
発行部数120万部を超える人気少女マンガ『曇天に笑う』の初実写映画が3月21日(水・祝)から公開される。メガホンを握ったのは『踊る大捜査線』シリーズでおなじみの本広克行監督。キャストには福士蒼汰、中山優馬、古川雄輝、桐山漣など、旬の若手俳優が名を連ねる本作。原作の美しい風景はそのままに、実写でしかできない迫力満載のアクションシーンをそこら中に散りばめている。作品に対するこだわりを監督にインタビューした。
「実写化するならば、見た目をなるべく寄せたい」原作モノへの挑戦

――『曇天に笑う』の実写化を手掛けることになったときの最初の感想を教えてください。
これまでオリジナルの作品の映画化ばかりを作っていて、漫画の人気作を実写化することがあまりなかったので、ずいぶん躊躇しました。漫画は漫画で楽しめるし、違うことをやるとファンの方が嫌がるんですよ。僕自身も、好きな漫画を変えられるのは嫌だし。だから実写化するならば、まずは見た目をなるべく寄せたい。でも漫画を実写でそのまま再現すると、これまた変になっちゃうんです。髪の毛の形とか色とかが不自然にね。だったらどうしたらいいのかという戦いがありました。
――腑に落ちるまでは長かったのでしょうか?
ずっと「わからない」と文句を言っていました。そうすると、プロデューサーやスタッフがたくさん案を出してくるんですよ(笑)。だんだん納得のいくものになっていきました。
――描きかたや演技はこれまでの作品との違いはありましたか?
オリジナルよりやりやすい部分もありました。わからないことがあってもすべて原作に書いてあるので、悩んだら読めばいい。実は『曇天に笑う』のあとに『亜人』を撮ったので、亜人はもっと楽でした(笑)。漫画を映画にするということはどういうことなのか、ノウハウがわかったあとだったので。

(c)2018映画「曇天に笑う」製作委員会 (c)唐々煙/マッグガーデン
――実写ならではのこだわりの部分は?
アクションですね。こっちは動画なので、みんな必死にトレーニングしましたよ。もともと動ける子を選んでいますけど。

(c)2018映画「曇天に笑う」製作委員会 (c)唐々煙/マッグガーデン
――原作にいた佐々木妃子というキャラクターの代わりに、映画では永山蓮(小関裕太)というキャラクターが追加されていますが、どういう意図があるのでしょうか。
アクション映画は100分でも長いと感じるので、まずは短くしたかった。そこで女性ができてき、恋愛とかを入れると長くなっちゃいますからね。だったら、男子のチャンバラアクション、忍者が出てきて、得体のしれないオロチがでてきてというほうが面白いかなと。女子萌えも意識して、女子が好きなものだらけにしています。
――女子萌えですか! そういえば出演者はイケメン男性ばかりですね。キャスティングのこだわりは?
キャスティングしたのは2年前で、そのときに「これから間違いなくブレイクするだろう」という人たちを選んでいます。小関君や市川君は当時でいうネクストブレイクで、狙い通り今人気モノですよね。古川君は当時から人気がありましたし、そこに大東君とか東山さんという両輪がちゃんとあり、加治君という笑い担当もあり、バランスよく、涙あり笑いあり、カッコよさアリという仕上がりになっています。
「話す距離をとにかく近く」 踊る大捜査線シリーズで学んだ女子が喜ぶ構図

(c)2018映画「曇天に笑う」製作委員会 (c)唐々煙/マッグガーデン
――キャストの印象的なエピソードはありますか?
耀人(若山)は当時中学一年生で……可愛いんですよ。身長は今よりも10センチ以上小さくて、みんなが面倒を見ているような感じが印象的でした。撮影中は、キャストたちが共に手を取り合っていたのがよかった。協和的というか、みんなで面白いものを作っていこうという感じがありました。かといって毎晩飲みに行くではなく、自分の時間はちゃんと持つ。普通は、仲良くなりすぎると喧嘩が始まるけど、距離感がすごくよかったので、撮影中ずっと面白かったですね。
――仲の良さが撮りやすさにつながることもあるんでしょうか?
映りかたも支え合っている感じがありました。どんなにいい絵を作ってもカメラに入っていないと意味がないので、背の高いやつは隙間を作って後ろの人を見せたりとかしていましたよ。市川(知宏)を見ていると面白いんですけど、常にカメラに抜けるように動くんですよ。必ずす~っと出てきて、写り込む。これ、ひとつの見どころです。みんなで笑いあいながら作ったいい作品になりましたね。

――監督からの演技指導は?
僕はあまり役者を縛らないんです。本があるし、とくに今回は原作もあるし。役者がいいなと思うことをしてほしい。僕から指示を出すと考えなくなっちゃうので。こだわったのは、構図ですね。男の顔と顔が近づいて喋ってるとか、そういう細かい部分をこだわりました。話す距離がとにかく近いんですよ、キスしてるかのように。これは、『踊る大捜査線』シリーズのときに、室井と青島でずっとやっていたことで。こそこそ喋るのが、カッコいいんですって、女子から見て。あのとき言われたなあと思いだして、今回も採用しています。

(c)2018映画「曇天に笑う」製作委員会 (c)唐々煙/マッグガーデン
――最初のオープニングのシーンが見せ場というか、とてもインパクトのある幕開けとなっています。参考にしたことなどはありますか?
冒頭は、すべてのスタッフ、すべてのキャストが一致団結してやる。1人がミスしたらもう一回やるっていうのが大好きで。僕、Sなので(笑)。まずはドローンが降りてきて、福士君が街を見ている。カメラマンは、町人の衣装を着て待っていて、ドローンが降りてきたら、それをキャッチして走るんです。全部ワンカットで。何回もテストして、みんなの波長を合わせると、一つのヤマを乗り越えることができて、その後の撮影もうまくいくんですよ。
――ありがとうございます! オープニングのシーンから楽しみです!
テキスト:氏家裕子
写真:オカダマコト
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