【インタビュー】「どんな媒体でもコンテンツが勝負」 テレビ朝日『あいつ今何してる?』をヒットさせた敏腕プロデューサーに聞く

ゴールデン枠で放送中の人気番組『あいつ今何してる?』(テレビ朝日系・毎週水曜よる7時~)の企画を担当している芦田太郎プロデューサー。そんな芦田プロデューサーが入社11年目の今、立ち上げた企画が『ディープな街で昼から何してる?』だ。


▲『あいつ今何してる?』(テレビ朝日系・毎週水曜よる7時~放送中)
『ディープな街で昼から何してる?』は、日本のディープな下町でたそがれていたり、昼間からお酒を飲んでいたり、「この人、お昼から何してるんだろう?」と視聴者が疑問に思う街の人に直撃取材するドキュメントバラエティ。地上波放送を経て、8月26日にAbemaTV版が放送される。
今回、そんな尖った企画を出し続けている芦田プロデューサーにインタビューを敢行。番組を作る上で、大切にしている思いを聞いた。

――テレビ朝日入社後はとにかく企画書を書いていたそうですが、今も続けていらっしゃいますか?
芦田:入社から11年経ちましたが、企画は今も出し続けています。企画を考えるときはだいたい2パターンあって。1つ目は「〇〇さんを起用したい」と、出演者から発案して思考していくパターン。2つ目は「こういう企画をやりたい」と企画から発信するパターン。今回、AbemaTVで放送される『ディープな街で昼から何してる?』は、この2つが合体したパターンです。
もともとは情報性が無い芸人さんの笑いに特化したロケバラエティをやりたいなと思って。でも笑いだけに特化した番組って企画書にしづらいので、「芸人ロケバラエティに何か企画をかけ算しないと……」という発想から、 “芸人を追い込む”という要素を加えたいなと思って。で、さらに「芸人を追い込むにはどんな企画が良いかな」と考えて……自分が街を歩いていて、「日中からこの人ここで何してるんだろう?」って思うことが結構あるんですけど、実際プライベートでその人には声かけないですよね? 「じゃあその欲求を企画にして芸人さんに代わりに聞いてもらおう」。これが企画のスタートです。実際ロケしてみたら、かなりヒリヒリする緊張感があったり、まさにディープな人にたくさん話を聞けました。
▼【バラステ】ディープな街で昼から何してる?
8月26日(日)よる20時から放送
ディープな下町・東京都江東区の亀戸、調査員はアンガールズ田中。東京の下町・小岩&&”ドヤ街”と呼ばれる山谷&横浜・伊勢佐木町を調査員のパンサー尾形が歩く。
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――街の人って最初から予想できない部分も多いと思いますが、なぜそんな予想できない人に声をかけるような企画をしたのでしょうか?
芦田:今って一般の方々が主役になる素人番組の全盛期と言っても過言ではないと思います。伝統ある番組だと『笑ってコラえて!』(日本テレビ系)、そしてここ数年は『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)、『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京系)など……それらの先駆者的な番組に負けない面白さで、一般の方をインタビューしないと新しい番組として見せることはできないなと考えました。じゃあ他の番組にない特徴は何かというと「お笑い芸人が体を張ってインタビューし続ける」ということかなと。『夜ふかし』や『家、ついて行って~』は、スタッフがおそらく相当な時間と労力をかけて面白いインタビューを撮ってきている。じゃあそれを芸人さんというプロに託して、その様子をそのままドキュメンタリーとして見せたら、また違った番組に見えるのではないかと……。
――実際、撮影中は、ドキッとする瞬間があったり?
芦田:ロケでパンサーの尾形さんがいくつかの街で話しかけた人に本気で激怒されて…「40歳越えて人に本気で怒られたくない……」って泣き顔になりながらロケ頑張ってくれましたが、怒られた分、今のテレビではあまり見られない緊張感やドキドキを感じられるVTRになったと思いますし、普段の街頭インタビュー番組では絶対に聞けないディープな話を沢山引き出すことが出来ました。地上波の放送では泣く泣くカットした”ドヤ街“として有名な山谷での尾形さんのロケをAbemaTVではたっぷり入れ込んだので是非見て欲しいです。
「どんな媒体でもコンテンツが勝負。テレビは全く偉くない」

