五輪出席前に行われたペンス副大統領との会談後、「北朝鮮の微笑み外交に目を奪われてはならないことを訴えていくことで一致した」と記者団に述べた安倍総理。ペンス副大統領も「文大統領および韓国国民に約束する。米国は今後も協力して北朝鮮に対して最大限の圧力をかけていく」とプレッシャーをかけた。安倍総理は翌9日の日韓首脳会談後にも「この瞬間も北朝鮮は核・ミサイル計画を執拗に追求し、開発を続けている。対話のための対話には意味がない。そのことをはっきりと文大統領に申し上げた」と強調している。
しかし金正恩氏の妹・与正氏の歴史的訪韓、そして微笑み外交によって、韓国の文在寅大統領は融和姿勢に傾いていっているように見える。10日には与正氏らを大統領府に招き昼食を共にし、3時間にわたる会談を行った。その席で与正氏は南北関係改善を目指すという金正恩委員長の親書を手渡し、「早い時期に面会する用意がある。都合のいい時期に訪朝してほしい」というメッセージを伝えたという。これに対し、文大統領も「今後条件を整えて実現させよう」と応じたとされる。
10日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』では、北朝鮮に接近していく文在寅政権の狙いについて議論した。
「簡単に言うと、文在寅は金正恩を国際社会の制裁から救うために平昌オリンピックを利用している。ヒトラーのベルリン五輪以来最悪のオリンピックだと思う。政治利用を許したIOCも悪い」。そう批判するのは、元駐日韓国大使館公使の洪熒氏。「この状況は少なくとも2か月前には韓国側が積極的にシナリオを書いていた。完全に八百長で、北とも事前に十分な意思疎通があった。そして一番の問題は、南から北にどのくらいお金が渡されたか。それは多分アメリカ当局も掴んでいる」と持論を展開。
元在大韓民国特命全権大使の武藤正敏氏も「文在寅による演出・主演だ。無事にオリンピックをやりたいIOCも反対しないので、思い通りになっている。一方、文政権は"この人たちだったら、簡単に手なづけられる"という金正恩委員長の"試験"をパスしている。文大統領としても、北に振り回されたとしても対話が進めばいいと思っている。これで米韓合同軍事演習が中止になれば、アメリカによる攻撃の可能性は高くなると思う」と説明。
自民党の青山繁晴参議院議員は「この動きは日本も当然把握している。3億円~5億円は使っているはずだ。後ろには中国の動きもある。実は新しいことをやっているわけではなく、以前にも北朝鮮にお金を渡して"南北の歴史的な会談"というのを繰り返して、ノーベル平和賞までもらった人がいる。文大統領としては、8月15日に北朝鮮に行きたいのだろう。反日ということをテコにしてアメリカの攻撃を避けたいという思惑だ」と話す。その上で「オリンピック・パラリンピックが3月18日に終わり、ロシアの大統領選挙も終わる。次は8月15日まで延長させたい。しかし、その先はない。いつまでも続けられるものではない。3月か4月にはアメリカの最終決断が下されるだろう。もしアメリカが軍事的オプションを選ぶのであれば夏頃。アメリカの本音はもう韓国抜きでやりたい。それに北も感づいている」と指摘した。
では、この南北融和ムードの先に、朝鮮半島の統一が待っているのだろうか。
洪氏は「韓国の憲法第4条で"自由民主主義の秩序でもって統一しなさい"となっていて、正確に言うと北の世襲、独裁体制を倒して解放するということだ。しかし、1年前の韓国と今の韓国は別の国。6月に日本における統一地方選があるが、文政権は社会主義的な憲法改正を目指している。文大統領の周りにいる人は金日成主義者、金正日主義者ばかりだ」と指摘。「南北は70年間戦争を続けている状態なので、結局戦争か、戦争に近い状況で終わるはずだ。だから"平和的に"云々するのは、言葉の遊びだ。クリントン政権が北朝鮮への空爆を取りやめたのは、当時はアメリカが攻撃される心配がなかったから。本当は決着を付けるしかない。しかし文大統領は当選したら真っ先に北朝鮮を訪問すると言っていた人だから、オリンピックを利用してできるところまでやってみようと賭けに出た。帰らざる橋を渡った。ここで連邦制が成功すれば成功、失敗すれば失敗だ」とした。
武藤氏も「韓国側は自分たちの流れで統一させると思っているが、対する北朝鮮側は元々の"赤化統一"という目標を全く捨てていない。実際に韓国の主導で統一する時というのは、北朝鮮が崩壊した場合だ」と説明。「文大統領の回りにいるスタッフは北になびいている人ばかり。今後はアメリカがどういう判断を下すかわからないが、切羽詰まった状況が続くと思う。ペンスさんがレセプションを5分で出たのは、米朝対話はしないという意味。安倍さんと一緒に会談したのも、まさにそういう意図だ」とコメントしていた。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ』より)