突然の米朝首脳会談の中止宣言から一転、北朝鮮側の迅速な対応を受け、「６月12日のシンガポールでの会談開催の方針に変更はない」と述べたトランプ大統領。
米朝首脳会談は予定通りに開催されるのだろうか。両首脳の真の狙いはどこにあるのだろうか。28日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した『週刊現代』の近藤大介編集次長に話を聞いた。
まず、突然の中止宣言の背景について近藤氏は「トランプ大統領の周囲は皆、北朝鮮は完全な非核化をしないとみている。だから"歴代政権と同じ失敗をするのか"と、会談にも反対している。ペンス副大統領もその一人で、平昌オリンピックに行って"これは無理だ"と判断し、トランプ大統領に進言し続けてきた。加えてボルトン補佐官、マティス国防長官にも外堀を埋められた結果、トランプ大統領は"仕方ないな"と金委員長宛書簡にサインした。だから書簡の内容は"私はやりたいんだ、いつでも電話をかけてきてくれ"と、未練タラタラだった」と説明する。
その上で「会談は実現する可能性が高いと思う。なぜなら、アメリカで最もやりたがっているのはトランプ大統領本人だし、北朝鮮で最も会談をやりたがっているのが金正恩委員長本人だからだ。トランプ大統領はビジネスマンなので、商談にはプラスかゼロしかないと考えている。ダメだったらバイバイすればよく、マイナスにはならないと。だからやってみればいいという発想。これは外交官の発想ではく、商人の発想だ。金正恩委員長もああいう人なので、似た者同士でプラスを生むのではないかという期待感がある。例えば、北朝鮮が完全な非核化を約束したとする。トランプ大統領は"約束させた、勝った"となるし、金正恩委員長は"我が国の体制を認めさせた、勝った"となる。あとの具体的なことは実務者で話すということにすればいい」との見方」との見方を示した。
「これまでのアメリカ大統領だったら、事前にセリフまで詰めておいて会談に臨む。ところがトランプ大統領はアドリブの人なので、何が起こるか分からない。金正恩委員長も同じくアドリブの人。アドリブ×アドリブなので、なにが起こるか誰にも分からないというのが実情だろう」。
その一方、北朝鮮側には懸念が残るという。
「120万人の朝鮮人民軍としては、軍の利権を狭める核放棄やミサイル放棄には絶対反対だ。ボルトン補佐官が主張する、CVID（完全かつ検証可能で不可逆的な非核化）は認めたくない。トランプ大統領に対してあまりに妥協しすぎると軍のクーデターが起こるかもしれない。金正恩委員長としてはこれをなんとか抑えていかなければいけないと、毎日不安だと思う。他の首脳であればすぐに会って話をすればいいが、相手はトランプ大統領。もし決裂して席を立たれたら、シンガポールに亡命するしかなくなってしまう。もし失敗したら自分の政権が終わってしまう。それぐらい命がけの会談になる。北朝鮮にとっては、1953年の休戦協定以来、最も重要な会談だ。国の命運をかけた会談になる」。
そこで間に立っているのが韓国の文大統領だ。米朝首脳会談の翌日、つまり６月13日には統一地方選挙があり、これにどうしても勝ちたい文大統領としても、米朝首脳会談の成否はとても気になるところだといい、会談に同席するのではないかとの見方もあるようだ。「２回目の会談があるとしたら、そのときは２人でやるだろう。またはその逆のパターンが考えられる」。
また、金委員長が再度訪れた中国に関しては「もはや純粋な中朝関係はない。"中米関係の一部"としての中朝関係だ。中国が北朝鮮に望むのは、トランプ政権と交渉して在韓米軍を撤退させること。そして韓国からTHAADミサイルを撤去させること。この２点が現時点での狙いだろう」との見方を示した。
トランプ大統領の姿勢を一貫して支持してきた日本。安倍総理は26日にロシアを訪問、プーチン大統領との首脳会談でも北朝鮮情勢について両国の連携を強調した。
「北朝鮮が2002年に拉致被害者を帰したのは、アメリカに攻撃されかねないという危機感から、日米を離反させ、日本を味方につけようとした結果だった。今回、もし米朝がうまくいってしまえば、北朝鮮が日本に妥協する必要はなくなる。最悪のケースは、トランプ大統領が安倍総理に"拉致問題は横において、日朝交渉を進めなさい"と言ってくること。その意味では、日本にとっては米朝に決裂してもらった方がむしろありがたいし、"蚊帳の外"の方がいい。むしろ米朝が決裂して危機が迫ってきた時に初めて、日本に"拉致被害者を帰します。お願いします"と来るだろう」。（AbemaTV／『AbemaPrime』より）
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