
フォーチュン誌によって、世界で初めての億万長者に認定された石油王ジャン・ポール・ゲティ。1973年ローマで彼の孫が誘拐され、当時史上最高額とも祝える身代金を要求されたものの、その支払いを拒否した世界一有名な誘拐事件が、巨匠リドリー・スコットの手によりついに映画化。『ゲティ家の身代金』が5月25日(金)に日本公開となる。
日本をはじめ世界中を震撼させたこの誘拐事件。人質は【世界一の大富豪】であるアメリカ人石油王ジャン・ポール・ゲティの孫、ジョン・ポール・ゲティ三世。犯人はイタリア最大の犯罪組織。1,700万ドル(約50億円※)という破格の身代金もさることながら、50億ドル(1.4兆円)の資産を持つゲティがその身代金の支払いを拒否したことでも有名で、日本の新聞、週刊誌でも大きく報道された。この事件の裏側で、誘拐犯と身代金を拒むゲティの間で戦い続けた人質の母親がいた。アビゲイル・ハリスは愛する息子の誘拐事件に直面し、ゲティに身代金の支払いの協力を求める。しかしそれを拒否された彼女は、息子の救出のため、誘拐犯に加えて、冷酷な大富豪に立ちはだかることに…。“一般家庭の母”はいかにこの2つの強敵に立ち向かったのか…。(※事件が発生した1973年11月当時の為替レート1ドル=278.263円で算出)
主人公ゲイルを演じるのは、『マリリン 7日間の恋』でゴールデン・グローブ賞主演女優賞を受賞、アカデミー賞ノミネートを果たした実力派女優ミシェル・ウィリアムズ。世間の好機の目に晒されながらも気丈に大富豪と誘拐犯に立ち向かう強い母親を演じた。また、元CIAの交渉人チェイス役には、『ディパーデッド』『テッド』と、コミカルな役からシリアスまで幅広い演技に定評のあるマーク・ウォールバーグが名を連ねる。そして、億万長者であり狂人という、本作の裏の主人公ともいえるジャン・ポール・ゲティを演じるのは、アカデミー賞俳優、クリストファー・プラマー。そしてこの異常な事件を現代のスクリーンに蘇らせたのは、『オデッセイ』、『アメリカン・ギャングスター』、『グラディエーター』、『エイリアン』など、数々の不朽の作品を世に放つ、巨匠リドリー・スコット監督。
リドリー・スコット監督の女性主人公と言えば、『エイリアン』シリーズのエレン・リプリーに代表される“戦う女性”が有名だが、昨年から2018年にかけて、様々なタイプの同様の映画が公開された年でもあった。元祖戦う女主人公のリプリーと昨年から登場した新たな“戦う女性”たちを一挙に解説し、この系譜に連なる最新ヒロインである今作の主人公アビゲイル・ハリスを紹介していく。
1. 戦う女の代名詞 エレン・リプリー 『エイリアン』(1979)
言わずと知れたエイリアンシリーズの主人公エレン・リプリー。ターミネーターシリーズのサラ・コナーと並ぶハリウッドの闘うヒロインの代表であり、演じるシガニー・ウィーバー最大の当たり役として世間一般に広く認知されている。2012年にイギリスのウェブサイト「DEN OF GEEK!」で行われたSF映画の主人公ランキング TOP50- The top 50 sci-fi movie protagonists –では、公開から30年以上経っているにも関わらずルーク・スカイウォーカーやカーク船長(ジェームズ・T・カーク)を抑えて1位に輝いている。前日譚にあたる『プロメテウス』(2012)やその続編『エイリアン: コヴェナント』(2017)においても“戦うヒロイン”は継続され、エイリアンと死闘を繰り広げている。
2. 多くの女性に希望と感動を与えたヒーロー!ワンダーウーマン/ダイアナ 『ワンダーウーマン』(2017)
女性監督作品および女性が主役のアクション映画として初週・累計収入ともに歴代1位となり、名実ともに女性ヒーローのアイコンとなったのがワンダーウーマンだ。ジェームズ・キャメロン監督が本作に投げかけた否定的なコメントに対してメガホンを取ったパティ・ジェンキンス監督がTwitterで鋭く切り替えしたのも記憶に新しく、2019年公開予定の続編が待ち望まれる。
3. 容赦も笑いも一切無し。ロレーン・ブロートン 『アトミック・ブロンド』(2017)
体格で劣る男性に対してワンダーではない人間の女性がリアルにどう戦い、勝つのかを体現しているのが本作。ジャッキーが椅子など周りにあるものを武器として使うようにロレーンも優れた体術+アルファで周りのあらゆるものを使い、尚且つ喉、股間、膝関節といった急所を容赦なく攻める。アメコミヒーローとはまた違ったスタイリッシュかつ生々しいアクションでド正面から男に立ち向かう姿が楽しめる良作。
4. 仁義なき孤狼の女ロビイスト!エリザベス・スローン 『女神の見えざる手』(2017)
あらゆる手段を駆使してロビー活動(政治家に対して行われる各種団体や陳情団などの働きかけ)の勝利をもぎ取る不撓不屈の女性エリザベス・スローン。銃規制反対派に対抗するために一層過激なロビー活動を展開させていく彼女の姿に、予告編で流れる「敵にも味方にもしたくない女」という言葉が心底腑に落ちること請け合いである。彼女は男社会の仕組みを巧みに利用することで自らの立場を有利にしていく。
5. 素人女経営者VS男社会 キャサリン・グラハム 『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』(2017)
本作の主人公キャサリン・グラハムは自殺した夫の後を継いで新聞社のトップに立ったものの、本人に信念も無く、部下の男性社員から軽んじられる日々を送る。しかし、徐々に成長し覚悟を持って国家機密文書の掲載に挑む姿は「政府VS報道の自由」という普遍のテーマを描きつつ、「女性蔑視・差別」といった非常に今日的なテーマを扱っている。そしてこのテーマは『ゲティ家の身代金』のアビゲイル・ハリスにも繋がっていく。
6. 息子の為に知恵と勇気で戦う母親ヒロイン!アビゲイル・ハリス 『ゲティ家の身代金』(2018)
息子を誘拐した犯人グループと義理の父を相手取り、ワンダーでもスパイでもない“普通の母”が息子の為に強敵に立ち向かう。銃を片手に戦闘を行う強さではなく、男社会の中で知略をもって立ち向かう芯の強さと聡明さは、MeToo問題を始めとした「女性蔑視・差別」の問題に直面している多くの女性を勇気づける。この役を演じたミシェル・ウィリアムズは本作について、「もちろんこれはサスペンスに満ちたドラマではあるが、同時にフェミニズム映画でもあると思う。男の世界のなかで女であるというのはどういうことなのかを掘り下げる。まともに受け止めてもらうにはあらゆる知力と能力を使って闘い、事態をコントロールし、周りと対等に渡り合わなければならないということを彼女は本質的に分かっていた。女であるがために軽んじられ、過小評価され、除外されるシーンがこの作品には数多く散りばめられている。こういうタフで、リアルで、尖ったところのある複雑なキャラクターを演じるのが大好き。ゲイルは崩れることが許されない。目標をしっかりと見据えないといけないが、そこまでの道筋が日々刻々と変化する。彼女のコントロールの及ばないところで様々な出来事や人々が影響して事態が変わっていく」と語っている。

