"悩み無用"でおなじみの発毛クリニック「リーブ21」。その創業者であり、代表取締役を務めるのが岡村勝正氏だ。1976年に岡山で第一号店を出店して以来、全国79店舗にまで拡大。会員数は17万人、発毛率は97%を誇る。日本人の3人に1人が髪の悩みを抱えているといわれる時代に、リーブ21は業界の先駆者として走り続けてきた。AbemaTV(アベマTV)で放送の『偉大なる創業バカ一代』では、そんな岡村氏に密着取材を試みた。
街を行く人に話を聞いてみると、20代の男性はクリニックによる発毛について「僕も薄いんで調べるんですけど、統計的に見て信じない。薬を飲んでいます」と話す。
しかし、リーブ21に通って2年、第17回発毛日本一コンテストの優勝者である横井秀人さん(30)は「会社の同僚から言われたのがきっかけで、鏡を見ると前も薄くなってきたな…と。わらにもすがる思いでリーブ21を訪れた」と話す。市販の育毛剤やネットなどで効果があったとされるものを次々と試したが効果はなかったという。最後にリーブ21にたどり着き、今やコンテストで優勝するまでに復活。髪がほとんどない状態と今の状態を比較すると、一目瞭然だ。頭皮の検査をすると、新毛も生えていることがわかった。
リーブ21のこうした強みは、原因を徹底解明、施術した30万人以上の診療データをもとに一人ひとりにあった対応を行っているからだという。シャンプーを施した頭皮に「イントロナイザー」という微弱電流を使った独自の専用器具を使い、育毛トニックを浸透させていく。さらに生活習慣改善のため日々の食事を撮影し、資料化。"悩み無用"へと導くのだ。
しかし、岡村氏自身の頭髪はフサフサで、72歳には到底見えない。そんな岡村氏が発毛と出会ったのは意外ことがきっかけだった。
■「抜けた歯は生えないかもしれないが、髪なら…」
岡村氏は1945年、山口県に生まれた。農業を手伝いながら学校に通った経験から、たくさん稼げる社長になることを夢見ていた。「就職のために学校へ行くことは無意味」と考え、悩んだ末に高校を中退した。
最初に就いた仕事は自動車修理業だった。「姉婿に、忙しいから手伝ってくれと言われ、やることもないので手伝ってみようかなという感じだった」。自動車修理を行う傍ら、知り合いのクリーニング屋の店主から店を買い取り、オーナーになった。業績は徐々に伸びていたものの、当時の日本はバブル直前。人手がなかなか集まらず、これ以上の成長は難しいと悟った。
そんなとき、職人の「抜けたはずの永久歯がまた生えてきた!」という言葉を耳にし、思い立った。「抜けた歯は生えないかもしれないが、髪なら…」。それから岡村は発毛システムの構築を考え始める。
まず挑戦したのが「毛生え薬」だ。目をつけたのが当時、田舎では当たり前の存在だった"マムシ酒"だった。焼酎の中に生きたマムシを入れておくマムシ酒を応用し、センブリや高麗人参を焼酎に漬け込んだ。「10日くらいすると無色透明な焼酎が琥珀色になる。これは効くんじゃないか。なんか効きそうだなと」。自分の頭を実験台にして、この薬草焼酎を朝晩に付け、翌朝の抜け毛の状態を確認した。無論、いきなり変化することはなかった。「なぜ短い抜け毛があるのか、などをチェックする。私は割と毛が硬い方だった。ところどころ細いものがあって、これはおかしいと思った」。
やがて、人間の肌は弱酸性で、アルカリ性のものは皮膚トラブルに繋がることがわかった。また、酸性を強くするとAGAが回避できるという研究者とも知り合い、食生活も絡めた「トータル発毛システム」を構築していく。完成した発毛システムには勝算があった。陸橋の上から人々の頭髪を観察し、多くの人がビジネスの対象になるとも思った。
早速大阪に出店しようと考え、大手全国紙に広告を掲載しようとした。だが、新聞各紙からは「広告掲載できない」と断られた。「前例がなかった。怪しい広告だと思われ、カツラならいいですよと言われた」と苦笑する。なんとか許可が降りた山陽新聞(岡山)で広告を掲載した。チラシと新聞の併用で、客足は順調で伸びていった。
■毎日欠かさずに取り組んでいるのがトイレ掃除
リーブ21のオフィスを尋ねると、朝礼で全員が決意表明を行っていた。「実践!挑戦!」と、ハキハキと大声で唱和することで、社員としての自覚を培っていく。ユニークな点は、全員がオフィスでスリッパを履かないことだ。「何か落ちているとか、濡れているとか、いろんなことに気がつく」(岡村氏)。リーブ21がここまで成長を遂げた理由の一つである"小さな気配り"は、そんなところから生まれてくるのだ。
リーブ21の店舗は、全てが2階以上にある。これも、薄毛で悩む人の気持ちの負担を少しでも軽減できるようにという「気配り」からだ。
岡村氏は、企業を経営する上で、ピーター・ドラッカーの教えが大きかったと語る。特に気になったのが「いい会社かどうかは社員に3つの質問をすればわかる」という話だという。
1.あなたは会社から尊敬されていますか
2.従業員が作った結果を会社が評価しているか
3.学ぼうとすれば会社はいつでも支援してくれますか?
「これを知って以来、社員全員を"さん"付けで呼ぶようににした。それまでは"君"だった。変わるべきは社員じゃない。こっち(経営者)だ。人材という意味が身に染みてわかってきた」。
岡村氏が毎日欠かさずに取り組んでいるのがトイレ掃除だ。38階建てのオフィスビルの全てのトイレを、自身で掃除している。「モノの見方や考えかた、性格・心の鋳型は20歳過ぎたら変わらない。成長するためにどうするか。それは"何か得にならないことを選択する"ことだ」。
自分の経営哲学を「為せば成る 為さねば成らぬ何事も 成らぬは為さぬ人のなりけり」と一言で表す岡村氏。血管年齢は「19歳」だというから驚きだ。
(AbemaTV/『偉大なる創業バカ一代』より)