
かわいくなりたいと願う女子高生たちの魔法のツールともいえるプリントシール。「プリクラ」として代名詞になった「プリント倶楽部」が1996年に誕生して今年で22年が経つが、今でも女子高生たちは「遊んだら絶対撮る」と口を揃える。その魅力は、なんといっても"盛れる"こと。しかし、年々進化しつづけるスマホのカメラアプリならタダで盛れるところを、なぜお金を掛けて"プリ"を撮るのだろうか。

理由について渋谷の女子高生たちは「アプリでは盛れないけどプリなら盛れる」「SNOWとかだと目がでかくなったり、アゴが小さくなったりして元の顔の原型がない。プリだと目がちょっとだけ大きくなったりナチュラルに盛れる」と説明する。

プリ機の持つ「美白効果」「涙袋などを後から修正できる」「目の色の濃さが調整できる」といった加工機能が、より彼女たちの理想の写真に近づけてくれるようだ。


シェア80%以上を誇るフリュー株式会社の担当者が"JK人気ナンバーワン"と胸を張るプリ機が「コレカワ」だ。キャッチコピーは「これ以上可愛くなってもいいですか」。まる目、たれ目、ねこ目など、一見わかりにくいが、女子校生たちが好みのアイラインになるよう加工できる繊細な盛り機能が搭載されている。




ある女子高生は「何回もプリクラを撮っている人は、自分に合った目をわかっている。私はコレみたいな」と話す。最近は機種によって細かい盛り機能が搭載されており、女子高生たちは数多くの機種の中から、自分の顔に合ったものを選んでいるようだ。
22日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した東京大学特任研究員の久保友香氏は、女性の"盛り"文化を数値化することによって未来の技術革新に生かす研究を行っている。久保氏はプリ機のバリエーションについて「まったく新しい機種がたくさん出るが、それぞれ世界観が違って、色んなツールが用意されている。選んだ機種に合わせて自分がどんな顔をするかという奥深い世界があって、彼女たちの物作りの欲を満たすというところがある」と話す。

プリの盛り方には時代ごとにトレンドがあり、1997年~2007年は「美肌・ツヤ髪」、2007年~2011年は「デカ目」、2011年~は「ナチュラル盛り」、そして2014年~は「理想の自分」だという。久保氏によると、"盛り"という言葉が使われるようになったのは2002年ごろだそうだが、古来、日本には実際とは違う顔を作るという文化があり、浮世絵の美人画がどれも似かよっているのも、実際に濃い化粧をしてからなのだという。

「盛るというのは、女の子たちのビジュアルコミュニケーション。特に男性は"モテたいから""美しくなりたいから"と思っている人が多いが、それはほとんどない。女の子たちになぜ盛るのか聞いていくと、"自分らしくあるため"とか、"個性だ"という答えが出てくる。みんな似た顔を目指しているようにも思えるが、コミュニティの中で共有されているトレンドを踏まえた上で個性を出していくんだということを言う。集団の個性と、個人の個性の二段階になっているようだ」。

渋谷の女子高生に話を聞くと、撮ったプリをスマホで撮影、Instagramにアップするのだという。つまり、日記のように誰と何をしたのかを友達と共有しているのだ。それは"かわいいアピール"をしたいわけではなく、"自撮り"も厳禁なのだという。プリは"他撮り"に入るといい、「みんな撮れるものだから嫌味がない」「自撮りは芸能人気取り。他撮りと自撮りは結構差がある」と女子高生たちは説明する。

久保氏は「盛るということは恥ずかしさと表裏一体。ナルシストと思われたくないという思いがとにかくあって、そのリスクヘッジをしなくてはならず、そこで"プリだから"とか"他の人が撮ったから"といった言い訳が必要」と、複雑な心理を代弁していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

