![涙で「神輿」継続、街づくりが「続編」に影響 “アニメ聖地”を勝ち取った鷲宮・横須賀](https://times-abema.ismcdn.jp/mwimgs/9/4/724w/img_9442f984427acb0626d020679a94a4a4103149.jpg)
興行収入250億円を突破した大ヒットアニメ映画「君の名は。」。その舞台となった場所にファンが押し寄せるという“聖地巡礼”が昨年社会現象になった。このニーズの高まりを受けて、聖地をオフィシャルに認定するアニメツーリズム協会が発足した。
そして、今回発表されたのが「日本のアニメ聖地88」。アニメツーリズム協会・事務局長の森好文氏は「今回の目的は、アニメを通じて(作品の)地元の魅力に触れていただいて、その地元のファンになっていただく。それが我々が目指すところです」と認定の経緯を語る。認定されたのは交通機関のラッピングが話題となっている「ラブライブ!サンシャイン!!」の静岡県沼津市など、88カ所だ。
この中でもアニメツーリズム成功の先駆けとなっている存在が、埼玉県久喜市の鷲宮。鷲宮は、4人の女子高生たちのゆるい日常を描いた『らき☆すた』の聖地だ。オープニングに登場する鷲宮神社は、初詣の参拝客がアニメ放送前の5倍以上に増えたという。
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さらに人気を呼んでいるのが、「らき☆すた神輿」。35年の歴史を持つ土師祭(はじさい)というお祭りで、主に聖地を訪れたファンが担ぎ手となる。今年も9月の第1日曜日に開かれた土師祭。「らき☆すた神輿」を担ぐために集まったファンを『原宿アベニュー』(AbemaTV)は取材した。
■「担ぎ手が『来年もやってくれ』って泣き出しちゃった」
『らき☆すた』の絵でラッピングされたサイドカーに乗って現れたのは、覇月遊兎さん。「モーターボートとかサイドカーとかを専門で扱っている所で、一から作ってもらった。(費用は)大体200万円くらい」と話す。
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土師祭実行委員の鈴木卓男副会長は、「らき☆すた神輿」の起源について「(祭で)神輿を担ぎたいって言うの、らき☆すたのファンが。あなた方にはその(貧相な)身体じゃ無理だと断った。だから『子ども神輿でも担がせるか』と言ったのが最初だった。それも冗談だったのに、インターネットに流れちゃったんですよ」と語る。
2008年、「らき☆すた神輿」の登場を告知すると、当日の見物客が前年より2万人も増えたという。当初、「らき☆すた神輿」はこの年限りの予定だったそうだが、鈴木さんは「らき☆すた神輿の担ぎ手が泣き出しちゃった。『来年もやってくれ』って。そしたら(祭の)会長が『なんとかやれるように努力します』と言っちゃったら、インターネットに流れちゃって…。今年もやる…来年もやる…」と明かした。
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そして、今年で「らき☆すた神輿」は節目の10回目を迎えた。日が暮れ、いよいよ「らき☆すた神輿」がスタート。神輿は約3時間かけて鷲宮のメインストリートを往復する。アニメの登場人物たちの名前を連呼する掛け声は、10年間続いている伝統だという。「元々祭って自分たちオタクのものじゃなくて、一般の人たちのものなんですよ。うちらマイノリティのものではなかった。そのマイノリティの自分らでもこの祭に立派に参加できる。自分たちにとってはすごく貴重な場所です」と話すのは、らき☆すた神輿準備会代表の大木敏久さん。
この祭の見所は、関東最大級の千貫神輿。関東一円から約1500人がこの神輿を担ぐために集まる。伝統ある神輿の担ぎ手たちは「らき☆すた神輿」について、「ウェルカムウェルカム。らき☆すたウェルカム」「すごい!」「祭って皆が盛り上がればいいと思うんですよ。みなさん楽しんでいるからすごく良いと思いますよ。これからも続けて欲しいなと思いますね」と歓迎している様子だ。
祭には外国からの参加者もいる。アメリカ・ニューヨーク州在住のマイケル・クオコさんがこの祭に参加するのは5回目。「10年前から『らき☆すた』が好き。伝統の祭と現代の文化、それが交じり合っている所が好きです」と語った。
千貫神輿がスタート地点に戻ってくると、これまで神輿を担げていなかった人が一斉に押し掛け「もみ合い」に。土師祭のクライマックスだ。一方の「らき☆すた神輿」は平和にゴール。「We are らき☆すた~!」と声をかけ、大木代表の胴上げで終わった。鈴木さんは「お兄ちゃんたちから『来年もね』って言われちゃ『そうだね』って言っちゃうよな。みんな楽しみにしているんだもんな」と笑顔を見せた。
■街づくりからアニメ制作を動かした神奈川県横須賀市
アニメから聖地が生まれるのではなく、アニメより先に聖地を作った街もある。海洋高校の女子高生たちの活躍が描かれているアニメ『ハイスクール・フリート』。このアニメの舞台となっているのが、神奈川県横須賀市だ。駅からすぐの場所にある和菓子店「さかくら総本家」は、今やファンの間で特別なお店となっており、土日祝日は自社ビルの5階が無料開放され、ファンの交流スペースとなっている。キャラクターの誕生日には花を寄贈するファンも。
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アニメは国土の大半が海中に沈んでいるという設定のため、横須賀の街はあまり出てこない。そこで、横須賀市観光企画課はある作戦をとったという。「飲食店とコラボしたり、等身大パネルを置いたりすると、聖地が作れるんじゃないかなと」と話すのはサブカル担当の峰澤匡穂さん。市内34店舗に等身大パネルを設置し、コラボイベントを展開。これが評判を呼び、現在第3弾の福引企画が行われている。また、「さかくら」ではアニメに出てくるどら焼きやプリンを販売するなど、聖地を自分たちで作り上げていった。
このような活動はアニメの制作側を動かし、通常放送の後に発表された続編では、海上都市に元の横須賀の街を再現させたという設定で街の名所が次々と登場。「さかくら総本家」の店長まで出演している。「(アニメに)出していただいたからには『がんばらないと』という想いがまた芽生えました。『ここに来れば楽しい』と思っていただける空間づくりを念頭に1日でも長くこの場所を開放していきたい」と店長の坂倉純一さんは語った。
(AbemaTV/『原宿アベニュー』より)