
指定暴力団「神戸山口組」(本部・兵庫県淡路市)から昨年4月に離脱した勢力が結成した「任俠山口組」(本部・同県尼崎市)について国家公安委員会は16日、指定暴力団にすることを決定した。
一方、暴力団の規制・排除が厳しくなったことで、経済的な困窮をうかがわせる事件も起きている。去年5月、愛知県のショッピングセンターで、スイカ・米・野菜など計7万6000円相当を万引きしたとして神戸山口組系幹部が逮捕された。また11月には北海道釧路町で暴力団幹部がイクラ目当てにサケ37匹を密漁し逮捕。さらに同月には福岡の暴力団組長が、贈られたお中元が安い明太子(2000円分)だったことに激怒し、相手を脅迫して逮捕された。
そんな彼らの懐事情を表しているのだろうか。六代目山口組の組員たちに配られるという機関紙には、このようなヤクザたちの少々切ない本音が、「正月は子供見るたび財布泣く」といった川柳・俳句に綴られている。
暴力団対策をめぐっては、暴力団対策法や各自治体での暴力団排除条例など様々な対策が行われてきた。暴力団対策法では、みかじめ料・口止め料などを要求する行為や因縁を付けて金品等を要求する行為が禁止された。また、2010年に福岡県が施行した暴力団排除条例では、暴力団員の銀行口座の開設、生命保険の加入や自動車販売店での購入禁止などが定められた。
さらに法務省は先月、暴力団の資金源を断ち切ることを目的とした法改正案を明らかにした。新たに株式会社を設立する場合、反社会的勢力に関わりがないことの申告を義務付けるというもので、今年秋にも導入を目指すとしている。

暴力団取材の第一人者の作家・溝口敦氏は「分裂前の山口組では、直系組長たちが年間1000万円くらいの上納金を収めていた。山口組組長だった司忍の年収は3億円以上だった。また、バブル期の地上げで金が入った頃には、一般人と比較にならないくらいの収入だったが、今は減っている。暴力団排除条例には暴力団への利益供与禁止というのがあり、氏名も公表されるため、近隣の飲食店や工務店などからも孤立している」と話す。溝口氏によると、そんな暴力団の現在の主な収益元は、覚醒剤、ネットカジノ、詐欺だという。
一方、元山口組2次団体幹部で現在は作家の沖田臥竜氏は、収益元はネットカジノのほか、覚醒剤、フロント企業を挙げる。「ヤクザだった人間を一度カタギに戻して事業を起こさせ、組織とは離れた状態にしながらお金が流れるようにしているフロント企業もある。最近では、フロント企業だということがわかりにくくなっている」。

そうした企業の主な業種は金融、不動産、建設、飲食だとされており、暴力団への活動を援助していると判断された場合、関係を断つように勧告され、事業者名が公表される。沖田氏は「私も飲食店を経営させていた。周りもヤクザの店だとわかっていたし、警察が家宅捜索に来たこともある。警察には店の屋号に自分の娘の名前を使っていただけで詐欺にあたるし、逮捕もできると言われ。暴力団排除条例の影響は大きい。自分だけでなく、妻や子どもにも影響が出るようになった。例えば暴力団員の父にキャッシュカードを貸りた子どもがお金を引き出した時点で詐欺罪にあたり、父子ともに逮捕されてしまう」と話した。

暴力団関係の法律に詳しい大野徹也弁護士によると、「暴力団と知りながら食事に行く」だけで関係者とみなされてしまう可能性もあり、関係が明るみになれば銀行や保険会社から取引を拒絶されることもあるという。また、暴力団員に「名義を貸す」ことも、条例による処分対象になる。さらに「結婚」は法的には問題ないものの、関係者とみなされる可能性があるという。
それだけではない。ヤクザを辞めてから5年経たないと様々な制約が課せられる「暴力団排除条項」というものがあり、溝口氏によると「銀行、不動産、中古自動車業界などでは『組を辞めてから5年を過ぎた』という項目にチェックをするものがある」という。ただ沖田氏は「5年の間、食べていけないので、人にもよるが、ちゃんと警察に行って"2度と戻りません"という誓約書を作れば、銀行口座を作れるようになったというケースもある」と実態を明かした。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)