このところ沖縄で相次いでいる米軍ヘリの不時着事故。小野寺五典防衛大臣は「(マティス米国防長官へ)再発防止策や点検整備の徹底等について、今一度、抜本的な対策を講じて頂くよう申し入れを行った」と述べたのに対し、翁長雄志沖縄県知事は「何としてもこの悪い循環を断ち切るようにしないと、沖縄のみならず、日本国の民主主義、地方自治といったものが問われていると思うので、これは単に一機の不時着だけの問題ではない」と訴えている。
立て続けに起こる事故、そして国と県で対立が続く普天間基地の辺野古移設問題。そもそも沖縄の問題は視聴率に結びつかないため、テレビでは取り上げられにくいとの見方がある。沖縄が抱える問題の何が報じられて、何が報じられていないのか。そして、日本人にとって、沖縄はどのような存在なのか。15日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、社会学者の宮台真司・首都大学東京教授とともに考えた。
番組MCのウーマンラッシュアワーの村本大輔は、以前「永田町にとって沖縄って何なのかってのが気になって、どういう存在なのかな」と発言している。
この素朴な疑問に対し、宮台氏は「これは"左翼にとって沖縄は何だったのか?"という疑問と回答は同じ。1950年代入って以降、左翼、あるいはリベラルを自称する人たちは、ずっと9条護憲を主張してきた。共産党などは当初、9条を改正して再軍備することを要求していた。また、9条平和主義者はアメリカの核の傘を前提にしている。つまり、守ってくれたらケツを舐めますという態度と表裏一体だ」と回答。
そして、「1972年に沖縄が返還された時、大和(本土)と沖縄の基地の比率はだいたい1対1だった。ところがその後、沖縄の比率は上昇することになった。これには基地を押し付けたという面と、もちろん沖縄の利権の問題もあるが、結果として大和に卑怯者が増えた。いざとなったらアメリカが守ってくれるかもしれないけど、日本の拠点が攻撃される可能性も現実的で、それは沖縄だ。自分たちのすぐそばに米軍基地があったらという前提で日米安保は議論するべきで、"攻撃されるのは自分たちのところではなく、沖縄だから"と言うのが右を名乗っているのは卑怯だろう」と指摘。さらに以前から沖縄に海兵隊は要らないという認識がアメリカ国内にある一方、日本の重武装化を防ぐためにも駐留すべきだという意見や日本政府からの要請によって、今も留まっているのだと説明した。
さらに宮台氏は日米同盟が非対称性(片務的)なものだと指摘する。
「地位協定は対等性が原則。冷戦体制以降、日本は制空権や基地管理権を持っていないが、イタリア・ドイツ・フィリピンは持っている。警察権など基地内での主権、国内法による演習の管理も日本はできないが、3か国はできる。土壌汚染と環境汚染に対する原状回復の費用も、3か国では全て米国が負担する。日本はサンフランシスコ講和条約以降、この状況が変わっていない。グアム島やハワイに自衛隊を常駐させる以外、変える手はない」。
そして、「保守は卑屈にケツ舐めてるんじゃなくて、思いやり予算をやめろよ!そんなもの他の国にはない!(現実的な話をしない政治家は)本当にクズだ」「日本が主権を回復するには日米安保を解消して重武装中立化するしかない。そのためには段階的に考えなければならないが、僕は鳩山一郎の系列の発想が大好きで、憲法改正は必要だが、それによって外交的な利益を失わないためには周辺国からの信頼醸成が必要だということ。実は鳩山由紀夫さんの憲法草案にも協力したが、鳩山さんって本当は強面の重武装化論者なのに、そこを隠してリベラルなところだけ出したからややこしくなった」と語った。
経済評論家の上念司氏は「保守の政治家が今まで議論を怠けてきたのが問題。それは野党の政治家が現実的な話をせず、非武装中立とかお花畑なことを言ってきたからだ」としながらも、日本は段階的に重武装中立を目指すべきだという宮台氏の持論に対しては「武装中立論よりも同盟を組んでいた方がコストは圧倒的に低い。日米同盟のおかげで防衛費は5兆円くらいですんでいるが、そうでなければ20~25兆かける軍事大国にならなければいけない」とコメントした。
すると宮台氏は「それは恥ずかしいことで、日米同盟を維持するために航空管制権も原発行政も農産物を含めた様々な通商も、日本は絶えずアメリカのケツを舐めるよう要求され続けている」と反論した。
村本が「沖縄で座り込みをしている人と話をしてきたが、プロ市民だとか結構レッテル貼りをされている」として、メディアは色んな人がいることを伝えてほしい訴えると、宮台氏も「政府が規制しているからじゃなく、マスメディアのせいだと僕は思う。沖縄は本土とは異なる血縁主義社会で、血縁集団の中に土木や砂利で食べている人がいっぱいいるので、自由に物が言えない。自分たちの親族、集団に不利益になるから口をつぐむという面がある。しかし、僕は気持ちを表現しろと言ってきた。表現をしないから、プロ市民やなんとか派が主導している、となってしまう。そういう背景、文脈の説明をしなきゃダメだ。まずいことが起こっているのに、視聴率が取れないからと放置して扱わないのはまずい」と指摘。
同時に「でかい図体して沖縄のふんどしで相撲を取っているんだから、右はもっと太っ腹でないといけない。弱いヤツがいろいろやったって許してやれよ。沖縄のマスコミの気持ちはわかる、しょうがないと、しかし問題はこうだと。でも、そろそろ本当のことをわかってくれという包摂の態度が必要だ」と右派の姿勢にも苦言を呈していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)