――芦田さんが、個人的に今楽しみにしている番組はありますか?
芦田:他社ですが、Netflix(ネットフリックス)はすごいですよね、まず根本的な予算の違いを感じます。俳優のブラット・ピットが『ウォー・マシーン』というNetflixオリジナル映画をプロデュースし、ご自身も出演していましたが、あのブラット・ピットがNetflixを選んで、オリジナル映画を作ろうって思わせる媒体にすでになっているのがすごい。凄いと思うと同時に、ブラット・ピットが「テレビ朝日と何か一緒に作りたい」というコンテンツ局に僕らがなれているかというと……全然負けてるよな」って危機感しか感じないですね。ブラピまでにいかないにしても、そういう人達に信用されるくらい局として、個人としてコンテンツ力を高めていかないとダメだなと思います。
地上波では『水曜日のダウンタウン』『ゴットタン』は学生の頃からずっと面白いですね。あと『脱力タイムズ』。フジテレビの良いところが詰まっているなって思います。あとは『あいつ今何してる?』がドキュメントバラエティというジャンルなので、他局でもドキュメンタリーは積極的に観ていますね。
――確かにNetflixなどは予算規模がすごいですよね。一方で、芦田さんが担当されている『あいつ今何してる?』はアイデアで面白い番組になっています。
芦田:そもそもの企画の出発点は「自分がやりたい」「@@くんを誰かが探して欲しい」と思って書いた企画書です。印象に残る放送回はたくさんあるのですが、中学生の頃ファンクラブに入るほど好きだった「ゆず」の2人が来て、笑い泣きするほど爆笑してくれたときは本当に興奮したし、自分もモニター観ながら泣きました(笑)。自分が青春を捧げた二人が自分がロケして編集したVTRを見て目の前で笑い泣きしてる……こんな気持ちいいことは無かったし、収録終わりで「最高に楽しかったです」と握手もしていただいて……本当に感慨深かったです。
――これからのコンテンツ作りでは、ネットの使い方も重要なポイントになりそうですが、ネットとの向き合い方はどう考えていますか?
芦田:若者がテレビを観なくなっていると言われている中でも『水曜日のダウンタウン』や、テレ朝で言うと『アメトーーク』や『激レアさん』のような番組は、毎回Twitterでトレンドに入りますよね。トレンドに入ったことで、SNSをきっかけに番組の話題に触れて気になった人がスマホからテレビに流入して観てくれる。そういう循環こそ現代的だし、テレビ局側は意識するべきだと思います。そういう環境の中で「どういう番組がバズるのか?」ということを戦略的に分析した上で「テレビでしか出来ないこと」「Abemaでしか出来ないこと」を突き詰めた企画をどんどん考えていきたいです。YouTubeもNetflixもある時代では、媒体と言うよりとにかく「コンテンツの質」が生き残れるかの勝負の分かれ目なので、間違っても「テレビはまだ王様」とか勘違いしちゃいけないなと思います。

▲『あいつ今何してる?』収録風景
――今後、芦田さんが目指すテレビマン像は?
芦田:まずここ数年の目標としては、おこがましいですが『アメトーーク!』や『水曜日のダウンタウン』のような自分の名刺がわりになる番組をもう一つ作りたいですね。最終的には「テレビ朝日」という母体に力を借りなくても「芦田は面白いもの作るからベッドしてみよう」と思われる面白いコンテンツを作り続けることができるような人間になりたいです。今、僕は番組を作る部署にいるので、面白いものを作っていれば、自然に会社に貢献する人間になっていくのではないかと思っています。
――これからも芦田さんが作る番組を楽しみにしています。今日はありがとうございました。
(ライター:中村梢)
(カメラマン:野原誠治)

