たくさんの兄弟姉妹で賑わう、ある一家を中心に、登場人物たちの日常を細やかに描いていく韓国の家族ドラマ。50話を超えるものが多いので、「そんなに長いもの見られるかな？」と不安に思えるかもしれないが、一度、ドラマの中に入ってしまえば、まるで新しい家族ができたかのように、彼ら、彼女らの人生の行方が気になってしまうこと間違いなし。『烏鵲橋の兄弟たち』は、そうした家族ドラマの中でも名作として知られる１本だ。
ソウル近郊で烏鵲橋農場を営むファン家には、病院勤務のテシク、TV局の報道記者のテボム、刑事のテヒ、末っ子のテピルという４人の息子がいた。ある日、父親であるチャンシクのもとに友人イノから連絡が入り、「10年の約束で貸していた農場を返してほしい」と言われる。チャンシクはもちろん、事情を知らぬまま果物作りと家鴨の飼育に打ち込んできた妻のボクチャもショックを受ける。さらに、イノが中国出張中に行方不明になってしまい、行き場を失った彼の娘チャウンが農場へとやってきて家族と暮らすことになる。
お嬢様育ちでわがままなチャウンに惹かれていく三男テヒ、酔った勢いで一夜を共にし、妊娠した上司スヨンの頼みを受けて契約結婚する次男テボムというふたりの息子たちのラブストーリーがメインとなるこのドラマ。その他にも、彼らの兄弟や両親たち、長男テシクの同級生やテボムの妻スヨンの母など、周囲の人物たちの心情もていねいに描かれており、それぞれにホロリとさせられるエピソードが満載だ。突然、同居することになったチャウンを次第に受け入れていく母ボクチャを14年に亡くなってしまった名優キム・ジャオクが感情豊かに演じているのも忘れがたい。
キャストの中で最も注目したいのは、このドラマの前年の2010年に韓国で放送されたドラマデビュー作『製パン王キム・タック』で、悪役ながら大きく注目されたチュウォン。『烏鵲橋の兄弟たち』では、刑事としてのワイルドな面と祖母に見せる愛らしさのギャップが魅力的。チャウンとの不器用な恋愛、実母に対する複雑な思いなど、場面ごとに変わる心情を繊細に見せている。本作以降は堂々の主演俳優となり、国家情報員に扮した『７級公務員』（13）、自閉症の天才医師を演じた『グッド・ドクター』（13）、日本のマンガを原作とした『のだめカンタービレ～ネイル カンタービレ』（14）といったドラマでバラエティ豊かなキャラクターを好演。15年の『ヨンパリ～君に愛を届けたい～』では、SBSの演技大賞に輝き、韓国を代表する俳優の仲間入りを果たした。大ヒット映画を時代劇としてリメイクした『猟奇的な彼女』（17）を最後に現在は兵役に就いており、どんな作品でカムバックしてくれるのか、復帰の日が今から楽しみだ。
彼と愛し合うチャウン役のユイは、ガールズグループAFTERSCHOOL出身で、現在は女優として様々な作品に出演。イ・ソジンと共演した『結婚契約』（16）では、娘を持つシングルマザー役にも挑戦している。また、末っ子テピルに扮したヨン・ウジンも、時代劇『七日の王妃』（17）で美しき王子を演じるなど、活躍が続いている。『烏鵲橋の兄弟たち』は7月2日（月）8時より、AbemaTV【韓流・華流チャンネル】にて放送される。
テキスト：佐藤結
