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 全世界で約20億人、国内で約2800万人ものユーザーを持つFacebookが揺れている。21日、マーク・ザッカーバーグCEOはCNNの番組に出演、「不正が起こった時点ですぐに気づかず、正しい対応ができなかったことを申し訳なく思っている。これは信用を裏切る行為で非常に残念だ。私たちには人々のデータを守る基本的な責任があり、それができないならサービスを提供する資格はない」と謝罪した。

 Facebookをめぐって明らかになったのが、個人情報が不正に利用されたとされる問題で、被害者は約5000万人に上るという。内部告発者によると、Facebook利用者の個人情報が研究者を経由して流出、一昨年のアメリカ大統領選挙でトランプ営と契約していたイギリスのデータ分析企業「ケンブリッジ・アナリティカ」社に渡っていたという。専門家の中には「プロパガンダ製造機」と呼ぶ人もいるという同社には23日、立ち入り調査が入っている。

■「普通に広告を出すより効果が高い」

 28日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演したITジャーナリストの三上洋氏は「個人情報漏洩などは今までもたくさんあったが、アメリカ大統領選やイギリスのEU離脱にも大きな影響を与えてしまったということは、今まで起きたSNSのスキャンダルの中でも最大のものだ」と指摘する。

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 Facebookでは、自分の情報をどこまで設定・公開するかを決めることができる。これには誕生日などの基本的な個人情報のほか、「政治観と宗教、信仰」「利用しているウェブサイト」「タイムラインの投稿」「好きな活動、趣味、関心。好きなもの」といった項目も含まれる。

 さらに投稿した写真の位置情報やファイル作成日、コンテンツへの「いいね!」やコメント・シェア、頻繁に交流する友達や好んで情報を共有するグループ、利用した心理テストやゲームなどの情報収集も可能で、これらを総合して分析することで、ユーザーの行動パターンや政治的傾向が見えてくるのだ。

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 三上氏によると、今回明らかになった問題では、ある研究者が心理テストのアプリを使ってユーザー約20万人分の情報を収集。そこから友達リストを辿ることで、データは5000万人分に膨れ上がったのだという。研究者はこのデータをケンブリッジ・アナリティカに売却、利用規約違反に当たる行為を行ったのだ。

 「単純に言えば、トランプ陣営を応援している人、いいね!を押しそうな人が見つかる。その中でもフォロワーが多い人や有名な人に対し、"クリントンはとんでもない"という内容の広告やフェイクニュースを見せ、シェアさせる。するとフォロワーたちが一斉にいいね!やコメントするのでFacebook内での表示位置や回数が上がり、さらに見る人が増える。投票に迷っている人に対しては中立に見えるようなクリントン批判の記事を見せることもできるので、普通に広告を出すより効果が高い。個々人がどういう趣味嗜好、政治信条を持っているかによって効果的に情報を流すことで、投票行動に向かわせることができる可能性があるということだ」。

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■アメリカ人にとっては寝室に入られるようなもの

 日本のFacebookユーザーたちに話を聞くと、

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 「登録して友達のFacebookを見ている程度」(20代女性・会社員)

 「インスタグラムの方が私たちの世代では流行っている。なんで登録するんですか、住所とか。個人情報じゃないですか、そういうの。使う必要はない」(19歳女性・学生)

 と反応は薄いが、本国のアメリカでの衝撃は大きいという。タレントのREINAは「日本ではビジネスで使っている人も多いが、アメリカではとてもパーソナルなスペース。自分の思想やものの考え方、オピニオンも書いてしまっている」と指摘、パックンも「そういう情報が流出しまうのは、寝室に入ってこられたようなものだ」と話す。

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 また、イラン出身タレント、サヘル・ローズは「中東の国々でFacebookは大切な存在。SNSのおかげでメッセージを発信できた人たちがいる。だから一概に悪いものだとは言えないが、このような形で利用されたり、知らないうちに情報拡散に加担してしまったりというのは怖い」とコメントした。

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■SNSのデータ収集は利用者の宿命か

 問題を受け、インターネット上ではFacebookページの削除を促す「#DeleteFacebook」というハッシュタグが広がりを見せている。電気自動車大手テスラと宇宙開発企業スペースXの最高責任者・イーロン・マスクCEOは、Facebook上の公式ページを削除するかを問われ、「ページがあるなんて知らなかったよ、削除する」「それにしても見た目がダサいな」と返答したという。このほか、プレイボーイ社がページの削除に言及、影響は株価にも現れた。週明けのニューヨーク株式市場でFacebook株が先週末比で一時10%近く下落。これがハイテク株にも波及、ダウ平均株価は一時500ドル近くの大幅下落となった。

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 三上氏は「Facebook側が構造的に規制できていなかったことは問題だが、直接的な流出ではなく、止めようがなかった。そして、Facebookの"お客さん"は我々ユーザーではなく広告主。ユーザー同士のつながりや『いいね!』などの情報はサービスの根幹で、それらのデータをもとに広告をターゲティングする。このことは規約にも書いてあることだ。SNSを利用する際は、いいね!したという情報や相手についてのデータを売って、その対価として無料で使っているんだという覚悟を持つ必要がある」と指摘した。

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 ジャーナリストの堀潤氏は「アメリカ大統領選についての報道は、SNSと連携することでガラッと変わった。どこの地域のどれくらいの年代の人がどういう反応をしたかといった情報と、ジャーナリズムが融合していた。Facebookがあることで色々な恩恵やイノベーションが生まれてきたのも事実。マーケティングや広告のために消費者のビッグデータが共有・利用されていく流れも止まらないと思う。"自分で選んで買った"と思いきや、知らず知らずのうちに買わされていることもある。そういうインフラの中で生きている」と指摘。その上で、「二次情報、三次情報でFacebook批判が広まっている部分もある。Facebookを消すか消さないか、使うか使わないかみたいな議論は極端で、そのこと自体がFacebookを潰そうという誰かのプロパガンダに乗っかってしまっている可能性すらある。今回の問題がどのくらい選挙にネガティブに働いたのか、そこまでを含む検証が必要だ」と訴えた。

 Facebookは28日、企業広告や個人情報の取扱いを見直す方針を明らかにしている。ザッカーバーグCEOは大統領選への影響などについて、4月に開かれる米国議会で、自ら状況を説明する方針だ。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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