◆『ラストアイドル in AbemaTV』「Good Tears」プロデューサー・近田春夫インタビュー
秋元康、つんく♂、指原莉乃、近田春夫、後藤次利の5名の有名プロデューサーたちがアイドルユニットとタッグを組み、シングルの表題曲をかけて対決する唯一無二のアイドル番組が『ラストアイドル in AbemaTV』(毎週日曜・よる7時)として放送中だ。
中でもアイドルユニット「Good Tears(グッドティアーズ)」をプロデュースするのが、近田春夫だ。「チョコボール」や「爽健美茶」をはじめとする数々の有名CMソングを手がけ、『ジェニーはご機嫌ななめ』(ジューシィ・フルーツ)は、Perfumeをはじめ幾度となくカバーされ、世代を越えて歌い継がれている。音楽界のレジェンドである近田は『ラストアイドル』についてどう思っているのか。そして、現在の音楽業界に感じることとは?
(▲ラストアイドルより誕生したユニット「Good Tears」)
▼7月29日(日) よる7時放送!
『ラストアイドル in AbemaTV #9』
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近田春夫、今の日本の音楽シーンは「曲が先じゃない」 グループを牽引していくための“音楽”とは?
『ラストアイドル』のオファーを秋元康のマネージャーから受けたときには「いいよ」と即答したという近田。「番組の存在はもともと知らなかったんだけど、秋元(康)が考えていることだし、何かしら自分のことを買ってくれたんだなって。誘ってくれた恩返しの意味で『勝たなきゃ!』って思った」と話す。
40年以上音楽業界にいる近田にとって、現在の“アイドル戦国時代”をどう感じているのだろうか。
「(アイドルのことは)全くチェックをしてないですよ。僕世代の常識レベルより、僕はちょっと低いくらい。指原莉乃さんは、過去に別の仕事で内田裕也さんとデュエットしたとき、たまたま同じ場所にいたことがあって。その場で会話をする機会はなかったけれど、裕也さんが『指原って面白いんだよ!』と言っていたので、印象には残っていました」(近田)
さらに、現在の日本の音楽シーンについてこう意見を述べた。
「アイドルだけじゃないんだけど、J-POPってまず『アーティストやアイドルを応援しよう』っていう切り口でCDを買っちゃうじゃない? 曲が先じゃないんですよ。昔は、例えば初登場のランキングが30位だったとしても、良い曲なら徐々にランクが上がっていった。でも、今って初登場ランクインがピークで、その後は下がってしまう。これって、音楽をずっとやってきた人間、音楽を作っている人間からすると癪なんです。音楽・曲が牽引していく仕事をしたいですよね」(近田)
「絶対的に正しいって押しつけない」プロデューサーとしての考え
インタビュー中に「Good Tears」の印象について聞くと「みんな生意気でいいなって思った」と笑顔を見せる。
「結局最後の責任は自分が取るんだから、生意気なほうがいいんだよ。言うこと全部聞いているようじゃつまんないね。メンバーは僕の子供よりも全然年下で、下手すれば孫くらいの年齢だから、自分が思っている常識にしても噛み合ないところはいっぱいあるだろうし。衝突することはあるけど、こっちが絶対的に正しいってことはないし、それを押しつけじゃだめですよね。彼女たちは僕のこと知らないんで『先生!』って感じで来ないからそれが良いですね」(近田)
さらに、今回「Good Tears」に提供した楽曲『へえ、そーお?』についてはこう話す。
「これまでに彼女たちに提供された曲と比べて、へんてこりんに感じた曲だったと思います。どう歌えば良いのかって不安はあっただろうね。でも、プロデューサーバトル第2弾で指原さんプロデュースのグループに勝って。彼女たちからしたら“変なおじさん”だった僕への眼差しが尊敬に変わったかな? どうなんだろうね(笑)」(近田)
アーティスト・のん、作詞家・児玉雨子に注目 「『こうなりたい!』って頑張るエネルギーがいい」
さらに、今回「Good Tears」に提供した楽曲『へえ、そーお?』についてはこう話す。
「これまでに彼女たちに提供された曲と比べて、へんてこりんに感じた曲だったと思います。どう歌えば良いのかって不安はあっただろうね。でも、プロデューサーバトル第2弾で指原さんプロデュースのグループに勝って。彼女たちからしたら“変なおじさん”だった僕への眼差しが尊敬に変わったかな? どうなんだろうね(笑)」(近田)
近田は「最近気になるアーティストは?」を聞かれると“のん”という名前を挙げた。
