7月27日20時からAbemaTV(アベマTV)で放送される『芸能義塾大学』第3回はカンニング竹山が講師役となり、「芸能界で活躍し続ける秘訣」を若手芸能人に伝授する。同番組は、6月まで放送されていた『TVじゃ教えてくれない業界裏教科書』の後継番組だが、これまでに数多くの講師役が出てきては、生徒役が感心するような技や秘訣、工夫が話されてきた。それこそ彦摩呂による「食レポのやり方」や銀シャリによる「ロケのやり方」、ざわちんによる「自撮り講座」などである。

 ざわちんの回はテクニックに寄ったものだったが、多くの回で話されたことは基本的には「嫌われるな」「他者に配慮しろ」「真摯に取り組め」の3点である。芸能界自体が才能の集う場所ではありつつも、似たような才能の場合、結果的に「人柄がよい」「手を抜かない」人の方が採用される傾向にある。たとえば、大久保佳代子はロケバスに乗る時は、多くともマネージャーと2人。1人のこともあるという。理由は、「取り巻き」のような人物が多すぎるとそれだけ場所を取るし、結局そこだけの異空間が生まれ他の出演者やスタッフとの交流ができず番組でも意思疎通がうまくいかなくなったりするからだ。若いモデルなどになると、ヘアメイク、スタイリスト、マネージャー、謎の色黒男がいるなどし、まさに大名行列。そんなことを大物でもないのにやっていると仕事が来なくなるよ、といった助言をするのである。

 そして、基本的に芸能人が仕事を獲得し続けるには「あの人とはやりやすい」「あの人は確実に〇〇の役をやり切ってくれる」という評判をスタッフから獲得するしかない。『芸能義塾大学』の講師はそれらの評判を獲得した人ばかりである。

 さて、今回の「芸能界で活躍し続ける秘訣」をカンニング竹山が伝授するというが、この配役は楽しみである。今現在のカンニング竹山を知る若い人は、彼のことを「政治的な発言もするご意見番」「和田アキ子に好かれている」的な芸人だと思っているかもしれない。だが、私にはそれとは別のイメージがある。

◆ルノアールでの竹山

 2003年、カンニングの取材をした。今、竹山は「カンニング竹山」を名乗っているが、当時は中島忠幸とのコンビで「カンニング」だった。ブレイク前夜の状況だったが、当時テレビブロスの編集者だった私はカンニングが所属するサンミュージックのお笑いライブへ行き、竹山の「キレ芸」に目を見張った。とにかく無茶苦茶なのである。

 ステージに上がった途端、竹山はすでにキレてるのだ。中島が「まぁまぁ」となだめると「うるせぇ!」と怒り、中島が「でも売れたいよなァ」と諭すように言うと竹山は「売れたくねぇよ!」とまたキレる。「でも本当は売れたいだろ?」と聞くと「絶対売れてやらねーぞ、コノヤロー!」とキレるという芸だったのだ。記憶は定かではないのだが、東京・中野の街に出てひたすらキレる、といった映像も流れ、これにも爆笑した記憶がある。

 2004年に中島が白血病を公表し、2006年に中島は逝去。竹山は「竹山隆範」から「カンニング竹山」に呼び名を変える。

 さて、話は2003年に戻る。あまりにもカンニングが面白かったため、サンミュージックに取材依頼をし、テレビブロスの1ページのお笑いページに出てもらうことになった。このページは、お笑いコンビ・キリングセンスが芸人の持ちネタについて取材をするという体を取っていた。この日の執筆者は「肝臓移植芸人」として知られる萩原正人(現・ハギワラマサヒト)。

 待ち合わせ場所である渋谷のルノアールに予定時刻の10分ほど前に着くと竹山だけがいた。当時、マネージャーが常時つくような状況ではなかったのかもしれない。我々が到着すると竹山はひたすら頭を下げ続ける。

「本当にごめんなさい、ごめんなさい!」

 どうしたのかと聞くと中島が遅刻をするというのだ。だから、せめて自分は早めに来て中島の分もキチンと喋っておこうと思ったという。そしてこう続けた。

「先輩がこうしていらっしゃるというのに、そしてわざわざページを我々のために割いてくれるというのに遅刻してごめんなさい」

 ここでいう「先輩」とは、萩原のことである。キリングセンスはカンニングよりも5年早い1987年結成で、萩原は竹山よりも4歳年上である。当時、中島は総菜屋の副店長をしており、店が混雑をした関係で30分ほど遅くなるというのだ。竹山に対し、「キレ芸」の由来を聞いていたら30分の時間はすぐに過ぎた。そして、中島がやってくると中島も平身低頭の状況になり、竹山は「コラ、もっとちゃんと謝れ!」と言う。

 そんな様子を見せられたら我々は「竹山さん、やめてください! 有意義なお話をずっとしていただき、ありがとうございます。さて、お二人揃ったので本格的にお話お願いします!」といった形になり、カンニングの取材は笑いも多数まじり、終わった。

 萩原と私はその後、「竹山さん、ホントいい人でしたね」と言い合った。そして、今でも思うのだが、竹山のキレ芸はギリギリのところで他人を誹謗中傷することなく「単に何にでもキレるおかしな人」という芸で「世間にもおかしなところはあるが、もっとおかしいのは竹山」という配慮があった。単なる悪口に終始しない芸に昇華していたのだ。今回の番組でも竹山の常識的な部分が次々と出て、生徒役が「私にはそこまでの配慮がなかった……」と反省するシーンが出てくるかもしれない。

文/中川淳一郎(ネットニュース編集者)

■『芸能義塾大学』番組概要

放送日時:毎週木曜 夜8時~夜9時

放送チャンネル:AbemaSPECIAL

放送日:7月27日(木)

放送URL:https://abema.tv/channels/abema-special/slots/9haAnrqSyCmVKm

進行:大熊英司(テレビ朝日アナウンサー)

講師:カンニング竹山

生徒:入山杏奈、岡井千聖、都丸紗也華Niki、山地まり

芸能義塾大学♯3~カンニング竹山が教える芸能界で活躍し続ける秘訣~ | AbemaTV(アベマTV)
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