
法務省は26日、オウム真理教による一連の事件で死刑が確定していた6人の元幹部の死刑を執行した。執行されたのは、仙台拘置所の小池泰男(旧姓・林)死刑囚、名古屋拘置所の宮前一明(旧姓・岡崎)死刑囚、横山真人死刑囚、そして東京拘置所の豊田亨死刑囚、広瀬健一死刑囚、端本悟死刑囚。これで、今月6日に刑が執行された麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚らを含め、オウム真理教の死刑囚13人全員の刑が執行されたことになる。
法務省では、午前11時過ぎから上川法務大臣が会見を開き、今回の死刑執行について説明。「慎重な上にも慎重な検討を重ねて執行した次第です」と話し、死刑制度については「国民の多数がやむを得ないと考えている」などと述べ、自身も執行はやむを得ないと考えていると説明した。ある関係者によると、「上川大臣と法務省関係者は強い気持ちで今回の刑の執行に踏み切った」という。

松本智津夫元死刑囚ら7人の死刑執行から、6人はなぜこのタイミングでの執行となったのか。東京地検でオウム関連事件を担当していた落合洋司弁護士は、「本来、関連事件や共犯事件に関する死刑執行は同じ日に行われるが、13人同日というのは差し障りがあると推測されていた。近い時期に6人も執行されると思っていたので、やはりという印象」と話す。
1カ月で2回、計13人の死刑執行は“極めて異例”といえるもの。死刑執行には法務大臣のサインが必要だが、落合弁護士は上川法務大臣の心情について「腹を決めたのでは」と推測。「今後生涯、警護が付かざるを得ないかもしれないと言われ、残っている教団の関係者がテロの対象にする可能性もありうる。9月以降に内閣改造や人事異動がある中で、上川法務大臣としては『自分の代で決着をつける』と腹を括った面があるのでは」と述べた。

東京地検の公安部として、信者らの取調べを行っていた落合弁護士。6人の死刑執行については、「坂本弁護士一家殺害事件の捜査陣の中にいたこともあるので、実行犯の1人だった岡崎死刑囚は当時のことを思い出すものがある。広瀬死刑囚、豊田死刑囚、横山死刑囚は自動小銃密造の関係者ということで事件を思い出したりと、いろんな思いや記憶が浮かんでくる」と語った。

小池泰男(旧姓・林)死刑囚…元幹部。1994年の松本サリン事件や1995年の地下鉄サリン事件の実行犯として殺人などの罪に問われ、一審と二審で死刑判決を受けた。「麻原に指示され止むを得なかった」と上告したが、2008年に最高裁が退け死刑が確定していた。
宮前一明(旧姓・岡崎)死刑囚…元幹部。1989年2月、静岡県富士宮市で、オウム真理教を脱会しようとした田口修二さんの首を絞めるなどして殺害したほか、坂本堤弁護士夫妻と長男の殺害に実行犯の1人として関与したとして、殺人の罪に問われた。一審と二審で死刑判決を受け上告するも、2005年に最高裁が退け死刑が確定していた。
豊田亨死刑囚、広瀬健一死刑囚…元幹部。1995年、13人が死亡、6000人以上が負傷した地下鉄サリン事件で、サリンを撒いた実行犯として殺人などの罪に問われた。一審と二審で死刑判決を受け上告するも、2009年に最高裁は「法治国家に対する挑戦ともいうべき犯行」として退け死刑が確定した。
横山真人死刑囚…元幹部。地下鉄サリンの実行犯として殺人などの罪に問われ、一審と二審で死刑を言い渡された。弁護側は「横山被告がサリンを撒いた車両では死者が出ておらず、死刑は重過ぎる」として上告したが、2007年に最高裁が退け、地下鉄サリン事件の実行犯としては初めて死刑が確定していた。
端本悟死刑囚…元信者。1989年、坂本堤弁護士夫妻と長男殺害に実行犯の1人として関与したほか、1994年の松本サリン事件ではサリン噴霧車を運転し7人を殺害したとして、殺人や殺人未遂などの罪に問われた。一審と二審で死刑判決を受け、「教団幹部ではなくマインドコールを受けていた」として死刑の回避を求めて上告したが、2007年に最高裁が退け死刑が確定していた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)