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 「草木がボーボーになっている一戸建てがあったら、それはひょっとしたら事故物件かもしれないし、遺体がまだ家の中にあるというケースさえある」。

 「ミスター事故物件」、大島てる氏(39)。東京大学経済学部を卒業後、コロンビア大学大学院に入学するも中退。祖母の代からの家業である不動産を継ぐ傍ら、殺人や自殺などが起きた"事故物件"の情報を収集しはじめた。祖母の名前を冠した(※もともとは祖母の名前、通称で自分も“大島てる”という通称で仕事をしている)サイト「大島てる」も、当初は簡易なリストを掲載するだけだったが、今や韓国、中国、アメリカ、ヨーロッパも網羅、掲載物件は4万数千件にものぼる。サイト上では事故物件を「てる」とカウント。「都内には7000てる。日本全国だと3万8000てる」。中には死因だけでなく、部屋番号まで掲載されている物件もある。1日の平均閲覧数は100万にも及ぶ。

 「殺害予告も受けたことがある」とあっけらかんと言ってのける大島氏。AbemaTV『偉大なる創業バカ一代』では、そんな彼を取材した。

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 東京大学を卒業した大島氏がサイトを開設したのは12年前のこと。当時、「土地を仕入れて建物を建て、お貸しするという小さなディベロッパーのようなことをしていた」。大島氏は、事故物件に出会うこともしばしばだったという。「事実を知った上で安く仕入れるのはいいけど、事故物件を高値で掴まされたくない。後で発覚し、借り主に嫌だと言われればそれまで」。そんな状況に不満を持ち、自ら事故物件を調べ始めるようになった。しかし程なくして、入手できる情報はわずかだと悟った。ならばインターネットの力を借りよう、とサイトを設立、事故物件情報を掲載していった。すると住人などから「事件が起きたのはこのフロアだ」といった細かな情報が寄せられ始めたのだという。

 プライベートでもよく一人で事故物件を見に行くという大島氏。これまで見に行った物件は数千件、事件が起きてから最短18分でサイトにアップしたこともあるという。建物が崩壊し、近寄れない物件でも諦めることはない。何とかして部屋番号などの情報を得るため、望遠レンズを用いて撮影を試みる。

■殺人事件の犯人とされる人物からの削除要請も

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 一時は業界から敵視されていた大島氏だが、今やかつての自分と同じような思いを持つ業者、正直に告知する義務を感じている業者からの支持も集まり、セミナーの講師を頼まれることも増えた。

 「ただ、大家とは上手く行かない」。

 「迷惑だから削除してくれ」という依頼も舞い込む。しかし、「それって裏を返せば要するに『サイトの情報が合っていた』ということ。困る人がいないと、自分の活動には意味がないと思っている」と意に介さない。ある時は物件の所有者から「お前のサイトに載っているせいで、資産価値が下がり迷惑だ」と、削除を要請する手紙が送られてきた。いつものこととしてスルーしていた大島氏だが、送り主の名前を見て驚愕する。「その物件で起きた殺人事件の犯人とされた人物だった。逮捕され、実名で報道されたが、起訴されず釈放され、その物件に住んでいた」。

 奇妙な出来事はこれだけではない。「ストーカーみたいな感じの人で…『なんで返事くれないんですか』ってずっとつけられている」と、まさに現在進行系で危険にさらされていることを明かした。

■女性に大人気の「事故物件ナイト」

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 昼下がりの新宿歌舞伎町で行われていた大島氏主催のイベント「事故物件ナイト」。サイトには載っていないコアな話が聞けるとあって、チケットは毎回完売、この日も150人を収容できる会場は満席だった。しかも来客者の7割が女性。「不動産で働いていて、いわくつきの物件じゃないかという話をちょくちょく聞かされる」という人も。

 不動産業界でも注目されているというこのイベントで、大島氏はまだ誰も知らない、とっておきの事故物件情報を次々と披露していく。あるマンションの一室の写真を見せ「内側のノブで首吊りをしていた。だからドアの下からトロトロと"出て"くる…」と、生々しい話を繰り広げる。「知っている有名な事件と物件がリンクした時はすごい"うわぁ"ってなる」「リアルでありながら笑いもとる」と、女性たちは大満足の様子だった。

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 大島氏が教えてくれた、「呪われた物件」だという九州のとあるマンション。自殺が起きた部屋の真上に住んでいた人がその部屋を安く購入、上下2つの部屋を繋ぎ、2階建てのように改装したのだという。しかし、「しばらくしてからその人も自殺しちゃった」。

 そして、大島氏いわく「最凶の事故物件」というのが、"一戸建てに毛が生えた程度"という小さな物件。「屋上で首吊り自殺をした人がいる。その後、3階で酔っぱらい同士が喧嘩をして、ビール瓶で殴られた人が死んでしまった」。自殺に傷害致死…、これだけでも十分に事故物件だが、さらなる不幸が待っていた。「1階で美容室を経営していた大家さんが殺されてしまった。犯人は、2階に住んでいた住人で、2人は元夫婦だった。しかし、犯人は山奥で自殺しまった」。「大島てる」の中でも極めて珍しい、「3てる」の物件だ。

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 実は今、このような事故物件に住んでもいいという人たちが増えているのだ。理由は何と言ってもその安さだ。7割以上の物件が安くなり、4割の物件は半額以下になるのだという。こうしたニーズもあいまって、「大島てる」のアクセス数が伸びているのだ。

■「私を訴えてくる大家、脅迫してくる人の方が幽霊より怖い」

 こうした活動を続ける理由について大島氏は「(不動産業者の中には瑕疵があるにも関わらず)告知事項もないままに売ったり貸したりする人がいるから。事故物件をあの手この手で隠す、真実を隠蔽する、そのことで利益を得ている大家や業者がいるということは伝えていきたい」と話す。

 4万数千件の物件を掲載してもなお、把握できているのは"氷山の一角"と断言する。「事故物件であっても、誰かが一度住めば、その次からは告知義務はなくなる」という事がしばしば言われるが、大島氏は「それは都市伝説のようなもの。必ず告知しなければならないと定められているわけでもないし、これまでの判例を研究すると、2人目だから無条件で告知しなくてもいいということでもない」と説明する。

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 しかし、一度事故物件となれば、安く賃貸や売買に出されることもあり、あの手この手で回避しようとする大家もいる。大島氏が例に挙げたのは、ある一戸建ての物件だ。「殺人事件が起きた場所であっても、一度更地にして土地を分割、3つの土地にして3戸建ててしまえば、1戸は"殺人現場の跡地"であっても、そうではない他の2戸には告知義務はなくなるし、普通の値段で販売することができる」。

 かつての夢は軍人、経済学者、趣味は近代建築だという大島氏。「霊感はゼロ」だというが、「心霊現象を否定するつもりはなく、見てみたいとは思う」と笑う。そんな大島氏がこの世で最も恐怖を感じるのは「人間」だという。「個人的な考えだけど、平気で嘘をつく人間や私を訴えてくる大家、脅迫してくる人の方が幽霊より怖い。嘘つきな大家の持っている物件はたとえ事故物件じゃなくても取引はすべきじゃないんじゃないか」。

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 もともと「力に興味があった。物理的な力に。次に金の力に(笑)。今は情報に興味が移った」。起業家としての秘訣は「他人の嫌がることをやる。みんながやることだったらライバルも多い他人が嫌がることであればライバルなくナンバーワンになれるかも。嫌がられれば嫌がられるほどやりたくなる」と目を輝かせた。

(AbemaTV/『偉大なる創業バカ一代』より)

次回『偉大なる創業バカ一代』は16日(土)22時から!

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