「未来を担う子供たちに、"保育・教育の無償化"を実現します 消費税10%の引き上げにより2020年の幼稚園・保育園の費用を無償化します」と公約に謳い、衆院選に勝利した自民党。
しかし、現在自民党が進める議論については、ネット上で「#子育て政策おかしくないですか」というハッシュタグのツイートが拡散するなど、さまざまな異論もあるようだ。22日のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した片山さつき参議院議員が、それらの疑問に答えた。
まず、「認可に入れなくて認可外に通っている人も多いのに」といった批判の根拠になっているとして番組が提示した毎日新聞の報道(認可外保育施設の利用は無償化の対象に含まない制度設計を政府が検討していることが分かった)について片山氏は「財務省など、財源を心配するところからそういう意見がでてきたのかもしれないが、認可外にしか入れないお子さんたちが恩恵を受けられないのは絶対におかしいというのが圧倒的な国会議員たちの声で、少なくとも私が副本部長を務めている会議でそちらの方向に議論が行きかけたことはない」と否定。
一方、共同通信が報じた「認可外施設も原則全て対象に加える検討に入った。0~5歳の約11万人が対象となる見通しで、現在の幼稚園の補助上限である月2万5700円を限度に支給する方向だ」との内容についても「幼稚園の補助上限については確かにこの数字(支給額25700円)だが、この金額で保育園も仕切るということまでは決めていないし、今日の自由民主党政務調査会「人生100年時代戦略本部」で決めた案にも書いていない」と否定した。
こうした報道との食い違いについて片山氏は「逆にこういう報道が出てきて皆さんがおかしいと言うことで、国会議員が集まって、認可外を外したらいけないと自信を持って言えるので、誤報にもいい面があるとも言える」とコメントした。
しかし、そもそも幼児教育無償化よりも、待機児童解消やそれに連なる保育士の給与問題の解決を優先させるべきだという意見は根強い。
片山議員は自民党の考え方について「元々2006年から幼児教育無償化をずっと公約に書いてきた。ただ、そのときは消費増税もしておらず、財源がなかった。また、笑われるかもしれないが、当時は"できる限り親が自分で育てるべきだ"という『3歳児神話』が党内で根強く、安倍政権も第一次の時にはそうだった。だから保育園の無償化まで行かなかった」と説明。
「しかし、このままいくと人口は1億人を切り、国民の生活レベルも福祉も成り立たなくなって廃れていく。そこでようやく米国人みたいな考え方を始めた。安倍総理も超保守派だったのが、お母さま方が望めば子どもを持ちながらでも収入を得て活躍できる準備をする土台を整えるのが国の役割ではないかと変わった。そして自民党は、未来への投資として教育が今一番必要であると考えている。そこで幼児教育を無償化するというところから出発した。教育のレベルを上げ、そこにアクセスさせ、人生100年時代に生涯所得を上げていただくようにするのが、次の世代にできることではないかと。みなさんにお聞きしたら、ほとんどの親は機会があって収入が許せば、できるだけ教育の質を高めたいという方が多い」。
その上で、待機児童問題について「特に首都圏では待機児童解消がやっぱり先だろうという認識も持っている。だから、2020年度までに32万人分の保育の受け皿を何がなんでも整備するとした。その上で無償化、低負担下する。それが2兆円パッケージだ。また、保育士さんの資格を持っている人が70万人も眠っている。しかし、東京の平均は1日10時間・300日お子さんを預かってるし、アレルギーの可能性のあるお子さんへの対応など、現場への要求水準が非常に高いと現場を見ていて感じる。他の労働と単純比較するだけではだめだ。財源が難しいが、もっと待遇を上げなければいけないし」と説明した。
片山氏が「民主党政権時代よりも自民党政権の方が明らかに成果を挙げてきた」と訴える、安倍政権下での保育の受け皿整備は、2013~15年度の期間に合計約31.4万人分の拡大を達成。保育士等の処遇改善についても、昨年度は2012年度比で約8%(月額26000円)上昇した実績がある。
しかし、2020年までに必要な保育の受け皿について、政府の算出データでは32万人としている一方、野村総研の資産では88.6万人となっている。これについて相模女子大学客員教授の白河桃子氏は「2020年に女性の就業率を77%に上げようとすると、このくらいの数が必要になるという意味だ」と解説した。
これに対し片山氏は「民主党政権の時には女性の就業率は70%しかなかった。我々はそれを上げてきた。2015年には73%、今74~75%まで来ている。働く人が185万人増えたうちの半分が女性なので、当然32万人では足りなくなり、今後40万、50万人になりうるということも含めて提言をまとめ、財源についても今回、認可保育所などのために事業主拠出金として経済界に3000億円負担いただく。そこまで考えて、キャパシティ増を目指している」と説明した。
しかし白河氏は実態はまだまだ厳しいと指摘する。「仕事を失うかもしれないという不安の中で働いている方がたくさんいる。その次の世代についても同様だ。スリール株式会社の『両立不安白書』によると、まだ子どももおらず未婚・彼氏なしの働く女性の9割が両立不安を持っており、子どもを持たないことや退職を考えたりしている。やはりこの状況は一刻も早く何とかしなければならない。やはりそういう意味では優先順位のつけ方としては、なぜここで無償化の方に(先に)予算がきたのか」と疑問を呈した。
さらに白河氏は制度においても議論の上でも幼稚園と保育園が分断されていることも日本ならではだとして「他の国は一緒にしているのになぜ別にしなければならないのか。フランスでは3歳から入りたい人は全員が保育学校というところに入れるようになっている。日本でも、小学校は義務教育だからこそ、田中角栄さんの時代に先生のお給料を上げて数を確保した。日本の場合もそのくらい思い切ったことが必要なのでは」と提案。片山氏もこれには賛同、「無償化の議論がきっかけにイギリスのように5歳から義務教育にすべきではないかといった思い切った是非の検討も始まった。今の年齢ではなく年度で区切られてしまう点も大問題だ」と話した。
子育ての現場からの切実な訴えに片山氏は「今回、巨大な一石を投じられたと思っているが、皆さんの声も必ず活かしていく。これで終わりではない。署名も私のところに持ってきて下さい」と話し、白河氏らも賛同する母親たち2万人超の署名を受け取るとした。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)