高校球児の夢舞台、甲子園大会が開催される直前だった8月1日、7人の女子高生たちが熱い戦いを東京都内のスタジオで繰り広げた。彼女たちが戦った種目はスポーツではなく麻雀。最近ではオンライン麻雀の普及により若年層にも支持される麻雀だが、女子高生たちは一途で真剣な思いを胸に、力を込めて牌を握って戦い、勝者も敗者も泣いた。ネット配信時は視聴者からもプロ顔負けの打ち筋と、その思いの強さに終始温かいコメントが送られた。
決勝で敗れ号泣した山村さん
たった7人による麻雀大会「高校女子オープン 夏」。それでも女子高生雀士たちは全力で戦った。優勝した廣岡璃奈さん(静岡県立浜松大平台高校)は、昨年12月にも行われた大会で涙の初戦敗退。雪辱を期したこの大会で頂点に立つと、将来プロ雀士を志す者として「(優勝が決まった)最後は気が抜けました」と、今度はうれし涙にくれた。解説を務めた麻雀のトッププロ、多井隆晴(RMU)も「みんな一生懸命でした。麻雀プロもこの子たちを見習ってほしいくらい。感動しました」と目を赤らめた。
勝者以上に彼女たちの真摯な思いを表現したのは敗者たちだった。山村澄麗さん(福岡県立博多青松高校)は、予選を勝ち抜いたものの決勝で敗れると号泣した。泣き崩れ、控え室に戻るのもやっとだった。コメントを求められると大会に向けてともに練習してくれた仲間に向けて「応援してもらったのに申し訳ないです…」と言葉を詰まらせながら、なんとか口にした。
山村さんがこの大会の評価を高めたのは、号泣したからだけではない。逆転優勝の可能性もあった決勝卓の最終局、終盤で他者のアガリ牌をつかんでしまった。牌を切らずに降りれば優勝の可能性は限りなくゼロになってしまう。優勝を目指すしかない以上は振り込んでもやむなし、というのが解説陣や視聴者たちの見解だった。それでも山村さんはその牌を手元に並べ、別の牌を切って勝負を降りた。「(相手に)当たると分かっているものを、切れるわけがないじゃないですか」。大会関係者にもらした言葉だ。涙を飲んで自信の敗北を認め、他者の戦いを邪魔しない。この“負け様”に多くの麻雀ファンが感動した。
中学生時代から出場を目指していた高山さん
大会関係者、ファンの心に強烈に残った雀士がもう1人いる。高山結理さん(大阪女学院高校)だ。「去年まで中学生で大会に出られなかったので、(大会を)家で見ていました。高校生になったので応募しました」と、中学生のころからこの大会に憧れていた。結果は予選敗退となったが、大会後には「今年の冬にでも開催をお願いしたいです。お願いします」と声を震わせた。このひと言に大会を企画した近代麻雀・星野信夫編集長も「あそこまで言われて『考えておきます』で終われる大人はいない」と、その場で次回大会の開催を即決した。
高山さんは、麻雀のおかげで外の世界に踏み出すきっかけを持てた。偏差値70前後の名門校の生徒である彼女は、現在自宅に引きこもりがち。それでもオンライン麻雀で交流し、麻雀対局番組を視聴し続けることで、「麻雀番組に出るために東京に行く」というチャレンジを成功させた。次回大会にも、高山さんはきっとこの日出会った女子高生雀士たちと再び戦うために、また東京にやってくることだろう。
次回の高校女子オープンは今冬、12月24日が予定されている。この夏の7人の戦いぶりを見て、どれだけの女子高生雀士たちが出場を希望してくるか。麻雀ファンにとっては、この“クリスマスプレゼント”が今から待ち遠しい。
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