野党から「大義がない」と批判を浴びる、今回の衆議院解散。25日に予定されている記者会見で、安倍総理は何を"大義"に掲げるのだろうか。
まず、このタイミングでの解散について、中央大学副学長の橋本基弘教授は「ある程度予想されたタイミングだと思う。野党側も準備が整っていなくてあたふたしていて、加計問題の影響も少なくなってきているから、ここで解散するのがメリットであるというのは分かる話。ただ、その理由というのは適当なのかというのには若干の疑問がある」と指摘する。
今回の選挙で、自民党は"来年10月に消費税を10%増税し、幼児教育の無償化、社会保障制度の見直しなどに充てる"というプランを争点にするとの報道もある。しかし、これに対して小池百合子都知事が「何かとってつけたような感じがする」とコメントするなど、疑問視する意見も多い。
戦後政治に詳しい作家の塩田潮氏は「10%にすると税収が増えるので、その使い道の話を持ち出している。それは国民の関心もあるところだが、解散総選挙をやるときにこの話を持ち出してきて、今やらなければならない話なのかと」と疑問を呈する。橋本氏も「安全保障の問題などで国民の声を聞いた方がいいケースがあって、この程度の問題で解散する必要があるのか、と多くの国民が思っているのではないか」話す。
現在、いわゆる改憲勢力が3分の2以上の議席を占めている国会。状況としては、憲法改正の発議のための環境は整っているともいえる。それでも解散に打って出るということは、これよりも議席を増やす勝算があるのだろうか。それとも今回は憲法改正に関しては諦め、議席減が一番少ないタイミングだと判断したからなのだろうか。
「当初、安倍さんは来年の今頃の解散を想定していたと思う。それを方針変換して1年早めた。政治情勢とか、与野党の関係とか、そういうことを全く別にして、本人が"これをやるために解散総選挙が必要なんだ"と思っていることが一つある。それは憲法改正だ。今の議席数は"憲法改正をやりますよ"と国民に問うて得たものではないし、全員が憲法改正に賛成するかどうかわからない。また、憲法改正を争点にした選挙の結果を見なければ、国会で発議しても、国民投票がどうなるかわからないという不安もつきまとう。まず、私の意見に賛成か反対か、国民に聞いておく、これは実は非常に正しい民主主義のやり方だと思う」(塩田氏)
橋本氏は「自民党が議席を減らしたたとしても、改憲勢力が3分の2以上あればいい。"より少なく負けるタイミング"を考えれば、今がいい。そこはきちんと読んでいて、"試合には負けるが勝負には勝つ"というようなことではないか」と安倍総理の戦略を分析した。
一方、橋本氏は「これまでは憲法改正の議論になると、どうしても国民の方も警戒する。議員の方も憲法が争点になると勝てないかもしれない、という意識があった。だからできれば憲法問題を持ち出したくない、触れたくない、という意識が強かった」とも指摘する。
今回の解散総選挙で、安倍総理が憲法改正を争点として前面に押し出してくる可能性はあるのだろうか。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)