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 東京・品川区の一等地に、数年前まで旅館として営業していた物件がある。広さは約2000平方メートルあり、不動産業界ではかねてから注目されていた。地元の不動産会社の男性は「まとまった土地があるし、みんな欲しがる。でも、絶対売らないっていうことだった」」と話す。地元では「お化け屋敷」と呼ばれ、人の出入りもなかったというが、所有者である高齢女性は一貫して売却の意思を示さなかったという。

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 しかしこの物件をめぐって、大手住宅メーカーの積水ハウスが購入詐欺に遭ってしまったというのだ。

 4月24日、この土地を買い取ったという不動産業者Aが積水ハウスに転売、6月1日に積水ハウスは63億円を支払った。しかし、それからおよそ1週間後、書類の一部が偽造されていることが発覚。積水ハウスは土地を取得することができず、不動産業者Aと所有者を名乗る女性とも連絡がつかなくなってしまったという。

 積水ハウスは「当社は何らかの犯罪に巻き込まれた可能性が高いと判断し、直ちに顧問弁護士によるチーム体制を組織のうえ、捜査機関に対して被害の申入れを行い、その捜査に全面的に協力すると共に、支払済代金の保全・回収手続に注力いたしております」とのコメントを発表。警視庁も、不動産詐欺を行う「地面師」による犯行の可能性があると見て、捜査を進めている。

 7日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、この「地面師」の実態に迫った。

 「地面師」とは、土地や建物の持ち主になりすまし、不動産を勝手に転売して代金をだまし取ったり、担保に入れて金を借りたりする詐欺グループのことで、地価が高騰し、土地取引が盛んに行われたバブル期に横行していた。

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 地面師について長年取材をしているノンフィクションライターの森功氏によると、終戦から間もない頃、誰の所有か分からない土地を自分の土地にしてしまった人々が発祥だといい、不動産が高騰する時期に活動を活発化させるのだという。詐欺に比べコストパフォーマンスが高いため、主犯格には常習者も多く、バブル期に軒並み逮捕された主だったグループのメンバーたちが刑期を終え、再び暗躍している可能性があるのだという。

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 森氏は積水ハウスが支払ってしまったお金について「なかなか返ってこないだろう」と話す。今回、地面師に近い仲介業者を経て3つのルートに資金が流れてしまっており、全額の回収は難しいのだという。

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 最近、地面師が絡んだトラブルが増えている背景には、東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けた都心の再開発、ゼロ金利政策で起こった不動産投資ブーム、そして民泊ビジネスによる地価・マンション価格の上昇があるのだという。

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 日本の個人資産およそ1700兆円のうち、約6割は60歳以上の人が保有しているとされている。高齢化が進む中、ますます地面師のターゲットにされるお年寄りが増えることも予想される。

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 森氏は「被害を防ぐには情報しかない」と話す。「地面師というのは、組織的に作っているので、ABCDEF…というようにどんどん転売していく。その間、誰が関与して、誰が騙しているのかがわからなくなってしまう。ただ、その間情報が漏れてくるので、それをキャッチアップすることが重要」と指摘する。

 なないろ合同事務所・代表司法書士の塚本夕香子氏も「ここ数年、多い印象。東京オリンピックに伴って不動産の価格が上がっているため、増えてきていると思う」と話す。今年5月には、東京練馬区に住む70代の女性になりすまして、1200平方メートルの土地やアパートを転売し、不動産会社から2億8000万円をだまし取ったとした男女が逮捕された。先月には会社社長になりすまし、偽の公正証書を作らせたとして、地面師グループの男が逮捕されている。

 地面師が狙うのは、所有者が高齢で、誰も暮らしておらず、抵当権なども設定されていない不動産が多いようだ。塚本氏は「抵当権が付いている場合、司法書士はそれを消してから所有権移転の手続きをするので、銀行とのやり取り等が増える。したがって、抵当権が付いていない土地のほうが狙われやすい」と指摘した。

 森氏によると、グループは犯行を計画・立案する人物を中心とした10人前後の規模が多く、役割分担は明確だという。また、グループ内にには「手配師」と呼ばれる者たちがいて、例えば温泉地などでなりすます人物になる中年の女性コンパニオンを探したりするのだという。

 「あくまでも地面師に聞いた話だが、温泉街には住み込みでの仕事も多いことから、表には出づらい事情がある人物が集まりやすい土壌がある。コンパニオンの派遣会社が実は暴力団のフロント企業というケースもあり、そういう人や会社の人脈を使う」「素人を雇う時に数百万円のコストがかかる。そのコストを用意するのは暴力団筋の人」。

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 今回の積水ハウスのケースでは、身分証として使用されたのは偽造パスポートで、印鑑登録証明書も偽造されていた。こういった手口はよく使われるのだろうか。

 森氏は「役所に行って『印鑑失くしました』と紛失届を出す。役所も当然本人確認をするんだけれど、偽造の運転免許証で済んでしまう。それで新たな印鑑証明を作成することができる。それをもとに発行された様々な書類は本物ということになる」と話す。

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 被害を防ぐため、不動産業者も物件の近所で聞き込み調査をするなど、確認を厳格にするようにしているが、地面師が近所の人や所有者本人と顔見知りになるなどして業者を信用させるなど、手口も巧妙化しているのだという。

 番組には地面師に偽の公正証書を作成されたという視聴者からのコメントも届いた。「公正証書の問題を法曹界全体が見て見ぬフリをしているのが元凶ではないでしょうか。偽の転居届を出され、亡くなった父の実印を改印された」。

 森氏によると、公証人役場になりすました人物を連れて行き、偽造パスポートや印鑑証明などを提出して公正証書を作成、それを元に不動産取引に臨むので、不動産会社も騙されてしまうのだという。その上、書類作成の知識がある司法書士や弁護士といったプロが加担しているケースがある可能性も示唆した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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