「今の時代に『こうなりたい!』と頑張るエネルギーはやっぱりいいね。自分もエネルギーがある人間だと思っているんだけど、そういう顔を見るのは面白い。今注目しているアーティストはのんだね。あの子は音楽家として才能がある。ギターもうまいし」(近田)
のんを絶賛する近田。さらに作詞家として気になっている人に、つばきファクトリーをはじめとする、ハロー!プロジェクトに歌詞を提供する児玉雨子の名前を挙げた。
「つばきファクトリーとかハロー!プロジェクトのアイドルに歌詞を提供している、児玉雨子さんは注目していますね。すごい歌詞で不思議な歌を書くんですよ。『低温火傷』ってタイトルを聞くだけだと、アイドルの曲とは思えないでしょ? 彼女はまだ24歳と若いのだけど、小説家だけあってとにかく語彙、言葉の使い方がすごい。楽曲の多くは、何かと掛け持ちして歌詞をつけている場合が多い。“作詞家”って聞いて思い浮かぶ人って秋元康しかいないんだよ。そんな中、児玉雨子さんは若いけれど作詞というものをよく分かっていらっしゃる」(近田)
自身も作詞を行う近田は「作曲より作詞が難しい」と語る。
「僕も作曲より作詞の方が苦労する。作曲は感性があればできる。でも、作詞は感性だけではない技術が求められるんだよね。字数を合わせないといけないし。もともと詩を書くような人間じゃないからそう思うのかもしれないけれど。ともすれば、ただ言葉が羅列されただけになってしまう」(近田)
曲作りをする上で、何か心がけてインプットしていることはあるのかと聞くと「好奇心は強いよね」と答えた。
「あらゆる表現は自分の内側から出て来ないとダメ。普段の生活で感じたこと、思ったことを咀嚼して整理して自分の中にファイルしていく。日々の生活で誰でも手に入るようなことしかやってないんだけど、僕、好奇心は強いよ」(近田)
「来た仕事は何でもやりたい」決意のきっかけは、病との付き合い
音楽プロデューサーとしての印象が強い近田だが、『近田春夫の考えるヒット』(週刊文春)などの連載執筆だけでなく、画家としての活動もしている。
「僕はいろいろことを上手くできるようになりたいなと思うんだよね。僕は文章も書いたりするんだけど、絵も描いている。もう2000枚くらい描いていて、渋谷の『イメージフォーラム』のポスターに採用されたのだけど、まだまだ売れるレベルには至っていない。でも描き続けることで、昔より成長したって感じられることが一番面白い。絵でも料理でも音楽でも、“上達”って徐々に坂道になっていくのではなくて、ある日突然ギュンって上がるんだよね。その上がる瞬間を迎えるには、日々の積み重ねが絶対に必要だから」(近田)
日々の積み重ねが、ある日、急激な上達につながる。これはアイドル活動にも言えそうなことだ。
「自分がそれに気づくかどうかですよ。僕はこれまでいろいろと曲を作ってきたので、音楽に対するコツって10秒あれば説明できるし、それで上手くもなると思う。でも、肉体が覚えたことじゃないからダメかなって。どっちがいいのかなあって、若い子たちと仕事やっているときに考えるのはそこですよね。『ああ、そうか』って自分で掴んだコツって忘れないと思うから、それを音楽をやる若い子たちに掴んでもらいたい」(近田)
2008年、S字結腸のがんを開腹手術した近田。病をきっかけに、一度は仕事をセーブすることもあったという。
「僕は2008年に一度癌の手術をしていて。再発する危険もあったんだけど、2年前に治ったという診断をもらったんです。これまでは調子が悪くなるとたくさんの人に迷惑をかけるから仕事にブレーキをかけていたけど、その悩みが晴れた。だから来る仕事は何でもやろうと思っていますよ」(近田)
近田の「僕、好奇心は強いよ」という言葉が再び蘇る。もともとさほど近くなかったアイドル業界に飛び込み、少女たちをアーティストに育てていく今。
「停滞したときがあっても、投げずにやるってことが楽しいんですよね。残ってきた人たちには、努力し続けている部分が絶対ある。それを外に見せるかどうかは置いておいて。端から見たら『あの人はすごい努力している』と思えても、本人にとっては『楽しいからやっているだけ』っていうのが、大切なんじゃないかな。(Good Tearsは)まだスタートにも立っていないから、まずはスタートに立つこと。ブレイクしたら他の仕事もたくさんくるだろうから、それをやってみたいね」(近田)
近田をはじめ、業界きっての大物プロデューサーが参加する『ラストアイドル in AbemaTV』(毎週日曜・よる7時から放送)。最後、優勝に輝くのはどのユニットなのか。今後も目が離せない。
(テキスト:中村梢)
(写真:野原誠治)