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 「私とあなたの命を守れ!」「働き方を勝手に決めるな!」

 先週金曜日、東京・新橋で「過労死・サービス残業が合法化されます」と書かれた横断幕を掲げたデモ行進が行われた。彼らが反対を強く主張していたのが、安倍政権が今国会での最重要法案と位置付ける「働き方改革関連法案」の一つ「高度プロフェッショナル制度」、通称"高プロ制度"だ。19日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、この高プロ制度を考えた。

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 "残業代ゼロ法案"、"定額働かせ法案"との批判を浴びる高プロ制度は、証券アナリストや金融ディーラーなど、高度な専門的知識が必要な職種で、平均の3倍程度(1075万円以上)の年収を得ている人を対象にしたもので、これは全労働者の3%未満とされている。書面などで労働者本人の同意が得られることを前提に労働時間の規制から外し、会社は残業代や深夜割増賃金などの負担がなくなる。能力がある人にとっては時間に縛られることなく、より高い収入が得られる可能性があるいうことだ。

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 メガバンクに勤務する為替ディーラーの山下健治さん(仮名)は、「アメリカや欧州と時差があるので、常にマーケットを見ているような状況。深夜でも相場が動けば電話をして取引をしたりする。家に帰ってもスマホでレートやニュースを見て、場合によっては会社に電話をして」と話す。

 日々7000億円もの大金を動かしているという山下さんの年収は1500万円。会社に1日3億円の利益をもたらしたこともあるが、そうした成果が収入に直結していてないと感じている。「成果の分だけ報酬が増える方がモチベーションにはつながると思う。今はいくら儲けても"プラスアルファ"は限られているし、昼夜問わず働いているというのもあって、オフィスにいる時間を縛られるよりも、儲けやすい時間帯に自由に働くスタイルの方が適していると思う」と、高プロ制度の適用に前向きだ。

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 安倍総理は高プロ制度について「時間ではなく成果で評価される働き方を選択できるようにする高度プロフェッショナル制度の導入は我が国にとって待ったなしの課題である」としており、与党は日本維新の会と希望の党の要求に応じ"撤回権"も盛り込んだものの、野党は導入に猛反発。山井和則衆院議員(国民民主党)は「人の命を奪う過労死を増やす法案を強行採決するのはあまりにも酷すぎると思う」と涙ながらに訴えていた。

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 夫を過労死で亡くした中原のり子さんは「彼は亡くなる前に"馬車馬のように働かされている"という言葉を遺した。夫の働き方は高度プロフェッショナル労働制の先取りだった」と訴える。新橋で話を聞いた40代のサラリーマン男性も「今でさえブラック企業がはびこっている中で、それに法的なお墨付きを与えているようなもの」と否定的だ。

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■常見陽平氏「労働者はもっとワガママになる必要がある」

 働き方改革関連法案は、長時間労働の是正を目指した残業時間の罰則付き上限規制や、終業と翌日始業の間に一定期間の休息確保を推進する勤務間インターバル制度の促進、非正規労働者の待遇改善に向けた同一労働同一賃金など8本の法改正を一括して行う"束ね法案"だ。

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 働き方評論家の常見陽平・千葉商科大学専任講師は「安倍総理や加藤厚労相がおっしゃっていることと法案にはズレがある。成果主義は労働時間を延ばす。定額働かせ放題に繋がる可能性もある」とも指摘、「法案には"成果で"とは一言も書いておらず、正確には成果で働くことを促す意味が強い。私が在籍していたリクルートでも、あっという間に受注を決めてハワイに遊びに行っている人がいたが、成果主義は結果的に労働時間を増やしてしまう可能性があり、理論上は5日間24時間働き続けることもできてしまう」と話す。

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 その上で、高プロ制度の対象者についても懸念を示す。

 「確かに"時間ではなく成果に応じて"という表現に合った職種が選ばれてはいるが、対象者は拡大させることが可能。小さく生んで大きく育てるのは厚労省のお家芸だ。厚労省の局長は法律を変えなければいけないというが、省令で変えられるという弁護士もいる。また、経団連には"これで満足なんですか"と問いたい。高度な能力を必要とする職種が現状の5つで網羅されているとは思えないし、榊原前会長はインタビューや会見で"マーケティング"という職種を連発していた。ITなど新興産業の人も、"もっと職種を広げたほうが使いやすい"と言っていたので、対象者が拡大する可能性は高い。問題はその結果イノベーションが起こらなかったら、どうするのか。その責任を経団連加盟企業や新興産業の経営者は問われることになるだろう」。

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 常見氏はまた、労働者が雇用主に対して権利を正しく主張できない可能性もあると指摘する。

 「自民党の重鎮の方々がよく言うのは、"これらの人たちは交渉力がある"ということ。この認識には間違いがあると思う。雇用の流動化が進まない原因でもあるが、今の日本は"就社型"の社会になっていることもあり、ずっと同じ会社にいることによる同調圧力や、ハラスメントに抗えないという問題もある。今も管理職を中心に裁量労働制は導入されているが、結局は本人の裁量にはなっておらず、 "経営者同様、自分でジャッジして柔軟に働ける"という理念通りには機能していない。36協定も4割が違法な結び方だと言われている。高プロ導入には労働者の同意が必要で、希望すれば離脱も可能だが、そこまでの交渉力があるとは限らない。このまま法案が通ってしまった場合、労使関係を考え直し、労働者はもっとワガママにならなければいけない」。

■上念司氏「景気上昇が維持できなければ企業が悪用する可能性も」

 経済評論家の上念司氏は「増税もなく景気上昇が続く局面であれば、高プロが導入されてもあまり問題にはならない。半年分の受注を一気に取ったらあと半年は遊べるという会社は伸びていくし、そうでない会社からは人が辞めていくことになる」と話す。

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 「ブラック企業が増えた原因の一つに、働きたい人よりも働ける場所が少ないという、圧倒的な買い手市場だったことがある。デフレが進んで景気が悪ければ、"嫌なら辞めちゃえばいい"と言われたって、働き口が少なければ簡単には辞められない。そこで無茶な労働条件をぶつけられたり、サービス残業をさせられたりする問題が出てくる。逆に景気が良くなれば人手不足状態になる。そうすると企業は労働者に優しくなる。だから最大のポイントは景気だ。景気が良く労働力不足になれば、いかなる制度があっても悪用した企業は淘汰されていき、人が辞めていく。今は増税を止めて、景気が良い状態を確保することが大事だ」。

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 常見氏は上念氏の話を受け、「希望があるとすれば、若者人口が減っていくこと。結果として人手不足が進む可能性があり、企業は労働環境を整えなければ人が採れなくなっていくからだ」とコメント。「今回の法案は高プロ以外の施策は規制強化の意味合いが強く、様々な経済団体の幹部もそこを懸念していたし、同一労働同一賃金に関しても公正さをめぐって訴訟が起こることを危惧していた。さらに、裁量労働制の見直しも削られた。ではなぜ、経済団体はもっと批判の声を挙げなかったのか。おそらく悲願の高プロが通りそうだから黙っていたのだろう。経団連も連合も、それぞれ経営者・労働者(とくに正社員)の本音を代弁しているかどうかが問われる。労働には社会、企業、個人と、それぞれにとっての意味があるが、巧妙にぼかされて議論が進んでしまった」と話した。 (AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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