声優専門校の実態とは…（1）漠然とした夢が具体的な目標に変わる瞬間 | ニュース | ABEMA TIMES

　中目黒駅から大通り沿いに徒歩5分。バンタンゲームアカデミー東京校の門をくぐると、1人の生徒らしき男性と目が合った。「お疲れさまです」。その若者は、面識のない私たちに挨拶をしてきたのだ。

　印象的な出来事であったが、彼らにしてみれば、特別なことではなかった。バンタンゲームアカデミーの生徒の多くは、見知らぬ来訪者である私たちとすれ違うたびに挨拶をしてくれる、気持ちの良い若者たちだった。

「自分の商品価値」を考える力を養う

　AbemaTVで放送中のオリジナルドラマ『#声だけ天使』（全10回）は、声優専門校を舞台に、夢追う5人の友情と純愛、挫折と希望を描く青春群像劇となっている。いまや声優は人気職業の1つだが、声優になるために通う声優専門校の実態はどうなっているのか。その真相を探るべく、バンタンゲームアカデミー東京校を訪れることになった。

　取材に応じてくれたのは、広報企画部の濱田さん、生徒たちの担当スタッフである下村さんと皆川さんの3人。一体、どんな教育をしているのか。すると意外にも、特に厳格な指導は行っていないとの答えが返ってきた。

　濱田さんによると「バンタンでは創造性を磨くため、クリエイティブ、ビジネス、コミュニケーションという3つの要素を重視しています」とのこと。つまり「クリエイティブ」のための技術の習得はもちろんだが、習得した技術を生かすためには企画を立てる「ビジネス」のセンスが必要となる。そして自分の立てた企画を世に出すためには、プレゼンテーションを披露するための「コミュニケーション」能力を磨かなければならない。生徒たちは学生時代から、自ずと常に自分自身の商品価値を考え、どのように振る舞うべきかを考えることになる。それが、自ずと礼儀正しさにもつながるというわけだ。

　また、濱田さん曰く技術指導を担当するのが「100パーセント現役プロ講師」であることも大きな特徴。これは声優コースに限った話ではないが、生徒たちにとって、リアルタイムに活躍している講師は生きた教材。常に目標とする世界に接することで、刺激を受け続けられる。

声優専門校の門戸は開かれている

　バンタンは1965年に創立。専門教育については50年以上の歴史を持つスクールだ。しかし、声優を育成するコースを始めたのは4年前から。2年間の専門教育を受ける全日制スクールは1学年に約20名、通信制のN高と提携するバンタン学院には3学年で50名の生徒が、声優コースで学んでいる。

　『#声だけ天使』では45歳のテラさん（久ヶ沢徹）が、会社を辞めて声優を目指すために声優専門校に入学した。バンタンの全日制スクールも年齢制限はなく、通っている生徒の多くは18歳から28歳だが、いずれ、30代や40代の入学者が現れてもおかしくはない。

漠然とした夢から、具体的な目標に変わる瞬間

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ドラマ「#声だけ天使」の授業風景

　1クラス約20名。バンタンゲームアカデミーの声優コースは、少人数制の指導が特徴だ。情報化社会にあって、生徒たちも事前にさまざまな学校の授業の雰囲気などを見てから、入学するかどうかを決めるケースが多い。バンタンは、アットホームな雰囲気に加え、少人数をきめ細やかにサポートする体制が整っていることが魅力だろう。

　なかには「〇×事務所に入りたい」と、将来入りたい声優事務所まで具体的に決めている生徒もいる。しかし、ここで再びポイントになるのが、バンタンで重視している「クリエイティブ」「ビジネス」「コミュニケーション」という3つの要素だ。

　自分はどういった特徴を持つ声優を目指すべきなのか、そこから導き出される自分に合った声優事務所はどこなのか。漠然とした夢を持っていた生徒たちが、学生生活を送るなかで、地に足の着いた目標を持つようになる。スタッフの下村さんと皆川さんは、生徒たちの夢から目標に切り替わる瞬間をたくさん見てきた。大事にしているのは、〈自主性〉。もちろん悩みがあれば、話を聞く。けれど、大事にしているのは、どうして自分が悩んでいるのかを考えさせることだ。皆川さんは「成長し、卒業していく姿は、何よりも嬉しい」と目を細めた。

　現在放送中の『#声だけ天使』も、年齢も環境もバラバラな生徒たちが「声優になる」という夢を追いながら日々奮闘している様子が描かれている。少人数制のクラスの授業の様子や、先生からの指導風景、またオーディションの様子も詳細に描かれており、実際の声優学校と重ねて見るのも面白いのかもしれない。

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