iPhoneと切り離すことが出来ない言葉「ビッグウェーブ」をご存じだろうか。
この言葉は、日本で最初のiPhone「iPhone 3G」が発売された際、テレビの取材に購入者としてインタビューで答えたBUTCHさんのコメントの一部だ。新型のiPhoneが販売されるたびに行列に並ぶその姿は、もはやiPhone発売時の名物となっている。『原宿アベニュー』(AbemaTV)では、そんなiPhone購入の“最先端”を行くBUTCHさんに40時間密着した。
■差し入れや声をかけてくれた人とは写真を撮りSNSに投稿
「iPhoneX(テン)」発売の2日前。流行の最先端をゆく街、原宿にBUTCHさんは現れた。ロックなファッションに身を包み、モヒカン頭でたくさんの荷物を抱えている。
向かったのはソフトバンク表参道店。9年前の2008年6月、日本で初めてiPhoneが発売される直前もBUTCHさんはこのお店に並んでいた。そしてあの言葉「世界的ですもんね。乗るしかない このビッグウェーブに」が生まれた。ネット上ではすぐにアスキーアートが作られるなど大きな話題となり、iPhoneの発売日にはいつも行列の先頭付近を陣取っていることでも知られるようになった。
なぜ、iPhoneの行列に並び始めたのか。理由を尋ねるとBUTCHさんは「(9年前は)仕事が忙しい先輩の代わりに並んでました。並ぶの好きなんです。こうやっていろんな知らない人から話しかけられて、ビールとかおつまみとかもらって一緒に乾杯しておしゃべりするのがすごく楽しい。もう1円も使わないです。差し入れを頂いて3日間過ごしているので買わなくていいんですよ。俺はずっと食べて飲んでる。そりゃ太るよね。3日間で5kg太ってるから」と話す。
到着した直後に写真をSNSにアップし、仲間やファンに並んだことを報告。さらに動画を投稿したBUTCHさんのもとには、それらを見た人たちが会いにやってきた。夜8時、たまたま近くに用事があって応援に来たという女性は「インスタ見たらここにいるって書いてあったので。もうひたすら応援したい」と笑顔で話した。
BUTCHさんは来た人と写真を撮ることにしているという。「毎回決めていることがあって、差し入れとか声をかけてくれた人とは一緒に写真を撮って、SNSにありがとうという意味を込めてアップしています。そうすれば、この時にこの人が来たんだと分かる」と理由を説明した。
日付が変わる前に再度BUTCHさんを訪ねると、確かに差し入れでいっぱいになっていた。しかし、ともに夜を明かしてくれる行列仲間は現れず、「一人ぼっち」と孤独な様子をSNSに投稿した。
■「また並びたくなるんだよね、登山と一緒で」
発売日前日の昼、再びBUTCHさんが並んでいる場所に向かうと、代わりに場所取りをしていたのは1人の女性。戻ってきたBUTCHさんに関係を尋ねると彼女だということがわかった。やはり一人ぼっちは寂しかったのか。しかし、どれだけ経っても2番目の人は来ない。
そんななか、近くのアップルストアには長蛇の列。全国のアップルストアでは、11月3日に当日発売分の在庫を用意すると公式に発表していた。一方、BUTCHさんが並ぶショップでは当日販売が予約者のみに限られているため、並ぶことが好きなBUTCHさん以外泊まり組はいない。夜には雨も降り出した。
いよいよ発売日当日の朝を迎え、疲れの色が見えていた前日とは違い、表情からはゴールを目前に清々しさも感じられる。そして午前8時、「順番について来てください」と店員の案内が始まるも、なぜかBUTCHさんには声がかからない。
お店の前に並ぶことは誰よりも早かったBUTCHさん。しかし、予約が遅かったために発売初日にiPhone Xを手にすることはできなかった。「ダメだったなあ…。まあ俺が悪いのか。段取り8割っていうもんね…」と意気消沈のBUTCHさん。この日は彼女が運転する車で帰っていった。
なぜBUTCHさんはアップルストアに並ばなかったのか。それは、2008年に「ビッグウェーブ」という言葉が生まれた場所、自身の原点でありホームでもある場所で、今回の10周年記念モデル発売の日を迎えたかったからだという。
今後も並び続けるのかと尋ねると、「また並びたくなるんだよね、登山と一緒で」と答えてくれた。
(AbemaTV/『原宿アベニュー』より)