■ 『帰れマンデー見っけ隊!!』『中居正広の身になる図書館』渡邉達也ディレクターインタビュー 今、視聴者から求められる“リアリティ”とは?

 「帰れま10」はお笑いコンビ・タカアンドトシら出演者たちが、ファーストフード店、ファミレス、居酒屋などの人気メニューを食べ、上位10品を当てるまで帰れないという、『もしものシミュレーションバラエティー お試しかっ!』(テレビ朝日系列)の人気企画。現在放送中の『帰れマンデー見っけ隊!!』でも引き続き放送されている。

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(テレビ朝日・渡邉達也ディレクター)

 今回は、この「帰れま10」に初期より携わり、『帰れマンデー見っけ隊!!』や『中居正広の身になる図書館』も担当している渡邉達也ディレクターにインタビューを敢行。

 AbemaTV(アベマTV)でテレビ朝日の人気バラエティーを放送する枠『バラエティーステーションpresented by テレ朝』でも番組制作に関わる渡邉ディレクター。ネットとテレビ局は共存できるのか。地上波とネット番組はどのように付き合っていくべきなのか。今後のテレビ業界について感じていることを聞いてみた。

入社からバラエティー番組一筋、長いロケで得た知見

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――普段はどのようなお仕事をやっているのでしょうか。


渡邉達也ディレクター(以下、渡邉):大きく分けて2つの番組に携わっていまして『帰れマンデー見っけ隊!!』と『中居正広の身になる図書館』という番組でディレクターをやっています。過去、最初はAD(アシスタント・ディレクター)としてレギュラー番組『もしものシミュレーションバラエティー お試しかっ!』に携わっていました。そのメイン企画であった「帰れま10」は『帰れマンデー見っけ隊!!』でも定期的にやっていて、今はディレクターとして携わっています。

――『もしものシミュレーションバラエティー お試しかっ!』のAD時代があったということですが、いつ頃テレビ朝日へ入社されたのでしょうか。

渡邉:2011年の新卒入社です。ちょうど東日本大震災が起きた年ですね。ずっとバラエティーがしたくて、バラエティー志望で入社しました。希望通りバラエティーの部署に配属が決まって、そこからずっとバラエティー一筋です。

――主にバラエティーではどのようなロケを担当されたのですか?


渡邉:僕の場合、バラエティーでも比較的長い時間をかけるロケが多いんです。『帰れま10』以外に『濱キス』という番組でも、よゐこの濱口優さんとKis-My-Ft2さんと長いロケばかりやっていました。

長いロケに慣れてしまったので、2時間くらいの収録があると「これ大丈夫かな?」と不安になるんです。麻痺しました(笑)。

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「帰れま10」ディレクターが語る、今視聴者から求められる“リアリティ”とは?
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――普段の生活の中でテレビは観ますか?


渡邉:そうですね。バラエティー、ドラマ、ニュース……あとは野球の試合も見ますね。昔、僕も野球児だったので。ただ、作る側になって分かったのが、テレビ業界に入るとテレビが見られなくなるということ。あんなにテレビが好きでこの業界に入ったのに、忙しいからどんどんテレビを視聴する時間がなくなっていくんです。

――趣味を仕事している人が多い職業とも言えますね。


渡邉:スタッフルームにもテレビがあるので、そこで意識的にテレビをつけるようにしています。特にニュース番組。自分の担当がバラエティーでもニュースは絶対知ってないといけない。

――入社した当初、ネットとテレビの関係についてどう思っていましたか。


渡邉:僕が入社したタイミングでもやっぱり「ネットにテレビが食われるんじゃないか」みたいなことは言われていました。テレビは電源さえつければ勝手に流れるじゃないですか。ネットっていうのは、やっぱりクリックしてそこにたどり着こうとしないと、観られない。

でも、だんだん今のネット番組を良く観る若い子たちが年をとっていくことを考えると、若い子たちにネット経由でもいいのでテレビ番組を観てもらえるような“きっかけ”を作ることが大事だと思います。

――地上波とネットで番組の作り方は違いますか?


渡邉:作り方という観点では、大きな違いはないですね。もちろん、予算感の違いはありますが、それって地上波でも同じこと。細かなルールの違いがあっても、根本はなにも変わらないかなと思っています。ネット番組でもコンプライアンス的なところは、僕は地上波と同じだと思います。

――地上波でもネット番組でも求められる“数字”や“成果”がありますよね。視聴率について思うことはありますか?


