スウェーデンのテレビ局「TV4」が、AbemaTV「Wの悲喜劇~日本一過激なオンナのニュース~」を直撃取材――セクハラ・パワハラ報道の現場を追う
米国や欧州で広がるセクハラ告発の動き「#MeToo」が、マスコミなどの報道により、日本でも徐々に知られるようになってきた。米国では、女優アリッサ・ミラノさんがTwitterで呼びかけ、日本では昨年12月、ブロガーで作家のはあちゅうさんが、電通の社員だった時代に受けたセクハラ被害を名指しで告発した。はあちゅうさんの告発に続き、グラビアアイドルの石川優実さんも過去に受けた枕営業の被害を訴えるなどの動きがあったが、一方で告発者への激しいバッシングも目立つ。
米国で「#MeToo」運動の発端となるニュースが出たのは2017年10月。AbemaTV(アベマTV)「Wの悲喜劇~日本一過激なオンナのニュース~」では、この「#MeToo」運動が活発になる半年前の4月に日本におけるマスコミ業界のセクハラ・パワハラについて紹介しており、いち早くこの問題に注目していた。
「Wの悲喜劇~日本一過激なオンナのニュース~」はさまざまな体験をした女性たちをゲストとして呼び、番組MCや取材者が女性たちを取材する番組だ。前述の「マスコミ業界のセクハラ・パワハラ」をはじめ、過去には「不妊治療破産」や「複数交際を認める関係・ポリアモリー」「LGBT」「学校では教えてくれない性教育」など、ネット番組であることを強みにあらゆるタブーに切り込んできた。
そんな番組を知ったスウェーデンの民間テレビ局「TV4」から、番組スタッフに取材の話が舞い込んだ。スウェーデンの報道クルーたちも、米国で「#MeToo」の運動が加速するより半年も前にセクハラ・パワハラへの問題に気づいていた。「お互い半年以上も前に気づいて、放送で取り上げていたなんてすごいね!」とスウェーデンの報道クルーたちと意気投合。ぜひ、日本における「#MeToo」の動きと番組について取材したいという。そして今回、AbemaTIMES編集部では「TV4」のインタビューに応じる番組の津田 環プロデューサー(テレビマンユニオン)の様子を逆取材。
(▲取材中の「TV4」のスタッフ)
「TV4」のレポーターであるエリザベートに英語で応じる津田プロデューサー。取材が始まるとさっそく「#MeToo」の話題が出た。
津田:日本で「#MeToo」は、海外と比べるとあまりムーブメントになっていません。米国や欧米では大きな運動になっているようですが、日本では「#MeToo」について気にしていない人がほとんどです。テレビの報道やネットニュースをはじめ、確かに日本では「#MeToo」というハッシュタグが紹介されました。しかし、ポピュラーではありません。告発されていないだけで、日本にはたくさんのセクシャルハラスメント(セクハラ)があるんですけどね。
エリザベート:なぜ、日本では「#MeToo」が大きな運動になっていないのでしょう。
津田:たとえ私がセクハラ体験を話しても、そういう話は日本で大きな話題にならないんです。日本では昨年12月、過去に大きな広告代理店に勤めていた、はあちゅうさんという女性が、当時のセクハラ被害を名指しで告発しました。彼女は当時経験した、いくつかのセクハラとパワハラを自身のTwitterに投稿したのですが、日本のマスコミ業界ではよくあることとして人々に認識されているのです。私は約15年マスコミ・テレビ業界にいますが、新人だった最初の2年くらいは本当に上司や取引先との飲み会が多かった。日本語で“飲み(NOMI)”や“飲みニケーション(NOMI-Communication)”というのですが。
エリザベート:飲みニケーションというんですね。
津田:“飲み”は上司や取引先との飲み会など、仕事関係の人とお酒を飲むことです。「飲みニケーションは大切」と主張する上司はどこの業界でもいると思います。私は新人の頃、上司や先輩から「おまえはまだテレビをわかっていない」「才能がない」などと言われ、一方では胸や足を触られた。でも、この行為を男性達は悪いと思っていません。“飲みニケーション”の一つだと捉えています。もちろん、“飲みニケーション”の一つであって、恋愛感情ではありませんよ。こういうセクハラは今ではなくなりましたが、当時はよくあることでした。
エリザベート:本当に今はもうセクハラを受けていない?
津田:私はもう新人ではない年齢になってしまったから(笑)。男はみんな若い子が好きなんです。日本は女性同士であれば「セクハラされた」「こんなパワハラを経験した」という話をするけれど、あくまで女性同士だけ。男性がいると、そういう話は基本的にしませんね。
過去、女性の先輩が「そういうセクハラがあった事実を告発することはやめたほうがいい」と私に助言しました。「余計な波を立たせるな」と。私はとてもショックでした。日本では上司に限らず、女性でもいまだにこう言ってくる人がいます。
ヨーロッパなどに比べると、日本でセクハラやパワハラをちゃんと理解している人はとても少ないです。男性はコミュニケーションだと思っているから。セクシャルな話を女性から男性にすると、男性を困惑させてしまう。
エリザベート:日本では女性がセクハラやパワハラを告発することは難しい?
津田:日本では女性がセクハラやパワハラの問題を騒ぎ出すと「男がセクハラするほど、お前は美人じゃない」「この女性は自意識過剰だ」と男性から非難されてしまいます。私は過去フランスに在住していましたが、フランスでは文化的にセクハラ問題を自分から話すことができますよね。日本に帰って来たとき、日本ではそういうセクシャルな話を男性に話すべきではないことを知りました。黙っておくのがいいと。
エリザベート:セクハラやパワハラの問題の受け止め方について、今後日本は変わって欲しいと思いますか。
津田:はあちゅうさんの告発の件で、ちょっとずつ、本当に少しずつ変わってきていますが、報道やメディアで取り上げられても、日本はセクハラやパワハラについて議論しないのです。セクシャルな問題は義務教育でも教えないから、知識もない。テレビで報道しようにも、日本のテレビ業界は、女性のプロデューサーも少なく、セクシャリティー問題を扱う番組を制作することが難しいのです。
「#MeToo」運動が活発になる半年前に、私たちのネット番組「Wの悲喜劇~日本一過激なオンナのニュース~」(AbemaTV/アベマTV)では、日本における「マスコミ業界のセクハラ・パワハラ」を報じていました。これを報じたのは、われわれ報じる側の内側で起こっているセクハラやパワハラを検証しなければ、誠実な番組制作ができないと思ったからです。
この番組では、女性が恥ずかしがらずに観られるような番組になるよう制作しています。スマートフォンアプリやネット上であれば、より多くの人に届けることができます。まだAbemaTVは海外から観られる環境ではないのですが、日本でネット上から、議論を生みやすい場所を作ることで、女性が抱える問題や、時には男性にも知ってもらいたいセクシャリティーな問題について啓蒙し、正しい知識を紹介しています。
エリザベート:今日は話してくれてありがとう。
津田:こちらこそ。スウェーデンから来ていただいて、光栄です。
▲最後は集合記念撮影(左からTV4のカメラマン、レポーターのエリザベート、番組の津田プロデューサーと鎮目プロデューサー)
写真:野原誠治
テキスト:AbemaTIMES編集部
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