シンセティックス社は解剖学的に正確な人形を生産する、世界で有名なメーカーである。シンセティックス社は、ロサンゼルスにある工場で、女性向けに完璧に再現された男性の人形を開発した。
古くから男性は女性に模した人形を愛用してきた。8世紀に書かれた神話オウィディウス『変身物語』には象牙からつくられた女性の彫像ガラテアの神話がある。
セックスドールは何世紀にも渡り、秘密の玩具とされてきたが、1968年に米国でアダルトグッズの通信販売が合法化され、ポルノ雑誌に初めて広告が載った。それ以来セックスドールは進化を遂げ、高品質な上に解剖学的にも正確な商品が生まれた。
シンセティックス社によって、これまでは男性しか楽しむことができなかったセックスドールが、今後は女性も体験できるようになった。
シンセティックス社の女性向けに作られる男のセックスドールは、時間の経過に耐えられるように、製作段階で耐久性を第一に考えている。作り上げた作品を見て、その背景に物語や人物像が浮かぶようにしているそうだ。完成形は最後まで目にせず、頭部は胴体とは別の場所で保管される。
シンセティックス社では、出荷の日に初めて頭と胴体を合わせるため、発送するまで完成形を見る機会はない。シンセティックス社の共同経営をしているブロンウェン・ケラー氏は経営に関する業務全般とカスタマーサービスを担当している。
同じく共同経営をしている経営者兼アーティストのマット・クリヴィッチ氏は制作を統括し、人形の造形を担当している。産業としてはまだ新しいものの、インターネットの普及に伴い、彼らの事業も可能になった。会社設立から5年目で出荷数は188体を達成している。
▷毎週金曜夜11時からAbemaTVの「Documentaryチャンネル」ではVICEを放送
「最近になって少しずつ女性も男性の人形を渇望していると分かってきた」とブロンウェンは語る。Redditの掲示板で取り上げられ、サイトにサクセスが集中し数日間繋がらなかったこともある。
人形は1体ずつカスタマイズするため、顧客からの注文にはかなり奇抜なものもある。カーニバルのキャラクターのセックスドールが欲しいという注文がくると、これには頭だけで約90万円、胴体も合わせると約160万円の費用がかかるという。依頼主はそれだけ本気でそのキャラクターのセックスドールが欲しいそうだ。
人形の注文で、仮に人種を指定された場合は、肌の色もピンクや茶色と変えていく。注文内容はさまざまであるため、人形は1体ごとに違っていて、自分の好みに合う人形を求めて細部まで指定できる。最も人気があるのは「近所の男の子みたいな顔」だという。
男性の人形の場合には、仕上げのオプションがあり、ごつごつした男性的な要素を加える作業で、そばかす、傷跡、アザなどあらゆる要望に応える。このような特徴が人形をよりリアルに見せる。顧客は、本物の人間が備える些細な欠点に魅力を感じるのだという。
シンセティックス社は性の研究室でもあり、ファンタジー工場のようでもある。マット以外にもスタッフが数人おり、彼らが作ったパーツを組み立てることで作品が完成する。
(スタッフのロバート)
スタッフのロバートは、人形の仕様の詳細を確認し、決められた通りにボルトを締め、型を調整して金属を覆う骨格のパーツを成型していく。ロバートは「コミュニティサイトから募集記事を見た」と、現在の仕事に応募したきっかけを話す。サイト上では詳しい業務内容は載っていなかったと言う。
人形の肉の部分の素材は企業秘密であり、この特許シリコン化合物を体の型に流し込む。型を一晩寝かせると胴体が出来上がる。その後部分ごとに色を塗っていき、マットが塗装スタッフを監視している。
顧客のポルノ女優ジェシカ・ライアンは、人形を購入した理由について「恋人と遠距離でセックスフレンド作ろうとしたが、いろいろと厄介に思ったのがきっかけ。セックスドールは感情がないから、快感を得たいときに最高の相手になってくれる」と語る。今はまだ市場規模は小さいが「Tinderで知らない人とデートするよりもはるかに簡単」だという。
27日(金)夜11時からAbemaTVの「Documentaryチャンネル」で放送のVICEでは、セックスドールの新たな可能性、シンセティックス社の工場の様子をより詳細に放送。ぜひお見逃しなく。
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(AbemaTV/Documentaryチャンネル『世界初の男性型セックスドール』より)
原題:Slutever: Making The World's First Male Sex Doll(2016)
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