麻生太郎財務大臣が「最終責任者だ」と名指しした、元理財局長の佐川宣寿・前国税庁長官の証人喚問があす行われる。大阪地検特捜部が事情聴取を検討しているともいわれており、「同情しかないよ。当時、官邸から"強気に答弁しろ"と言われていたみたいだから。でも前川さんみたいにぶち切れる可能性がないとは言えない。佐川さんは失うものは何もない」と話す財務省関係者もいるという。
24日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した元文部科学官僚の寺脇研氏は「官邸をはじめとする政治と官僚との関係が昔とは違って、アンバランスになってきてしまっている。そのため、昔だったらあり得ないことが起こってしまっている。内閣人事局で首根っこを押さえられている状態の上、何でも言うことを聞いていればいいのかと思いきや、"全部お前の責任だ"と言われる。"こうすれば気に入られる"ということさえ分からなくなって戸惑い、全体的に浮足立っている感じがする」と話す。
佐川氏の退職金は約5000万円になると報じられているが、「"本邦初公開"。私は12年勤めて退職金が300万円ちょっとだった」と明かすのは、民進党の小西洋之参議院議員。元総務官僚として、政治家と官僚の色々なことを知っているとした上で、「今までは各役所の中で事務次官が一番偉く、その下で局長や審議官の人事が決まる独立した組織だった。そこに政治家が手を突っ込んだ。内閣人事局の局長は官房副長官が務め、去年までは安倍総理側近の萩生田光一さんがやっていたので、霞が関はますます官邸にゴマすり、忖度、何でもやる状況だった」と指摘。
「以前は大臣が人事権を持っていたので、能力があってやる気のある大臣だったらいい意味で人事権を行使して、正しい政策が実現できるように官僚組織を使えた。菅官房長官はかつて総務大臣だった時、ある案件で課長が言うことを聞かないのでクビにした。朝とは別の人が夕方には課長になった。いいか悪いかは論評を避けるが、そのくらいのことをやる人事権が大臣にはあった。民主党の中でも少数派だったが、私は内閣人事局に大反対していた。こんなことをやったら、政治家に霞が関を壟断され、絶対に国を誤るからダメだと。しかし、当時の民主党の中にそういうリアリティはなかった」と明かした。
■内閣人事局は失敗だったのか?
自民党の松川るい参議院議員は元外務官僚だ。「今回の真相解明は証人喚問に期待するところだが、政と官の関係を再考するのが大事なことだと思う。思い出していただきたいのは、縦割り行政的な発想で仕事をする官僚主導は嫌だと国民の皆さんも思っていた。それぞれの省庁のことだけでなく、もっと国民の意思が総合的に働くシステムにしないといけないのではないかということで、今に至る政治主導の流れができていった。内閣人事局の趣旨がダメだということではなく、例えば人事権は次官までにする、といった具体的な議論があり得ると思う。官僚主導と政治主導のバランスの、どこがちょうどいいのかを不断に考える事が必要だ」と話す。
元財務官僚の山口真由氏は、理財局長は四代続けて国税庁長官に就任していると指摘、「財務省の上の方の人事は3つ先くらいまで決まっていて、理財局長は"待機ポスト"の一つ。理財局長になった時点で次は国税庁長官ということも決まっていたので、佐川さんがあのような国会答弁をしたから国税庁長官になれたということではない」と説明。その上で、「以前は財務省OBが財務省の人事を操っていたし、大物次官が強い権力を持っていた。制度が悪いわけではなく、難しいかもしれないが、もっと客観的に業績などで指標をもって人事を決めていくようにすべきではないか」と訴えた。
松川氏も「今、理財局職員は土日も返上でやっている。厚生労働省のデータ問題もあったが、まさにあの時に出てきた倍くらいの労働時間、霞が関の官僚は働いている。とくに野党のみなさんが前日にとんでもない質問を投げてくるし、必要な業務も増え、財政も厳しいため超長時間労働になっている。しかし、このまま続けるのは非人道的。人員を増やしたり、業務を効率化させたりすることが必要だ」とした。
佐川氏の証人喚問を前に、ある民進党幹部は「喋るわけないじゃないか。刑事訴追の可能性と言って逃げるよ」としている。一方、立憲民主党の枝野幸男代表は21日の街頭演説で「証言拒絶権を佐川さんは持っている。洗いざらい話してくれるかどうか分からない。でも皆さん、佐川さんに期待しよう」と訴え、"公僕"としての意地とプライドに期待を膨らませる。辻元清美国対委員長も20日、「佐川さん頑張れと申し上げたいと思う。官邸の方を向くのではなく、国民の方を向いて真実を述べていただきたい」と話した。信頼が失墜した"最強官庁"エリートの口から、真実は語られるのだろうか。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)