神奈川県座間市のアパートで9人の遺体が見つかった事件で昨日、死体遺棄の疑いで逮捕された職業不詳の白石隆浩容疑者が、殺害に関わったと認める内容の供述をしていることがわかった。
見つかった遺体は全て切断された状態で、白石容疑者の供述によると自宅で解体した頭部が入ったクーラーボックスに猫砂を被せ、遺体を隠した状態で持っていたという。白石容疑者の部屋は2階で、間取りは1ルーム。警視庁によると、玄関にクーラーボックスが1つあり、その中に人の頭部が2つ入っていた。クーラーボックスの猫砂は、遺体のにおい消しや乾燥に使用したとみられている。ほかにも部屋の中にクーラーボックスが2つ、大型の収納ボックスが5つ置いてあり、そのうちの6つの箱には女性8人、男性1人とみられるバラバラの遺体が入っていた。室内からはのこぎりも見つかっている。
警察の取調べに対し、「首を締めた。自宅の浴室で解体し肉と内臓は捨てた」と供述している白石容疑者。クーラーボックスを複数の人で運んでいたという目撃証言から、一時は複数犯とみる向きもあったが、警視庁は単独犯との見方を強めている。
■容疑者の人物像、犯行の動機は?
白石容疑者は、約2カ月前の8月22日にこのアパートへと引っ越してきた。アパートの関係者によると、白石容疑者の父親が「すぐに入りたい」と入居を急いだ様子で連絡してきたという。
白石容疑者は犯行時期について「8月末に最初の殺人を行った。部屋に引っ越してきてからまもなくして殺した」と供述。約2カ月の間に9人を殺害したことになる。
殺害の目的については「金銭目的で女性を襲って殺した。殺した全員から金をとった」と供述し、警視庁によると奪った金額は500円から50万円。
白石容疑者の人物像について、接点のあった人たちに話を聞いてみると、
「真面目な子だったのでびっくりしている。なぜそんなことを。(報道を)知らされたくなかった。中学では委員会をやっていて、洋服とか姿勢もきちんとしていた」(容疑者の中学時代の同級生)
「本当に素直な良い子。自分の息子と変わらない普通の中学生だった。家に遊びに来てくれて、息子と一緒にご飯食べたりしていた。当時を知っているからやっぱり辛いです」(容疑者の中学時代の同級生の母親)
「テキパキ仕事するし、後輩にも優しく教えていた。さわやかというか普通に好青年。どちらかというと礼儀正しい人」(容疑者と同じ職場に勤めていた女性)
「挨拶もちゃんとしてくれる感じだった。見た目も普通の人」(同じアパートの住人)
と、「素直」「真面目」「普通」など猟奇的な犯行からはかけ離れた印象の声があがる。また、白石容疑者は高校卒業後に実家を出たものの、今でも実家に住む父親に会いに帰ってくることがあったそうだ。
近隣の評判もよく、親孝行な一面も見せる白石容疑者だが、今年の足跡を辿ると浮かび上がってきたのは相反するような事実だ。今年の3月~5月に勤めた配送会社で働く直前、白石容疑者が行っていたのはスカウトの仕事。捜査関係者によると今年2月、風俗店に女性を紹介したとして「職業安定法違反」の疑いで逮捕されている。5月には、懲役1年2カ月、執行猶予3年の判決を受けていた。つまり、執行猶予中に犯行に及んだことになる。
■「初期と後半の犯行では動機が違う可能性」
知る人からは好意的な声があがる白石容疑者。その心理はどういったものが想定されるのか。『けやきヒル’sNES』(AbemaTV)では、明星大学准教授で心理学者の藤井靖氏に質問形式で話を聞いた。
Q.「優しい」「礼儀正しい」という声が多くあがる白石容疑者。その評判と猟奇的な事件が結びつかないが?
「心理学で『防衛機制』という心を守る働きの中に『反動形成』というものがある。例えば、周りからの評判が目立たない・真面目・大人しい・いい人という人が、ある時に仕事でうまくいかない、家庭環境に変化があったなど、何らかの強いストレスが加わると、外に出ている自分とは間逆の極端な自分が出てくることがある。それが今回の犯行に繋がったと考えれば、周囲の評判と極端な犯行は合点がいくところはある」
Q.犯行の動機として何が考えられるか?
「必ずしも全員同じ動機ではないと思う。容疑者が一人暮らしをした時に殺人が始まったとすれば、経済的な問題や孤独感、あるいは性的な欲求に基づいて殺人を犯した可能性はある。心理学には「血の酩酊」という概念があるが、これは一度殺人をして血を見た時に、何らかの興奮状態になったり今までにない感覚を覚えたりすると、その感覚を得るために殺人を繰り返すことがある。なので、初期の殺人と後半で動機が違うことはありえると思う」
Q.送検時、メガネの下から目を隠す、顔を覆っていた容疑者の様子から読み取れることは?
「何か精神的に異常をきたしていたり知的な問題があったりすると、犯行に及んでも罪悪感がないとか人前に出た時に恥ずかしいという感情を自分の中に感じることができない。ただ、大胆な行動とは裏腹に自分の顔を隠したいというのは、それなりの責任能力がある可能性はある」
Q.もし容疑者が「血の酩酊」状態にあったとして、今は冷静になった状態か?
「犯行を続けている最中も、冷静な部分と狂気の部分が両立して生活している状況が恐らくあったと思う。そうすると、自分が殺人をしてしまったというのは当然認識するわけで、それを抱えながら生活していくと心の中に葛藤が起こる。その葛藤を無くすために死体を損壊して隠すという行動に移ったとも考えられる」
Q.「シリアルキラー」という言葉も出てきているが
「シリアルキラーは大量殺人があった時に言及される、1~2年かけて本人からすれば一定の“冷却期間”をおきながら殺人を繰り返すもの。今回に関しては、シリアルキラーというよりも“スプリーキラー”といって、短期間のうちに殺人を繰り返すタイプではないかと思う。単純計算で1週間に1回殺人を行って、遺体を損壊している」
Q.遺体をバラバラにして頭部だけ別の箱に入れるとか、頭部と一緒の部屋で過ごすという心理状態については?
「一般的な大量殺人者の心理で、人を殺すためにとにかくばれないようにする考えが働く。頭部は身元が他の身体の部位に比べて分かりやすい。損壊もしにくい部位であるということで、自分の手元に置いておくことが一番ばれない方法と考えたのでは」
(AbemaTV/『けやきヒル’sNEWS』より)