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 「あなたの目の前にあるアイテムを、写真に撮るだけ。一瞬でアイテムがキャッシュに変わる。待ち時間はありません。さあ、キャッシュにしよう!!」

 そんな新鮮で明快なキャッチコピーで登場したスマホアプリ「CASH」。個人が持っている服やバッグなどを査定し、運営会社である株式会社バンクが買い取るサービスだ。スマホで品物の写真を送ると瞬時に査定し、提示された買取額に合意すると、即座に現金が振り込まれるという仕組みで、査定額の上限は最高で2万円だ。店などに品物を持ち込む手間が省ける上に、面倒な手続きも一切不要。数時間後には、現金を手にできる。ここが個人間取引の「ヤフオク!」や「メルカリ」と異なる点だ。

 6月28日にサービスを開始、「質屋アプリ」として注目を集めた「CASH」だったが、押し寄せた商品は約7万3000点、支払い額は約3億6000万円にのぼり、マンパワーも運営資金も同社の限界を超えてしまったという。結果、開始からおよそ16時間でサービス停止に追い込まれた。社員7人、8畳一間ほどの事務所はダンボールで溢れ、宅配業者からも「届けられる状態じゃない」と言われてしまったという。

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 代表の光本勇介氏は「本当に多くの方に話題にしていただき、使っていただいたにもかかわらず、期待に応えきれなかったのは申し訳なく残念に思っている。荷物は未だに送られてきていて、部屋が物で溢れて…と」話す。

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 苦渋の決断から約2カ月。沈黙を守っていた同社がついにサービスを再開した。その理由について光本氏は「明確で、サービス・事業として非常に大きなポテンシャルと需要があると考えたから」と語る。

■開始当初は「質屋に偽装したヤミ金かな」と炎上も

 AbemaTV『AbemaPrime』では、「CASH」への疑問について担当者に直撃した。

 まず、サービス停止前のルールでは、利用者が品物を発送するまでの猶予について2カ月以内と設定されており、取引をキャンセルして返金する場合は15%の上乗せが必要だった。つまり、最大2カ月間、お金を15%の手数料で借りることができるサービスとみることもできるため、ネット上では「質屋に偽装したヤミ金かな」「架空請求や振り込め詐欺やってる連中なんかの格好の餌場になりかねなくて、かなりヤバい状況なのでは」といった指摘もなされた。

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 「弁護士ドットコム」GMの田上嘉一弁護士は「質屋というのは、相手方に物を渡す必要があるため、厳密に言えばCASHは質屋には当たらない。"質屋っぽい闇金"との指摘については、貸金融だとすると、当然許認可をとらなくてはいけないし、2カ月で15%(年利に戻すと90%)という手数料は利息制限法・出資法で定めている20%の上限金利をはるかに上回っている」と説明する。

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 こうした指摘について、運営する株式会社バンクの岡田麻里氏は「お金を返すことを選択した人はわずか2%なので、皆さん買い取りのアプリだと認識している」と説明、サービス再開にあたってサービス全体で1日の現金化の上限を1000万円(月3億円)、発送までの猶予期間を2週間に短縮。キャンセルの場合の手数料も無料にした。サービス開始後、サーバーが込み合うというトラブルが発生したものの、再開2日目の25日には10時の受付開始からわずか51分で現金化上限に達し、まさに"早い者勝ち"状態となっている。

■最大2万円も「返せとは言わない(笑)」

 渋谷の若者に「CASH」について聞いてみると「大学生の間でよく使われている」「写真を撮ったらお金になるよ、ぐらいですかね」「簡単にお金が入っちゃうから、みたいな軽い感じで。でも、品物を直接見ているわけじゃないし、誰がどうやって決めているのかわからないところが怖い」「なんで写真撮るだけで値段が決められるのかが分からない」と、認知度は高いものの、査定のプロセスについて不安に思う人もいるようだ。

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 実際、サービス開始当初には、食べかけのハンバーガーの査定を試みるなど、ネット上では悪意のある使い方をしようとした利用者もいた。ネット上で拾った画像や、新品のように加工された画像を用いて査定を申し込む利用者が出て来ることも予想される。画像を送信してから別途品物を買って発送ということも可能だ。

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 岡田氏は「独自のデータベースに加え画像を参照しつつ、総合的に査定額を決めている。申請していただいたブランド・カテゴリー・コンディションと併せ、画像認証システムも入れているので、実物が申請と異なる場合や、スニーカーを査定するのにペットボトルが写っているなどの場合も対応が可能だ」と説明。汚損したもの、盗品を送ってきた場合についても、古物商として対応しているとし、商品を送って来なかった利用者は、以後の査定を受けつけないルールにしているとした。

 その一方、スピード感を持ってサービスの展開を進めたいという観点から、ある程度の損失も織り込み済みだという。実際、問題のない利用者は9割程度だといい、残りのトラブルのあった利用者に対し、最大で2万円になる入金を返金させることもない。

 「ある程度(悪質な利用者が)いるだろうと見込んでいるので、返せとは言わない(笑)」(岡田氏)

■企業理念、"誰に、何のために"が見えない?

 再開した「CASH」に対し、ハフポスト日本版の竹下隆一郎編集長からは、ビジネスモデルが洗練されているのは分かるが、企業理念やストーリー性が見えないとの意見が出された。

 これについて岡田氏は「代表の光本には新しい市場をつくりたいという思いがあった。個人が簡単にネットショップを立ち上げられる『STORES.jp』というサービスに、スピードキャッシュという機能を実装した。手数料はかかるけれども、翌日に売上が振り込まれるというもので、利用者がとても多かった。そこで少額の資金ニーズに気がついた」と、「CASH」立ち上げにつながる光本氏の体験を説明。

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 また、SmartNews社の松浦茂樹氏は「誰に、何のために、というのがウェブサービスでは重要。私たちの場合、良質な情報を欲している人に送り届けている。『CASH』を使って、何のためにお金を手に入れるのかというところが抜けている。それが無ければ、弱者ビジネスという穿った見方をされてしまう」と疑問を投げかけ、「今、古物商の方がいちいち伝票やリストを突き合わせているところをコンピューターが時間を短縮し、ちょっとお金に困っている人たちにすぐお金が渡せるという世の中になれば経済も回る。そういう理念を打ち出すことで、『CASH』というサービスが回ればいい」と訴えた。

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 松浦氏の意見に岡田氏は「例えば誕生日のとき、お金がないと我慢してしまう。そういう時に1万円があればもう少しいい思いができて、今しかできない体験ができる。そういう体験を私たちは生み出したい。ビジネスとして成功できる見込みがあるから再開した」と答えていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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