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 政府は天皇陛下の退位を2019年4月30日とすることを閣議決定した。天皇の退位は約200年ぶりで、憲政史上初めてのこと。「GWの休みが10日になる」などと話題になっているが、もう一つ忘れてはいけないのが「元号」の問題だ。既にネット上では次の元号が何になるのかと大盛り上がりを見せている一方、元号自体の廃止を主張する人もいる。

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 街の人に聞いてみると「何のためにあるのかわからない」「覚えるのが面倒くさい」「今を生きるなら必要じゃない」といった"元号不要論"と、「無くなってから生まれてくる人は寂しい」「時代遅れ」などと、元号の存続を訴える人に意見は分かれている。

 14日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、この問題について議論した。

■田嶋陽子氏「官公庁で使うのはやめるべき」

 元号の始まりは「大化改新」でもおなじみの「大化」だ。宮廷内クーデターを起こした中大兄皇子を中心とする新体制が中国の政治を取り入れようとする中で日本の元号は始まった。以来、元号は中国の古典に由来するものが多く、明治になるまでは天皇の交代以外にも大きな出来事が起きた際に臨機応変に変えてきた。

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 元参議院議員の田嶋陽子氏は「あってもいいし、表現が豊かになる部分はあると思うけれど、日常生活では使う必要がない。主権在民なのに、天皇家のものである元号が私たちの日常生活に出て来るのはおかしい。入れたかったら西暦の後ろにカッコで入れておけばいい。民主主義の観点からいうと元号に振り回されているというのはおかしい。不便だし、少なくとも官公庁では使うべきではない」と主張する。

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 一方、文筆家の古谷経衡氏は、今まで通り元号を使用し続けるべきだという立場だ。「世の中損得じゃないものもある。不便だという理由や合理的な考えで推し進めていったら何だっていらなくなる。世の中全部そうだが、『合理的にこれが便利だから必要だ。これは不便だからいらない』と消していったら世の中殺伐としてしまう。民主主義と天皇制は両立できる。じゃあなんで、"キリストが生まれてから何年"という西暦を私たちが使わなきゃいけないんです?私たちはキリスト教国じゃない。アングロサクソン、西洋のことに対して時代遅れというのはおかしい」とコメント。すると田嶋氏は「そんなこと言ってる時代じゃない。グローバルの時代なんだから」と反論した。

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 日経ビジネスの柳瀬博一氏は「ビジネスの現場は大抵西暦でやっているが、官公庁や証券取引所に提出する資料などには元号を使わなければいけない。逆に言えば、そこしか平成を使うシーンがない。その点では、他国とのやりとりも相対的に多くなっている時代に不都合は確かにある。国事やお祭りなどには積極的に元号を使い、ビジネス文書などは西暦に統一ということは議論されてもいいのかなという気がする。ただ、グローバル化とは別に、日本独自のものとして年号はあった方が色んな意味でいいのでは」とコメントした。

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 また、「2000年問題」のように、元号が変わる際にはシステムトラブルなどの問題が起きる可能性も指摘されてきた。

 あるシステムエンジニアは「この時代に、元号が変わった程度で混乱するようなシステムを組んでいるところは少ない」と話す。また、ある役所も「今のところ元号が変わった程度で予測される弊害は特にない」とコメント。カレンダーの印刷業者は「平成に変わったときには昭和天皇の体調などの情報をこまめに収集していたのと、変わったのが1月だったので大きな混乱はなかった」と振り返る。古谷氏も「出版やカレンダー業者などにとってはいろんな需要が出てきて、中小零細企業の助けにもなる。デメリットや混乱ばかりではない」と話す。

■古谷経衡氏「時間の経過によって"平成"にも重みが出てくるはず」

 時代の流れの中で、元号の存在については国会でも議論されたことがある。

 皇室に関する法律である旧皇室典範に記載されていた元号だったが、戦後、現行の皇室典範が制定された際にはその規定は消えていた。つまり、法律上は元号が一旦無くなったということだ。しかし昭和52年、昭和天皇が高齢になり、改めて元号の存在がクローズアップされることになる。この時、野党からは元号を廃止して西暦に統一するべきだという意見があがり、政府は世論調査を実施した。その結果、「昭和・大正というような年号を使っていますか?西暦を使っていますか?」との質問に、88.6%の人が「主に年号(元号)」と回答。元号は必要と判断され、昭和54年に「元号法」が制定、元号は政令で定めること、皇位の継承があった場合に限り改めること規定されることになった。

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 このことから、古谷氏は「選挙で選ばれた国会、そして政府で決めるのであれば、民主的に決まったものではないか」と指摘。しかし田嶋氏は「使い方については言っていないし、官公庁は必ず元号を使えとも言っていない。使い方は自由で、国民のものだ。時代とともに意識も変化している」と重ねて主張した。

 確かに、かつては元号がメインだと答えた人が圧倒的多数だったものの、番組で10~80代の人たちに街頭で調査したところ「西暦」と回答した人が76人だったのに対し、「元号」と回答したのは24人だった。

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 柳瀬氏は「事実上、社会生活で元号を使わなくなってきているのは確かだろう。ただ、昭和生まれにとっては、西暦よりも"昭和○年代"と表すことにリアリティがある。たとえば昭和一桁生まれの人たちは自分のことを"昭和ヒトケタ"と言ってきたし、"昭和20年代生まれのじじいじゃねえか"といった会話も成り立っていた。たしかに昭和生まれ対平成生まれということで考えることはあると思うが、"平成ヒトケタ"などとは言わないし、80年代生まれ、90年代生まれといった発想になっている。ごりごりの天皇主義者の方ですら平成○年ということにリアリティを持っているのだろうか」と指摘する。

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 これに対し古谷氏は「それは我々がいま平成に生きているからであって、時間の経過によって重みが出てくるもの。大正と聞いたときに大正デモクラシーや大正ロマンというものが思い浮かぶように、おそらく50年くらい経った時にそういう感覚が生まれていくのではないか」と訴えた。

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 議論を聞いていたふかわりょうは、「西暦と元号を変換する中で会話が盛り上がることもあるし、そういう煩わしさこそが社会の潤滑油。県ではなく、武蔵国とか言うときに趣があるように、昭和や平成の話をするのも楽しい。そんな些細なことが日常に潤いを与えていると思うので、めんどくさいからと消していったら息苦しくなる。でも、むしろ干支っていります?」とコメント。すると田嶋氏は「面白いじゃん!私は巳年だから蛇だぞ蛇だぞって言ったりして。楽しいじゃん(笑)」と、干支を使っていくことに対しては肯定的な様子だった。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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