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 「警察小説×『仁義なき戦い』」と評される柚月裕子のベストセラー小説を原作とした映画『孤狼の血』が5月12日(土)から全国公開される。メガホンを取ったのは『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』『彼女がその名を知らない鳥たち』などの白石和彌監督。物語の舞台は暴対法成立以前の広島・呉原市。暴力団系列の金融会社社員失踪事件をきっかけに捜査する警察と、暴力団組織間の激しい抗争を描くアウトローな「男」の映画だ。

 今回、AbemaTIMESは映画オリジナルキャラクターであるミステリアスな薬剤師・岡田子を演じた阿部純子インタビュー。手当てしたことがきっかけで、松坂桃李演じるキャリア刑事・日岡秀一と男女の仲になっていくという役柄で、試写会では男性の観客から大好評。魅力的な桃子というキャラクターは一体どのように生まれたかのか。役作りからラブシーンの裏側まで聞いてきた。

憧れていた白石組 オーディションで抜擢

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ーー脚本を読んだ時の感想を教えてください。

阿部:脚本の段階からすごく面白くて、読み始めたら止まらなくなりました。桃子のシーンはラブストーリー要素が強く他のシーンとテイストが違ったので、演じる上でどうしようかなという思いはあったのですが、白石監督からは「考えすぎないように」と言われていたので、松坂さん演じる日岡との雰囲気を大切にしようと思って演じました。

ーーオーディションで桃子役に決まったと伺いました。どのようなオーディションでしたか?

阿部:もともと白石監督の『ロストパラダイス・イン・トーキョー』を映画館で観ていて、その時からずっと白石監督と一緒にお仕事したいなと思っていたんです。それで別の現場でご挨拶させていただいた時のことを(監督が)覚えてくださっていて、今回オーディションに呼んでいただきました。台本にある桃子のセリフを指定されて、お芝居を見てもらうというオーディションでした。

呉弁のセリフではなかったんですけど、自分で「桃子」というキャラクターを考えて缶ビールを飲みながら芝居しました。桃子は薬剤師役ではあるんですけど、それだけじゃないところも見せないとと思って、女らしさを意識して演じさせてもらいました。

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(c)2018「孤狼の血」製作委員会

ーー二面性のあるキャラクターでしたが、演じ分けを意識しましたか?

阿部:桃子は日岡と二人きりのシーンが多くて、他の役者さんにお会いする機会が少なく、他のシーンがどういう雰囲気になっているかがわからなかったので、なるべく脚本に忠実にやろうと思っていました。監督からは「桃子はこうあってほしい」とかは言われていなくて、役が委ねられているなという印象がありました。なので、日岡と大上とこういう人間関係を持っているというのは頭の中においていましたけど、特に二面性を演じ分けようとは意識していなかったです。

ーー桃子の登場シーンでは、大上(役所広司)が日岡相手に大暴れしていましたね。

阿部:迫力が凄くて、圧倒されました。リハーサルを何度かしたんですけど、役所さんは毎回演じ方を変えられていました。こうしたら面白いんじゃないか、ってどんどんレゴを積み重ねるように演じていて。出来上がったものを見た時に、こういうことをしていたんだなと分かりました。役だけのことを考えるのではなく、どうしたらそのシーンが面白くなるかっていうのを考えて演じられているんだなと。そういう意味でも圧倒されました。

可愛い方言で男性に大人気も「脚本の力です」

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ーー試写を見た関係者、特に男性陣から桃子が評判とよく聞きます。

阿部:脚本の中の桃子がすごく「演じたい!」と思えるような女の子だったので、そのまま演じさせていただきました。脚本の力です。あと、私に役を任せてくださった白石監督のおかげです。

ーー桃子の呉弁がめちゃくちゃ可愛かったです。どのように習得されたのですか?

阿部:あの時は呉弁のCDをいただいて、それを聞いてずっと練習していました。寝る前とかもずっと聞いて、現場にも呉弁の方言指導の方がいらっしゃったので、その方に常に一緒にいていただいて、お弁当食べながら呉弁で話したりしていました。大阪出身なので、つい大阪弁が出ちゃうんですけど、呉弁とは似ているようで全然違うので、そのあたりの微妙なイントネーションの違いに苦労しました。

ーーもしよければ、呉弁で一言お願いできないでしょうか?

