希望の党が先の衆院選で大敗した原因とされる、小池氏の"排除発言"。これを引き出したのが、記者会見での厳しい追及で知られ、"小池氏の天敵"とも言われているフリージャーナリストの横田一氏だ。
「小池氏に期待している」と話す横田氏。自らの質問が、小池氏が率いる希望の党の惨敗を招いてしまった今、何を思うのか。9日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』では、「記者クラブしか入れないところも受付を通らずに潜入したりしている。会見場から追い出されたりする」と、サングラス姿で登場した本人を直撃した。
■「僕の質問は"建設的な提案"だった」
記者会見では"トランプ大統領並みの記者選別"を行うとされる小池氏。横田氏の調べによると、昨年8月から今年7月までの指名回数ランキング上位には、1位が日本テレビのK記者(28回)、2位がTHE PAGEのG記者(20回)、3位がフジテレビのO記者(15回)と続くのに対し、フリーの横田氏はたったの3回だった。「このランキングを月刊誌の『創』で発表して、小池さんにプレッシャーをかけた。こんなに指さなくていいのか、トランプ大統領並みの選別をしていいのかと。そうしたら、9月に半年ぶりに指名された」と横田氏。
それが普段であればお気に入りの記者からの質問を優先させていた小池氏が、横田氏をついに指名した運命の9月29日だった。
「繰り返しになるが、前原代表が昨日発言した『(希望に)公認申請すれば排除されない』ということについて、小池代表は安保・改憲で一致する人のみを公認すると。前原代表を騙したのだろうか?共謀してリベラル派大量虐殺、公認拒否とも言われているが」と質問した横田氏に、小池氏は笑みを浮かべながら「あえて(マイクの)音声、入っていないの?」などと答え、会場には笑い声が起こる和やかなムードも見られた。
そして「わかりました。お答えいたします。排除されないということはございませんで…排除いたします」と回答。そこで横田氏が畳みかけるように「『(綱領にある)寛容な保守』であれば、ハト派からタカ派まで包み込まないのか」と質問を重ねると、小池氏はさすがにまずいと思ったのか、ニコニコと笑いながら「記者クラブは大変多様性に富んでいることをこれで証明していると思う。とても寛容な記者クラブでありがたく思う」と、話を逸しながら答えるのをやめ、次の記者を指名したのだった。
横田氏はこの時のことについて「油断したというか、自分のお気に入りの記者と質疑していた流れの、和やかな場であの発言が出てしまった。排除発言自体が悪いのではなく、前日に前原代表が党の両院議員総会で『排除されない、皆で一緒に行こう』と言っていたのに、翌日にひっくり返したのが悪かった。僕は"安倍政権倒す倒す詐欺"と呼んでいるが、民進党議員にとってみれば騙された、嘘をつかれたと感じたはずだ」と振り返る。
「『ハト派からタカ派まで、なんで包み込まないんですか』という僕の質問の意図は、"建設的な提案"だった。それなのに話をすり替えた。安倍政権を倒すために、共産党も含めた選挙協力をして、大きな塊となって戦ったほうが良かった。あのまま突入していれば、小池総理が誕生していたかもしれない。そこに小池さんに気付いてもらいたかった。すぐに撤回して、リベラル新党と希望の党を分けましょうと言っていれば、(ネットで)"緑のタヌキ"と言われることもなかった」(横田氏)。
しかし、”時すでに遅し”、だった。結果的にこの発言が引き金となり、小池氏に批判的な論調がメディアを席巻することになる。
東京新聞によると、翌日の会見の前に小池氏は「横田さんを当てないで」というメモを司会者に渡したという。その後も、横田氏の質問"排除"は続き、小池氏が質問を無視するシーンも瞬く間にネットで拡散され、イメージダウンに拍車をかけた。
しかし、あくまでも「後悔しているのではない」と話す横田氏。「北朝鮮の脅威がこれだけ増している中で、テロ対策が不十分なままの北陸地方の原発を止めようとしないし、再稼働も認めようとしている自民党・安倍政権はおかしいと思っている。こんな国民の生命をないがしろにする安倍政権は倒さないといけないと。それで小池さんに期待していた。若狭さんも当選して、今頃テロ対策が不十分だと安倍自民党を追及できたはずだ」と、同席していた若狭氏の落選にも言及した。
■若狭勝氏「やはり基本的な考え方が違う人とは一緒にやらない」
横田氏の指摘について、小池氏の元側近で前衆議院議員の若狭勝氏は「政党というのは、同じ考え方の人が集まるということが大事だと思う。だから基本的な考え方が違う人とは一緒にできないよという意味で"排除"という言葉を使ったのだと思う。ただ、それまで小池さんは都議会自民党に対して鋭く迫る、いわば"挑戦者"だった。それがあの極めて強い発言で、いかにも"権力者"という印象に変わってしまったのではないか」と話す。
