RTDリーグ、日本シリーズとビッグタイトルで決勝卓まで残りながら、あと一歩及ばず優勝に届かなかった白鳥翔(日本プロ麻雀連盟)。対局に心理学をも取り入れ“いいところ止まり”を返上するべく思いの丈を語った。
「昨年は優勝出来なかったというより、逃してしまった」と省みるが、メンタル面では大きな収穫があった。優れた技術を持っていたとしても、心も同時に鍛えていかなければ、その技術を使うことはできない。心を鍛える環境は「大きな舞台であればあるほど鍛えられるものなんだ」と体感できたことだ。
白鳥にとってRTDリーグは、まさに心を鍛えることができる最高の舞台であり「僕の麻雀人生はすごく恵まれている」と出場させてもらえていることに感謝している。「1年目より、2年目のほうが圧倒的に成長して臨めた感があります」と心の成長を感じたのは、開幕戦からいきなり3連敗した後だった。ポイントはマイナス200まで沈み込み、RTDに出場する以前だったら「一気に取り戻さなきゃ」と焦るところだったと振り返る。
白鳥は高校の頃、精神的な病気を患い、人ごみに行けなくなった時期があった。麻雀を打っていても、周りがザワザワしているだけで打てなくなってしまう状態だった。そんなときに伊達メガネをしてみたら、麻雀にも集中しやすくなったため、以降もたびたび使うようになった。
大学時代に麻雀に没頭しプロ入り。ありとあらゆる麻雀戦術書は、授業中にすべて読破した。さらに何か麻雀に生かせるものはないかと行き着いたのが心理学の本。なかでも興味を持ったのは「選択理論心理学」だった。端的に言えば「すべての行動は自らの選択で考える」という理論を、麻雀にも適応できるはずと考えたのだ。
この思考方法はRTDの卓上でも活きた。マイナス200ポイントという現状を受け入れ、残りの予選24回を焦らず、状況に応じて戦っていった。落ち着いて対処できたことで、着順取りの技術も冴え、最終的には+200ポイントまで積み上げ、予選を2位で通過した。1年目に得ていた「自分はこの舞台でもやれるんだ」という自信は、確信に変わった。だから3年目となる今期は「どんな状況になっても対処できる」と力みもない。
対局前日の過ごし方も変わった。RTDに出場する以前は、同じルールで必ず調整をしていたのだが、現在は対局はせず、リラックスして自分の好きなことをする時間にあてている。このように、どう過ごせば、心を整えた状態で対局日を迎えられるのかもつかめてきた。
サイン色紙には「柔の心」と書く。柔軟に対処していく自身の麻雀感を表す言葉である。BLACKもWHITEも自分のフォームを持っている選手は多い。しかし白鳥は「麻雀でフォームを貫くことはNG」だと考えている。対戦相手の打ち方によって、最適戦術は変わるものなので、打ち方を器用に変えられることがベストと思っているからだ。
白鳥の見立てでは、BLACKには「剛」の選手が多い。真の強者は「剛」なのか「柔」なのか、思想のぶつかり合いは必至。「まずは予選突破。やりがいがありますね」と、眩しい未来に備え、伊達メガネをかけた。【福山純生(雀聖アワー)】
◆白鳥翔(しらとり・しょう)1986年8月27日、東京都生まれ、A型。日本プロ麻雀連盟所属。第24・25期麻雀マスターズ。異名は「麻雀ハイブリッド」。
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