渡邉:綺麗事をいうと「ただ面白いことを追求すればいい」になるかもしれない。でも、やっぱり現実問題、指標は視聴率ですよね。「これは数字を取りそうだな」って思ったときに数字が取れないなんてことは普通にある。

数字は仕方がないことですが、視聴率が良い番組、悪い番組をそれぞれ観ていて分かったことがあって。最近の傾向だとリアリティの強い番組が求められていると思います。

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渡邉:他局ですが、例を挙げると『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ系)や『池の水ぜんぶ抜く』(テレビ東京系)など。うちの番組の『帰れマンデー見っけ隊!!』もそうですけど、見ていてハラハラしたり、びっくりしたり、リアリティがある。

今の視聴者はガチンコで一生懸命やっているものを好むようになってきているんじゃないかって考えています。

――食事でいうところの舌が肥えてきている感覚でしょうか。視聴者の見る目が変わってきた。


渡邉:舌が肥えてきているというか、昔と比べて不良っぽい子よりも、いい子感のある清楚な子がよくバラエティー番組に出ていますよね。男性でも品のあるタレントが受け入れられやすくなったなと思っていて。

僕がテレビ局に入ったときがちょうど「テレビ朝日って最近面白いよね」って世間が感じていた時期だったと思うんです。『アメトーーク!』や『ロンドンハーツ』などがそのときにヒットして。「テレビ朝日ってバラエティーが面白い、強いよね」って言われていた。民放視聴率で2位になりましたが、調子いいときと悪いときに社内の雰囲気違うかって言われると、そんなことはないんです。一喜一憂するでもなく、ただ普通に過ごしています。目の前にあることを一生懸命やっていくのが大切なので。

――AbemaTVをはじめネット番組は視聴中にリアルタイムでコメントがつきますよね。そのことについて、作り手としてどう感じていますか?


渡邉:僕はAbemaTVの開局を記念したオリジナル特番で『帰れま10 禁断の完全生中継SP~一体いつ終わるんだ!~』のディレクターも担当したんですよ。これは生放送でした。現場で動画を確認しながら、その上でAbemaTVも確認しつつ、たくさんコメントが来ているのを見ていました。コメントを見たいユーザーって、僕もそうですが、ある程度いると思うんです。作り手としては、何も意見がないことが一番寂しい。

――視聴者からのコメント全てがいいコメントかというと、そうではないですよね。


渡邉:もちろん番組への批判意見は受け止めないといけないですよね。ただ「現象が起きていることの価値」というと語弊があるかもしれませんが……賛否両論あることに幸せを感じた方がいいと僕は思うんです。

地上波とネット番組「ライバルにする必要ない」

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――ネットは地上波のライバルになると思いますか?


渡邉:日本人って何でも相手を敵にしたがるところがありますよね(笑)。僕は「別に仲良くすればいいのに」って毎回思うんです。ライバルにする必要ってありますか。僕の立場はテレビ局ですが、ネットの立場でもお互いを思いやりながら、うまく使うことってできると思うんです。

綺麗すぎる表現かもしれませんが、手を取り合って、地上波だけでは手が届かないより良いものを作っていければいい。敵だと思った時点で、どちらかがいなくなることが前提になるじゃないですか。そうやって排他的になるのではなく、一緒に楽しいものを作っていけることが一番いいと僕は考えています。

――27日よる8時からAbemaTVの“バラステ”で放送する「メイクアップコロシアム」でも指揮を取られている渡邉さんですが、メイクをネット番組でやる企画意図はどこからきたのでしょうか。


渡邉:AbemaTVの企画を考えたとき、やっぱり視聴者として「若い人が多いな」っていう印象がありました。今の若い子たちは何に興味があるのかって考えると「変身メイクの動画って人気だよね」ってなって。「じゃあメイクの番組っていいんじゃないか」と。

よくあるテレビの企画は、一人の人間を「メイクでこんなに綺麗にさせます」という切り口。メイク動画は流行っているけれど、それを誰かと対決させたら面白いんじゃないかと思ったところから企画がスタートしました。メイクでやる“料理の鉄人”のイメージです。

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――男性にとってメイクの番組は未知の領域だったと思いますが、振り返ってみていかがですか。


渡邉:僕は男性なので、メイクという分野でどういう戦いになるか最初は全く分からなかった。ただ、不安視していたけど、的外れだった不安っていうのがあって。僕はみんな似たようなメイクになるんじゃないかと思ったんですよ。

でもやり方も違うし、そこは十人十色で全く違ったなって。あとはやっぱり解説にいらっしゃったピカ子さんの解説がよかったですね。毒舌なところもあるのですが、視聴者にとってメイクのコツなどのプラスな情報も言ってくれる。

――ピカ子さんといえば、引き算メイクで話題のカリスマメイクアップアーティストですよね。


渡邉:撮影の準備は入念にしました。女性アナウンサーが対戦者2人のメイク室を行ったり来たりしてリポートするんですが、メイクのどの段取りの部分が面白くて、どこをリポートさせたらいいか女性スタッフの意見はかなり参考にしました。

男性側からすると女性のメイクをまじまじと見ることなんてあんまりないですから「そうやるんだ!」って気づくこともあって、自分でもいろいろ驚きでした。女性はメイクの勉強にもなりますし、カップルで観たらより楽しめる番組になったのではないでしょうか。

――貴重なお話をありがとうございました。今後の番組も楽しみです。

(写真:オカダマコト)

(C)AbemaTV

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