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 今、ニュース業界で大きな注目を集める"記者ゼロ"の通信社、「JX通信社」。AIを用いて圧倒的なスピードで速報を配信、ニュースの産業革命を起こそうとしている。同社は今回の総選挙でも最先端のテクノロジーを使って情勢調査を行い、東京の小選挙区の投票結果を高い精度で予測することに成功した。

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 同社の米重克洋社長は「従来のメディアは人間がかなりの時間とコストをかけて大規模な調査を行うが、我々は機械で電話をかけて集計、最後の分析だけはの分析だけは私が行った。詳細は企業秘密だが、効率よく回答を集められるよう、電話番号をランダムに作った」と話す。

■すでにテレビ、新聞もサービスを導入

 「ビジネスとジャーナリズムの両立」をビジョンに、2008年に設立されたJX通信社。時に怒号が飛び交うマスメディアの「ニュースセンター」とは異なり、米重社長が案内してくれたオフィスはとても静かな空間。24人の社員の平均年齢は30歳で、7割がエンジニア、3割が営業・広報などの事務を担当している。

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 オフィスの中心にあるディスプレイに映し出されていたのが、JX通信社が誇るサービス「ファストアラート」だ。SNS上に流れる事件・事故などに関連する投稿を収集し、AIが内容を判断し教えてくれるサービスで、1秒で最大200件のニュースを配信できるという。「日本国内で4000万人がTwitterを利用していると言われているので、ある意味で監視カメラのようになっている」と事業責任者の細野雄紀氏。米重氏も「特に大きな災害時などは同時多発的にあちこち起こるので、そういう時にAIは非常に力になる」と話す。

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 ファストアラートはすでに民放各社や共同通信、新聞社が導入を始めており、テレビ朝日やAbemaTVのAbemaNewsチャンネルも、JX通信社が検知した情報をもとに事件・事故現場に駆けつけ、速報を伝えている。さらに一般向けには同社が提供する無料アプリ「News Digest」に情報を配信する。

■プロのジャーナリストが深い取材に専念できるようになる

 記者のいない通信社としてJX通信を立ち上げた米重氏は、「SNSも現場であるという考え方の元、その情報をいかに早く報道機関のニュースフロアに届けるか」という構想を実現すべく優秀なエンジニアを集め、システムの運用や貸し出し、アプリ開発などで収益を上げる会社へと成長させた。

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 "仮想通信社"というアイデアに至った経緯について、米重氏は「オンラインのニュースメディアがなかなか儲からないという課題がある一方、ネットによって新聞社もテレビ局も競争が激しくなり、より儲かりにくくなる状況がある一方、今までマスメディアだからこそ負担できていたジャーナリズムのコストがあると思う。そのコストを下げる方を機械化、テクノロジーで頑張ってみようということで構想した」と話す。

 「人間が関わる部分が大きい労働集約型産業では、過労死などの問題もある。Twitter検索などは言ってしまえば単純作業で、ジャーナリストや記者がやるべき仕事ではない。人間でなければできないこととそうでないことをしっかりと区別して、機械にできることは徹底して機械に任せる。今までは人間が警察や消防にいちいち取材しなければ情報は取れなかった。ファストアラートを利用することにより、プロのジャーナリストは裏にあるものを突っ込んで解明していくということにエネルギーを使えるようになる。そうすれば、コストを下げながら、より早く、より面白いニュース、より興味深いニュースが作れるようになるのではないか」。

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 ジャーナリストの堀潤氏も「みんなに見えていないもの、みんなが見過ごしていることにメディアがリソースをもっと割くことができれば、ジャーナリズムの多様化が実現できる。昔みたいにネットvsマスメディアではなく、協業でやっていくべきだ」と力を込める。米重氏によれば、メディアのアーカイブから素材を集めてくる作業なども、AIによって大幅に人手やコストが圧縮できるようになるのだという。

■AIの精度向上が課題

 一方、細野氏が「ニュースとは関係のない情報の中から本当に重要なものだけをよりスピーディーに収集するのが難しい」と話すとおり、情報の正確性を期すための努力も欠かせない。過去には高校生が焼肉店で投稿した、肉に火が燃え移っている写真と「火事だ」という文言の投稿を火災として判断してしまったり、盗撮していたとみられる男性をサルと混同してしまったりと、失敗も重ねた。

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 米重氏によると、過去に出回ったデマの特徴をAIに把握させ、事前に弾いていくよう学習させ、日々AIの性能を向上させ、偽の情報を99%まで判別できるまでに精度を高めているという。また、報道機関にとって重要だと言われる"裏取り"についても、「最後の部分は人間が確認する仕組みがある。例えば大きな火事を検知した場合、地元の消防に電話して、確認が取れたものを流すといった取り組みもしている」と説明した。

 JX通信社が目指すのはテクノロジーによるニュースの"産業革命"だという。「本当に昔からニュースが好きなので。新聞もテレビも。やはり伝える側に貢献したいなという気持ちがある」と話す米重氏。近く、メディアとの共同開発のサービス展開もあると明かした。

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 「150年前、それまで伝書鳩や飛脚が伝えてきていた情報を、ロイター通信が"電信"という新技術を使い1、2時間で英仏間を行き来させるというイノベーションを起こした。今、ソーシャルメディアという新しい波が出てきているので、この波をうまく捉えながら、世界的にも大きな通信社、メディアと呼ばれるような存在に私たちも育っていきたい」と決意を語った。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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