阿部:え~~(照)「びしょびしょじゃなくてびちょびちょよぉ(呉弁のイントネーションで)」!あのシーンは恥ずかしかったです。

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役所広司の気取らない優しさに感動

ーー原作者の柚月先生が、この作品を見たら必ず誰かに惚れるとおっしゃっていました。阿部さんは誰に魅力を感じましたか?

阿部:ガミさん(大上)が好きです。男気あるところがすごく好きですし、人を本気で守るってこういうことなんだな、っていうのを感じました。常に誰かのことを考えて行動しているというところに男気を感じました。

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(c)2018「孤狼の血」製作委員会

ーー役所さんの中にガミさんを感じたりは?

阿部:やっぱり役所さんってすごく尊敬している役者の先輩の一人だったので、お会いする前は緊張したんですけど、でも実際にお会いすると本当に気取らない方でした。「役所広司さんがいらっしゃる!」と思って力が入って現場に行ってしまっていたのですが、そういうところも包み込んでくださるような方でした。「こう演じようよ」とかそういう話ではなくて、「お弁当のこれ美味しいね」って話しかけてくださるような気さくさがあって、役所さんの現場だったから、こんな風に演じられたのかなと思います。ベストを尽くせる環境を作ってくれた。そういうところがガミさんと通じるところかもしれません。

松坂桃李とのラブシーンを振り返り「全然緊張しなかったです(笑)」

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ーー松坂さんとの共演シーンが多いですが、どのような方でしたか?

阿部:松坂さんは現場の王子様っていう感じですかね。人として物腰のやわらかい、腰の低い、優しい方でした。それが一つの才能というか、松坂さんの人柄なんだろうなと思いました。いい意味でお仕事をご一緒しやすい、安心感のある人でした。

でも、白石監督には常にいじられていました(笑)。前作『彼女がその名を知らない鳥たち』ももちろん見ていましたし、お二人の映画作りに対する信頼感みたいなものを感じました。

ーー以前、白石監督が松坂さんに対して「濡れ場の天才」というようにおっしゃっていました。実際にお相手をしていかがでしたか?

阿部:安心感しかなかったです(笑)。監督からも「松坂さんがいるから大丈夫だよ!」「そこは任せて大丈夫だよ」って言われていたんですけど、実際に(やってみると)その時には感じないであろうはずの安心感がありました。どういう風に動いたら、それっぽく見えるかっていうのを分かっている。分かりきっている。熟知している(笑)。松坂さんは、映像への映り方を踏まえて動いていらっしゃるような感じでした。

ーーでは、緊張もなく?

阿部:全然緊張しなかったです(笑)。カメラマンさんとか、皆さんがそれっぽく見せてくださったのかなと思います。もう本当に松坂さんはエキスパートだと思います(笑)。

映画好きの阿部純子、最近は「名作」に注目

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ーー『ロストパラダイス・イン・トーキョー』を映画館で観てからファンだったという白石組への参加、感動も大きかったのでは?

阿部:16歳くらいの時に『ロストパラダイス・イン・トーキョー』を観たんです。圧倒的だと思いました。この監督の頭の中、どうなってるんだろう?と思って、今も白石監督の頭の中は分からないんですけど。白石監督の頭の中がどうなっているか、中に入ってみたいです。大ファンだった白石監督にオーディション呼んでいただいただけでも嬉しかったですし、決まった時も、現場でも幸せな気持ちでした。これからも白石監督に呼んでいただけるように頑張らなきゃなと思います。

ーー16歳で『ロストパラダイス・イン・トーキョー』とはかなりツウな感じがしますが、最近はどのような映画を観ていますか?映画選びのポイントがあれば教えてください。

阿部:最近は「名作」と呼ばれるものを見ていて、やっぱり面白いんです。チャップリンとか新藤兼人、アッバス・キアロスタミ……キアロスタミが最近グッときています。「監督がいいと思う映画○選」みたいなのがあって、それを参考に映画を観たりしています。映画が大好きです!

ストーリー

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(c)2018「孤狼の血」製作委員会

 物語の舞台は、昭和63年、暴力団対策法成立直前の広島。所轄署に配属となった日岡秀一(松坂桃李)は、暴力団との癒着を噂される刑事・大上章吾(役所広司)とともに、金融会社社員失踪事件の捜査を担当する。常軌を逸した大上の捜査に戸惑う日岡。失踪事件を発端に、対立する暴力団組同士の抗争が激化し……。

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スタイリスト:岡本さなみ 

写真:オカダマコト

テキスト:堤茜子
 

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