世界が注目するスタートアップ大国・イスラエル。28日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、現地で最新テクノロジーの数々を取材した。
まず訪れたのは、世界三大一神教の聖地が集う街・エルサレムで"人を助ける解析技術"を研究する企業だ。今月、アメリカの公道で試験走行を行っていたウーバー・テクノロジーズの車が死亡事故を起こしたことで課題に直面している自動運転だが、その解決に取り組むのがMobileye社だ。
同社はドイツの大手自動車メーカーなどと組み、カメラに映る情報をコンピューターが解析し、車や人、障害物との距離が近づいたり、車体が車線を越えたりするとドライバーに警告音で伝えてくれるハイテク技術を開発。昨年には三菱ふそう、日野自動車などのメーカーも相次いで同社の「衝突防止補助システム」の導入を決めており、あのインテルが約1兆7000億円で買収した。
この解析技術は、視覚障がい者向けのガジェットにも応用されている。それが、OrCam社が発売するウェアラブル端末「MyEye」だ。カメラが捉えた対象を記憶し、音声で説明。目の不自由な人に新聞や雑誌の内容、さらに人物の名前などの情報を伝えてくれる。事業開発部長によると現在、世界で数千人のユーザーがいるという。高度な解析能力が必要な日本語版は現在テスト段階とのことだが、認識・読み上げ能力はなかなかのもの。現在、パートナーになってくれる日本企業を探している。
「イスラテック」の代表取締役・加藤清司さんは「彼らが開発を始めたのは2000年代頭くらいから。ノウハウもたまっており、自動運転車の約80%にはMobileyeのシステムが使われているといわれている。関連特許もたくさん持っているので、自動運転で何かをやろうとすると、必ずMobileyeの特許にぶつかるほど」と話す。
次に訪れたのは、イスラエル第2の都市・テルアビブ。リゾート地として観光客に人気のこの街に本拠地を置くNexar社はMobileye社と同じく運転補助システムを開発している。アプリをスマホにダウンロードするだけであっという間にドライブレコーダーになり、撮影した映像をクラウドに集め、AIが車間距離やスピードなどを分析し、危険も察知してくれる。VPマーケティング担当は「Nexarを同時に利用する車両が多ければ、コミュニケーションを充実させることができ、警告を一斉に伝えることもできる。日本のタクシー運転手にも役に立つことは間違いない」と話す。
■メディア関連のスタートアップも
イスラエルはウェブ制作に関連するスタートアップ企業もある。2006年創業のホームページ制作サービスWixは。豊富なテンプレートデザインとカスタマイズ性に優れ、世界190カ国、ユーザーは1億人を誇っており、日本でも2013年からサービスを提供している。Wix社のプロジェクトマネージャーは「ビジネスにおいて自分や会社の知名度を上げるのは1つの課題。Wixの商品を使えば、簡単に本格的なウェブサイトを無料または低コストで作成できる」と胸を張る。
また、Playbuzzも世界的に有名だ。テキストや画像、動画を投稿するだけで、すぐさま記事化が可能なサービスなどを提供、HuffPostなどのグローバルメディアを含む1万5000以上の会社と取引している。
撮影したばかりの写真や画像を、ものの数分でラテアートにしてしまうリップルもユニークだ。同社の商品を導入している高級ホテル・ヒルトンの従業員は「以前より存じ上げているお客様が朝食に来店した時、コーヒーに"おはようございます、コーエン様"とメッセージを浮かべておけば、よりハッピーな気分になれますよ」と話す。
■イスラエルの農業技術は日本でも活躍中
イスラエルでは、テクノロジーを使った農業改革も進んでいる。国土の半分が砂漠に覆われ、年間降水量は日本の半分以下だが、食糧自給率は日本の38%を大きく上回る93%だ。
約1000頭の牛がいる農場を訪れると、一般的な農場の5分の1程度の6人で管理しているという。これを可能にしたのが、SCR社の蓄牛管理システムだ。一頭ごとに付けた管理センサーで管理センサーで食事の摂取量や授乳の量などを細かくチェック。調子が悪い牛は、獣医にいち早く診せることができるという。このシステムは、日本でも北海道を中心に活躍しているといい、同社のテクニカルサービスディレクターは「病気の発見、食事の摂取状況、そしてもちろん繁殖の面などで、多くの農場経営者が助かっていると聞いている」とアピールした。
深刻な水不足の解決に取り組む企業もある。Netafimの水供給技術は、タンクに貯めた雨水や地下水をコンピューターで管理し、必要な水分だけを直接、根に供給することができるシステムだ。1996年には日本支社も設立、実は東日本大震災でも活躍した。
栃木県鹿沼市で、10年前からNetafimの水供給技術「点滴灌漑」を使用してトマトを栽培している渡邉義正さんは「水を無駄なく中に落とすことができたり、自動でプログラムを組めるので、栽培作業に時間を取ることができる。最初にイスラエル製だと聞いたときは、砂漠でそういうのがあると知ってちょっと驚いた。水を無駄なく使うところには、やはり学ぶところは多いのではないか」。導入費用は40~50万円ほどかかったが、収穫量は3割近く増えたといい、水量も4割ほど削減することができた。
加藤さんによると、Netafimは昼夜の寒暖の差によって発生する結露の水を集める技術を応用していったものだという。知らず知らずのうちに日本でも活躍するイスラエルのテクノロジー。加藤さんは「日本人の99%はイスラエルに行ったことがないと思う。行けば"戦争"というようなイメージも変わる。ぜひ一度足を運んでいただきたい」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)