9月27日の結党会見で「日本をリセットするために、この希望の党を立ち上げる」と述べ、政権交代に意気込みを見せた小池百合子都知事。民進党の両院議員総会で「我々はどんな手段を使っても安倍政権を止めなければいけないのではないか。それを考えた末に皆さんに提案する。名を捨てて実をとる。好き勝手な安倍政権を終わらせるためだ」と述べ、希望の党への"合流"を決断した前原代表。前原代表が所属議員全員の公認リストを申請したのに対し、小池代表ら希望の党側は一部議員の"排除"を示唆しており、前原代表自身も「どうなっているのか存じていない」と発言するほど混沌とした状況が続いている。
30日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』では、自民、民進、共産、そして希望の党のメンバーが、この問題について激論を交わした。
希望の党の旗揚げに参画した松原仁・元拉致問題担当相は、8月半ばの時点では民進党を離党する可能性についてきっぱりと否定していた。しかし、解散直前になって"小池新党"に加わる意向を表明、除籍処分を受けた。
この"心境の変化"について松原氏は「政党というのはマグマの爆発だと思っている。大きなエネルギーが集まって、バーンという力を持った時に大きなダイナミズムが生まれて、日本の政治をリセットできる。そのような政党が生まれるとは、そこまで想像力がなかった。そのことはお詫びする。しかし、今は祝福し頑張っていきたい」と説明する。
希望の党に公認申請している民進党の福島伸享氏は「私はそもそも松原さんよりも先に離党予備軍と報道されてきた。この1年、多くの若手は解党、もしくは解党的出直しを求めていた。どうしようもない安倍政権の存続を助けているのは、だらしない我々かもしれないという忸怩たる思いがあった。また松原さんと一緒になれるかもしれないので嬉しい」と話す。小池都知事らによる"排除"により、合流が叶わなかった場合は「それはそれで生きるしかないのではないか。理念の合う人と別の党を作るのみ」とした。
民進党との連携を一方的に断たれた格好となった日本共産党。山下芳生・参議院議員は「一方的に切られた。重大な裏切りだと思っている」と憤る。「2年前からずっと一緒にやってきた。市民の皆さんが国会の周りに集まって、『安保法制・戦争法は反対。通っても諦められない、廃止』とずっと運動をやってきて、去年の参議院選挙は4野党で選挙協力ができた。安倍さん倒すために新しい党に行くんだと言うけど、その倒す展望を我々は掴みかけた、示しかけていた。市民のみなさんもショックを受けている」と、民進党の方向転換を批判。
さらに「民進党からの候補者を選別する係の若狭さんは、その基準について、安保法制を容認する事、9条を含む改憲に反対しない事を挙げた。この二つは、"安倍暴走政治"のど真ん中で、一番"リセット"しなければならないもの。これをリセットしないで、しがらみを引きずるのなら、希望の党は自民党の補完勢力だ。安倍さんを倒した後の中身も変わらず、どこが新しい政治になるのか」と指摘した。
自民党の武見敬三・参議院議員は、希望の党への合流を望む民進党出身者たちについて「これから面接が始まるので大変ですね」と皮肉交じりにコメントした上で、「国民の目から見て、よくわからないだろう。綱領の中身の整理も具体策もない。どういう日本社会を作るためにリセットするのか、どういう外交・安全保障のためにリセットするのか、全くよく分かっていない」と話す。
「小池さんの優れた嗅覚で見事に今のムードができてしまったが、日本という国はムードで動いた時はいつも間違う。危険だと思う。本来、衆院選というのは政権を選択する選挙。過半数を獲得した党の代表者は首班指名を受けて首相になり、内閣を組織し、国民の生命と財産を守るという最も大きな役割を担う。ところが、希望の党は一体誰が本当の代表かわからないじゃないか。民主主義を改めて成熟化させるためにも、政党同士が政策をきちんと議論して、それを国民が判断することによって正しい選択ができるようにしていかなければならない。しかし今行われている事は、それと全く逆。ムードの中心人物に権力が集まり過ぎていて、小池さんが右と言えば右、左と言えば左、排除と言えば排除。党内でどういう人が責任を分かち合い、物事を決めるようになっているのか。政党のあり方自体が問われている」(武見氏)。
夏の都議選で落選した、自民党都連の中村彩・都政対策副委員長も「自民党と共産党は、考え方は全く違うが、長年の歴史の中で筋を通してやってきた人たち。しかし、例えば安保法制ができた時に"絶対に廃案に追い込む"と政調会長として言っていた細野さんは、安保法制に反対する人は希望の党に入れないとしている。当時自民党だった若狭さんも、安保法制の決議の時には議場を退場している。安法法制だけでもこんなにブレがある。1、2年で考えが変わるというのは、安保法制に賛成している人にも反対している人にも失礼ではないか。国民の顔色に合わせて動こうとせずに、しっかりと意見を述べている方たちこそ議員であるべきだと思っている。そういう姿を見て、国民も付いていくと思っている」とコメント。コラムニストの吉木誉絵氏も、松原氏と福島氏は、なぜ民進党で政権交代が実現できなかったのか、希望の党は単に民進党の議員が選挙で勝つためだけの"駆け込み寺"なのではないかと厳しく指摘した。
福島氏は「今までの保守・革新という55年体制の残りみたいな政治を全部リセットするというのが希望の党の考え。憲法改正に反対だから左、賛成だから右という分け方の政治をリセットして、憲法改正しても平和を守るという現実的手段があるかもしれないし、憲法を守っていても戦争になることはあるかもしれない。もっと現実的な、今までの対立構造を超えた新しい政治というものを国民の皆さんは求めているのではないか」とした上で、「選挙に勝つためにというつもりは毛頭ない。いい政策を掲げていても、それが国民の信頼を得て、"この人たちならやってくれるな"という期待感がなければ政権交代はできない。政党というのは国民との対話。しかし残念ながら、民主党が失敗して以降、国民との間にそういう関係を築く事ができなかった。だからこそもう一度、国民から信頼されるような政党を作り上げて、政策の実現を国民と共にやっていきたい。そういう党を作りたいから解党するべきだと言ってきたのであって、決して選挙目当てではない」と反論。
松原氏も「政治は山に例えられる。マグマが溜まってきて、その熱気と共に噴出すると実現力になる。批判もあるとは思うが、海底に溜まっているマグマが上に上がって希望の党という山をつくり、そして島を作る。民進党という山はマグマが少し冷えていたのかもしれない。政権交代の可能性を感じれば国民は燃える。自民党は今の日本社会が抱えている少子化への不安や貧富の格差など、様々な課題を解決できるのか。共産党は共産党の立ち位置で闘ってらっしゃるが、実際に政権を取れるかというと難しいんじゃないかと国民が感じているのであれば、政権をとりうる勢力を求めるのは当然だ。その意識を束ねるところから始まって、新しい日本のあり方を模索する政治が希望の党から出て来る。昭和30年代、40年代は貧しかったけれど、希望があった。今、閉塞感が漂っている。希望を感じているだろうか。『正義なき力は暴力だ』と言われるが、私は『力なき正義は無効』だと言いたい。前向きなメッセージが現実になりうるという予感を感じるというのなら、希望の党というのは極めて有意義な政党だし、そこに賭けてやっていきたいと思う」と意気込んだ。
まもなく1次公認が発表されるとみられる希望の党。民進党出身者の行方、そして野党共闘の行方はどうなるのか。注目が集まる。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)