
24日放送のAbemaTV『AbemaPrime』の取材で明らかになった、東京都が委託するホームレスなどの就労対策事業を請け負った業者による不正疑惑。
多くの専門家は「こうした事業はセーフティネットなので絶対になくしてはいけない。今回のように一部の業者が行っていることでこの事業が非難され、なくなってしまっては困る」と話す一方、当事者である日雇い労働者たちからは「こんなにおいしい仕事はない。税金泥棒だよ(笑)」「なくなったら困る」「小池百合子に言わなきゃダメだな、だらしなさすぎるぞって」という声も聞かれた。しかし、取材したホームレスの中には「俺たちは基本的にダメ人間。まともに働けないかからホームレスなんだ」と語る人もいた。
精神科医の木村好珠氏は「自己肯定感が低い方が多く、少しでも自分の意欲が湧く方向に少しでも持っていってあげながら、メンタルの部分を見てほしい」と話す。

埼玉県で生活困窮者の支援に携わる「ほっとプラス」代表理事の藤田孝典氏も「長いことホームレス状態や貧困状態が続くと、意欲を失う状況に陥りやすい。生きがいや働く意欲を失ってしまっているとしたら、就労支援とか自立支援という目的から離れたものになっているということ。都民が望む仕事をちゃんと発注し、本人たちが"掃除しても意味ない"と思ってしまうような受託内容は見直すべきだ」と話す。

「歴史的に、生活保護は働けない人に支給するもので、働ける日雇い労働者の方には支給されてこなかった。しかし、それで食えなくなったら困るということで、美濃部都政時代(1967年~1979年)にこうした事業がはじまった。日雇い労働者が多かった時代には需要があったし、助かった人も多かったと思うが、今は曲がり角に来ているのではないか。まずはそれぞれの適正に合わせた仕事探しをすること。病気を治した方がいいのなら先に治療を受けてもらう。債務整理をしないといけない人もいる、住宅を必要としている人もいる。そうした支援を細やかにできるようにしないといけない。また、ホームレスの数が減っているという話もあるが、実は都内にはネットカフェ難民や友人宅を転々している方、住み込みの社宅に入っている方などが相当数いる。生活保護を受けやすくなっている方もいるし、いわばホームレスは潜在化している。そうした方々を早期に発見して、適切な就労支援やサポートに結び付けないといけない」。

台東区のホームレスの支援事業に詳しい、前東京都議会議員の和泉浩司氏は「昔は"餅代"といって、暮れに仕事がなくなると"正月を乗り切ってくださいね"と何万円か渡していた。僕の台東区議時代、それはおかしい、東京都は違うことを考えようという議論の中で出てきたのがこの事業だ。そして、日雇い労働者とホームレスがごっちゃになっている。本当にホームレスの人たちに仕事が回っているのか。1日で8500円が支払われているということだったが、週一、もしかしたら月一かもしれない。それでは生きていけない」と指摘した。

2016年の「今後望む生活形態」の調査では、「今のままでいい」がトップの35.3%となった。その理由は、27.2%が「都市雑業的な仕事で暮らしていける」、32.8%が「今の場所になじんでいる」、13.8%が「福祉の支援は受けたくない」、3.6%が「支援を受けられるとは思っていない」となっている。一方で2位は「アパートに住み自活」が21.7%となっており、就労支援策でも「アパートが欲しい」が48.8%でトップになっている。

藤田氏は「おそらく、生活保護や就労支援についての情報がないため、"今のままでいい"を選択してしまっている人もいるはずだ。と指摘。
「住宅もないまま継続して働くというのは難しい。通常、身寄りがない方には家を貸してくれないので、私たちのようなNPOや自治体のケースワーカーが付き添うが、多くのホームレスは諦めてしまっている。2000年代、東京都は月3000円で、ホームレスの人に住宅を貸す事業を実施した。これが最もホームレスを減らす効果があった。アパートから出たくないので、なるべく頑張って働こうという意欲も湧く。住居をきちんと提供して、ある程度働く前提を整えて就労支援に結び付けていくというのが、どこの国でもやられている一般的な支援だ」と話した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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