先月、ピン芸人の日本一を決める大会『R-1ぐらんぷり』(フジテレビ系)が開催された。優勝したのは、それまでほとんどメディア出演はなく、ほぼ無名の芸人・濱田祐太郎であった。何よりも話題になったのは、濱田祐太郎がほぼ目の見えない視覚障がい者という点である。

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(画像は大会同日、濱田と同じブロックで登場した紺野ぶるまの公式Amebaブログより)

 濱田は生まれつき全盲に近い弱視で、左目は見えず、右目は明るさを確認できる程度。決勝第1ラウンドでは、濱田と同じCブロックで登場した紺野ぶるまが、視聴者投票や審査員投票の入っていく状況を濱田に伝えていた。大会当日は、この様子がテレビのワイプに映ったことでも話題になった。

 濱田のネタは自分の視覚障がいを最大の武器にしてネタをするスタイル。薄毛や肥満など、見た目を武器にしてネタにする芸人は多いが、濱田祐太郎は自身の視覚障がいを武器にすることを選んだ。

 審査員や視聴者は最初、どのように彼を見ていいのか戸惑っていた。本当に笑っていいのか、どうなのか。しかし、それは最初だけで、彼の話術に圧倒され、いつの間にか普通に笑わされていた。目がほとんど見えていないことを忘れさせるくらい、話術力が彼には備わっていたのである。

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(画像は紺野ぶるまの公式Amebaブログより)

 お笑いは隙間産業の世界だと言われている。芸人たちはネタやキャラが被らないように必死になって新しいことを探している。ただ、新しいことを見つけるのは難しい。見つかったとしてもそれが誰かの芸に似てしまっていたり、新しいことを表現するのに苦労したり、そのジャンルが世間にウケなかったりして、なかなか隙間を見つけられないでいる。

 そんな中、濱田祐太郎は障がい者という新しい分野で勝負に出た。実は、自身の障がいを武器にした芸人は、濱田祐太郎が初めてというわけではない。NHK Eテレで放送されている『バリバラ』という番組には、以前から障がいを持っている芸人やタレントが出演している。この障がい者のための情報バラエティ『バリバラ』は、笑いを織り交ぜながら、タブー視されがちなテーマにも挑むバリアフリー・バラエティ番組。2016年4月からは、障がいのある人に限らず「生きづらさを抱えるすべてのマイノリティー」の人たちの“バリア“をなくすため、みんなで考えていくことをコンセプトにしている(番組公式Webサイト『バリバラ』紹介ページより)。

 この番組では日本一面白い障がい者パフォーマーを決める大会『SHOW-1グランプリ』が開催されている。2010年、初代王者になったのが「脳性まひブラザーズ」というコンビだ。コンビ名の通り、彼らは二人とも脳性麻痺という障がいを持っている。そんな彼らのネタも好評で、脳性まひであることを武器にしたネタなのだが、カンニング竹山や放送作家の鈴木おさむも大絶賛し、障がい者の見方を変えた。

 その後、なかなか障がい者ネタというのは世間に認知されなかったが、ここに来て濱田祐太郎が『R-1ぐらんぷり』に優勝し、全国放送の地上波の番組に出演するようになり、時代の流れが変わってきているかもしれない。

 バラエティ番組に出演する濱田祐太郎はとにかく面白い返しをしようという意気込みが伝わってくる。他の芸人と何も遜色なく立ち振る舞っているのである。そして自分のキャラをよく分かっていて、それを最大限に引き出している。

 芸人は、どんなコンプレックスでも、武器としてうまく使えばそれを笑いに変えることができる。少し前だったら障がい者ネタは「笑えない」というのが世間での見方であっただろう。「笑えない」というより「笑ってはいけない」の方が正しいかもしれない。

 『R-1ぐらんぷり』のネタ披露冒頭では「迷ったら笑っといてくださいね」と呼びかけ、戸惑う観客に“笑ってもいい”という空気を作っていた濱田祐太郎。もちろんこれは芸人に限ったことであり、一般の障がい者の人たちが笑わせようとしているわけではないことには、注意をしないといけない。


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