「これは結婚する際の考え方に似ている。一つは『基本的な考え方が違うのだがとりあえず結婚しようよ。結婚した後に色々な問題が起きてもその時はその時で考えようよ』という考え方。もう一つは『いやいや、やはり人生一緒に過ごす以上は基本的な考え方ぐらいは一致していなければうまくいかないからまずはそこが大事でしょう』という考え方。私は弁護士としてよく離婚の相談を受けるが、前者は離婚する可能性が高い。考え方が違う民進党の人と『とりあえず安倍一強政権を倒すために一緒になろう』というのは、それと同じようなものだと思う。私がもう一度同じ状況下に置かれたとしても、やはり基本的な考え方が違う人とは一緒にやらない。それが国民に対しての誠実な態度だと思う。安倍政権を倒すために、目的を選ばず一緒になってやるというのは、民主党、そして民進党の中に考え方が違う人たちいたのと同じで、また失敗を重ねることになる」(若狭氏)。
コラムニストの吉木誉絵氏は「安保については与党と理念が一致していたし、国政に対する考え方の違いを出そうとしていたという意味では、合わない人を選別しなければいけないというのはあっただろう。だから"排除"発言よりも、むしろ都知事としての職に専念しなかったことの方が都民や国民にはマイナスになったのではないか」と指摘した。
■自民・川松都議「この人は何者なんだろう?と思った」
小池氏率いる都民ファーストが圧勝した7月の都議選で、自民党候補たちが次々と落選する中、103票という僅差で再選を果たした川松真一朗氏。自民党に激しく取材攻勢をかけているという横田氏について「この人は何者なんだろう?と思ったのは、自民党で宴会をやっていたところに、呼んでいないのにカメラを持って入ってこられた。僕は報道担当なので、出ていってくださいと言ったが、全く聞く耳を持たない。最後は都議会の職員が怒鳴ってやっと出ていった。こういう人はなかなかいない。是非、個別に(取材を)やりましょうよ」と苦笑。
川松氏は「横田さんがすごいのは、『質問もさせていただきます』と申請して会見に参加していること。横田さんの作ったランキングについても、都庁内では『この通りだ、上位に上がっている人たちは都知事に厳しい質問をしない』と話題になっていた」と横田氏の仕事ぶりを評価した上で、「横田さんはジャーナリストとして、どんな正義感やビジョンをもって質問されているのか。なんだかいつも面白がっているようにしか見えないが」と問いかけた。
横田氏は「まさに森友・加計問題で情報隠蔽の自民に対し国民の怒りや不満が溜まっていたところ、ズバリ透明化の都民ファーストの会ということで、安倍一強の中、都議選で自民党を惨敗に追い込んだ。あの勝負勘はすばらしいと思っていた。囲み取材で『ブラックボックス化の自民対透明化の都民ファーストの会ですか』と聞いたところ、『たまにはいいこと聞いてくれるわね』と褒められた」と説明、「面白おかしく質問しているのではなく、僕は小池さんへの期待がある」と、重ねて小池氏への期待感を表明した。
■小池氏の支持率が上がるための方策は…
衆院選後の希望の党の両院議員懇談会で、小池氏は「私の言動によりまして心ならずも多くの方々を傷つけてしまったことについても改めて謝りたい」と謝罪している。若狭氏は「選挙で候補者が力を合わせて頑張ったが、自分の発言によって選挙結果に悪影響を及ぼしたということで謝罪したのでは」と推察。一方、自民党の川松真一朗都議会議員は「あそこで謝っておかないと、自分に対する厳しい風当たりが止まらないから謝っただけではないか。気持ちがこもっている感じはしなかった」と批判的な見方を示した。
小池氏の今後について若狭氏は「とりあえず都知事としての仕事をこれからとことんやり抜くと。支持率が上がるための方策はこれしかないのではないか。もともとオリンピック・パラリンピックを成功させたいと思ってきた。そのためには国の力が必要なので、その意味で国政にも自身の意見を反映させたいという気持ちもある。そこで国政で野党第一党並みの力を保有するということが、オリンピック・パラリンピックを非常に大きく成功させるカギじゃないかと思っている部分はあるのでは」と指摘した。
JNN世論調査によると、12月2、3日時点における希望の党の支持率は1%とさらに下落した。衆参両院で民進党との統一会派を検討しているとも報じられている希望の党。都政に専念する意向を示した小池氏、その天敵の横田氏の今後はいかに?(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)