかを考えようとする人のほうが好きですね。
ーーちなみに、凜華はスタイリストという設定ということで、劇中で様々なお洋服を着用されていますが、お気に入りのファッションはありますか?
吉岡:印象的だったのは、律との出会いのシーンで着ていた赤いワイドパンツとボーダーシャツの衣装です。韓国ロケの最中は、ほとんどあの衣装を着ていて。着ている時間が長かったというのもあって、愛着が湧いていますね。
ブレイク女優NO.1には「背中がむず痒い」
ーーORICONで発表された「2017上半期ブレイク女優ランキング」では、1位を獲得されましたが、いまの心境は?
吉岡:もったいないですよ、あれは。私なんかに…。
ーーなぜですか!
吉岡:いやいや、本当に。似合わないなぁって思いますもん。ワードが全部しっくりこなくて。ブレイクとかNO.1とか、自分で自分には似合わないなぁって思います。
ーーそんなに謙遜しなくても。
吉岡:謙遜じゃないんです(笑)!私はただ、面白いものに出会いたくて、突っ走ってきただけだったので…。苦い思いをしすぎたせいか、あまりにもスポットライト浴びていると、どうにも背中がむず痒くて。偽善者っぽく聞こえるかもしれないんですけど、本当に私とお仕事をしてくださったみなさんと一緒に獲った1番だなって思います。
ーーそんなタイミングで日曜劇場のヒロイン。吉岡さんにとっても大きな挑戦となる『ごめん、愛してる』ですが、改めてどんな作品にしたいか教えてください。
吉岡:歴史のある日曜劇場ということ、人気原作での突然のヒロイン抜擢ということで、もちろんプレッシャーも感じました。でも、その反面、絶対に良い作品を作るぞという覚悟が生まれて、この作品は私にとって新しい一歩というか、分岐点になると思っています。
いろいろな愛を描いている重厚な作品なので、完成させるのも、とても難しい作品でもありますが、だからこそ、ちゃんとみなさんの耳に、目に残るような、忘れられないような作品になるといいなと願っています。
TBS日曜劇場『ごめん、愛してる』は、毎週日曜よる9時から放送中。
Photography=Mayuko Yamaguchi
Interview=Ameba