1日のメーデーに先駆け、労働者の権利を訴えるデモが全国各地で行われた。
公の場で自らの考えを集団で主張するデモ。政権への抗議行動という文脈では、学生運動が過激化していく端緒ともなった60年安保や70年安保などが行われてきたが、時代の流れとともに徐々に減少。しかし東日本大震災以降、反原発など、社会を変えようとあらゆるデモが行われるようになってきた。
先月には森友学園の改ざん問題など、度重なる安倍政権の不祥事に怒る人々が国会前に集結。高齢者や仕事帰りのサラリーマン、子供を連れた母親など社会運動とは無縁に見える一般市民が声を上げていた。
その一方で、ネット上には「デモで何が変わるのか。デモは無意味」と、その効果について疑問視する声が多いのも事実だ。果たしてデモを行うことにどれほどの意味があるのだろうか。
■「デモは種まきみたいな仕事」中1から参加しつづける女性の思い
先月26日に行われた国会前デモの中心で安倍政権の退陣を訴えていた菱山南帆子さん(29)は、普段は障害者施設に勤務しながら、週末に憲法改正やセクハラ問題など、様々なデモに参加してきた。
「ある意味、種まきみたいな仕事だと思う。街頭宣伝でチラシを配ったり、マイクを持って喋ったり。ほとんどの人は素通りする。でも絶対に素通りしながらも『そうだよな』と思っている人がいる。そうだよなと思っている気持ちがある時にパッと花を咲かせるようにやっていかないと、世の中はそう簡単に変わらないと思う」。
菱山さんは小学校6年生のときにアメリカ同時多発テロ事件の映像を見て、戦争ではテロはなくならないと痛感。貧困、差別について考えるようになり、中学校1年生の時にはイラク戦争反対を訴えるデモに参加、アメリカ大使館前で座り込みをした。しかし、周囲の反応は冷たいものだった。「ビラをまいていたら、紙飛行機にして飛ばされた。なかなか共感してくれる友達は少なかった」。
それでも16年にわたって地道に自らの意見をデモ活動で主張し続けてきた。「デモで明日から世の中がきれいに変わるわけではない。続けることで歴史はちょっとずつ動いてくる。"行ったって変わらないじゃないか"というが、"じゃあやってみないと分からないじゃないか"と思う。私たちの運動というのは、それくらい長いこと。生きるのと同じこと。やる前にあきらめるなと思う」。
■2ちゃんねる創設者ひろゆき氏「社会が変わるとは全く思えない」
全国の被災地や沖縄で現地の人々の話を聞いてきたウーマンラッシュアワーの村本大輔は「画面に映るプラカードを見ていると、ネガティブイメージを抱きやすい、怖くなってしまうような言葉もある。おじいちゃんとおばあちゃんが"原発反対!"と太鼓を叩いているのを見ると、あまりいいイメージがないというか、それでどうなるんだという目で見てしまうのは仕方がないと思う」と話す一方、「辺野古で座り込みに参加しているおばちゃんは、嫌なことを言われたりするので、すごく勇気が要るけど、いろんなことをやったけどダメだったから参加したと言っていた。それぞれの人にそういう道のりがあることも理解すべきだと思う」と話す。
2ちゃんねる創設者の西村博之氏は「社会が変わるとは全く思えない。騒ぎたい人たちが集まって騒いでいて、楽しそうですね、というだけ。10万人いると言われても、それで?というだけ。政治は選挙で決まるし、選挙で10万人集めて政治家を作ればいい。騒ぐことで何か成し遂げた気になって、それにお金を使ったり、プライベートを犠牲にしたりしてエネルギーが失われてしまう方がマイナスだと思う。少数派がいくら嫌だと言っても結果は変わらないことはみんなわかっている。意見を言ってはいけないとは思わないが、多数派がこうするべきだと決めたら諦めるのが民主主義。選挙の時に何ができるのか考えるべきだ」と指摘。
政治学者の五野井郁夫・高千穂大学教授は「安倍政権の経済政策に不満が大きい人はそんなに多くないので、選挙では伝わらない可能性がある。そういう時にデモや抗議行動をしてちゃんと考えてくれと訴える。選挙期間は14日間。さらに投票日は1日。それしか政治を語る機会や自分の意思を表明する機会がないというのは理不尽。国会の予算委員会にはデモの声が聞こえてくるので、攻められている側に効いている部分はある。3年、5年、10年と長期的なスパンで見ると、変わっていくことがある」と話す。その一方、「おじいさんが太鼓を叩いている様子を見て、ただの自己満足なんじゃないの?と思ってしまう側面はあるだろう。もっと働きかける方法があるのに、自らその芽を摘んでるんじゃないか、まだまだ日本のデモは洗練されていない部分があるんじゃないか」とした。
■水道橋博士「身を投じる若者になぜ拍手を送らないのか」
アメリカでは高校生が主導した銃規制を求めるデモに約80万人が集結した。さらに、ハリウッドのセクハラ騒動に端を発したMe Too運動のデモが勃発するなど日本と同じように市民が積極的に声を上げている。
デモやストライキが日常茶飯事だというフランスで暮らすひろゆき氏は「日本の場合は騒いで終わりだが、フランスは迷惑をかけるのが目的で、法案を変えてよ、鉄道や飛行機が止まることによる損失よりも給料を上げる方がまだましでしょ、と国や企業を動かす」と指摘。
五野井氏は「若い人も含め賢くなってきていて、市民連合という政治団体を作り、実際に野党共闘を起こし、この前の衆院選では野党の議席が増えた。デモの雰囲気も変わってきていて、5月26、27日には都市型のフェスが開催される予定だ」と話す。
しかしマーケティングアナリストの原田曜平氏は「日本人は元々デモに対してネガティブに思っている。基本的に学生たちのほとんどはSEALDsみたいなものに対してもネガティブに感じてアンチ。Twitterなどで共感する人が増えてきているのは間違いないと思うが、欧米とは違うと思っている人が多数派だと思う。『意識が高い』というのは、本当はいいことだが、今は悪口みたいになってしまっている。やっぱり若い子たちでデモに参加している子たちは、意識高い系でくくられてしまう子たち。もっと普通の子たちが参加できるような雰囲気のものができれば多少変わるかもしれない」とコメント。
その上で「フェスにしてしまうとアーティスト目的で行く人が増え、かえってデモの良さが無くなるのではないか。そしてSEALDsのようなものが見えなくなってきているだけではないか」との考えを示した。
水道橋博士は「そもそも非合法な活動をしているわけではなくて、警察に申請を出して、非暴力的に声をあげている。確かに汚い言葉を使うと共感を呼ばないとは思うが、民主主義で当たり前のことをやっている。いろんな方法があるが、一番手っ取り早い方法がデモだと思う。"デモなんて意味がないから、マジョリティ側にいろよ"という考え方に我慢できない人が声をあげるのだと思うし、そういう行動をする若者は健全だと思う。自分が利益を得るわけでもない行動に身を投じる若者になぜ拍手を送らないのかと思う」との考えを示した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)