来月20日の投開票が決定した自民党総裁選。国会議員票405票と地方票405票の合計で争われ、過半数を獲得すれば勝利となる。きのう正式に出馬表明した安倍総理は、すでに細田派、麻生派、出馬を取りやめた岸田派など、国会議員票の約8割の支持を固めていると報じられており、石破氏の劣勢は明らかだ。そんな石破氏を支持するのは、自らの派閥「水月会」のほか、自主投票となった竹下派の参議院議員とみられており、「石破を支持でもしたら冷や飯だとか冷遇だとか、そういうことが報道される中にあって、本当にこれほどありがたいことはない」とコメントしている。
ANNが18、19日に行った世論調査によると、石破氏が42%、安倍総理が34%、そして出馬に意欲を示している野田聖子氏が10%、わからない・答えないが14%となった。一方、自民党支持者の回答は、安倍総理が58%、石破氏が31%、野田氏5%、わからない・答えないが6%で、ここでも安倍総理の強さが際立っている。
安倍総理の優勢が伝えられる中、石破陣営が期待するのが、前回ダブルスコアで安倍総理を圧倒した地方票だ。16日には「候補者同士の討論というものは絶対にお願いしたいと思っている。ぜひ、そういうことをやるべきだという世論が高まっていくようにお力を賜りたい」と述べ、安倍総理との直接対決を訴えた。世論に訴えて風を起こし、地方票の獲得を狙う。今回も毎週、全国各地を回って講演や選挙応援を行って票固めを目指してきた石破氏。しかし朝日新聞によると、安倍総理周辺では「党員や所属議員しか投票権がない。一般人にも届く討論会をしても仕方ない」「石破氏はモリカケ追及をやりたいだけで政策論争をやる気がない。相手にする必要はない」という声もあるという。
25日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した石破氏は「誰に選ばれて国会議員になったのか、ということが原点だと思う。みんな安倍さんに任命されて国会議員になったわけではないし、派閥のトップに任命されて国会議員になったわけでもない。有権者が一票を入れたから国会議員になっている。その有権者たちがどう思うのだろうか。"ディベートなんかやっても仕方がないじゃないか"という意見については、よくそんなことを言えるね、という気がする。もちろん日本と制度は違うが、アメリカ合衆国大統領はどんなに忙しくても、きちんとディベートに応じる。あれが合衆国の民主主義の凄さだと私は思っている。今の枠組みでは、自民党総裁はそのまま総理大臣になるのだから、国民に対して説明する責務がある。外交、社会保障、財政、教育。そういう問題についての論戦を聞いて判断されなければならない。自民党はそういう総裁選挙をずっとやって、色々な議論がある党だということを国民に示して信頼を勝ち得てきた。議論もしない自民党とは一体何なんだというのが私にはある」と主張した。
10日の出馬会見で「私は正直で公正、そして謙虚で丁寧、そういう政治を作りたい」と述べた石破氏は、「間違いは間違いと認めてお詫びをするという姿勢は、私は必要なものだと思っている。何も間違っていない、責任は自分にはない、少なくともそれは私のやり方ではない」と、森友・加計学園問題に対する安倍総理の姿勢を暗に批判している。番組でも石破氏は「モリカケなんてやっても仕方がないというが、国民に説明責任を果たすというのはどういうことなのか、ということ。確かに、犯罪があったわけではない。しかし、どうやって国民に信頼をしてもらうのかということだ」と述べた。
■「自民党の何が変わっちゃったんだろうな」
政治評論家の有馬晴海氏は「以前は自民党の中で、例えば若い安倍さんが1年で辞めると"次は年配の福田さんに"という、"振り子理論"みたいなものも含め、"野党に政権を渡さない"というスクラムがあった。ところが民主党政権から政権を奪還して以降、"野党は全く問題にする必要がない"という雰囲気が自民党の中に入ってきた。すでに安倍さんで衆議院選挙に3回、参議院選挙に2回勝っている。しかし、自民党は総裁選で議論を戦わせて、次の人が育ってきた。安倍さんがいなくなったときの次を育てるためにも、自民党を強くするためにも、総裁選は大事な選挙だと私は思っている」と指摘。
石破氏は「総裁選挙は誰でも出られるわけではなくて、20人の国会議員が推薦してくれないと出られない。"干す"とか色々な話がある中で、20人が応援してやるぞ、あるいは竹下派の参議院議員が応援してやるぞと言ってくれた。総裁選に出られる、そして国民の前で日本国がどうあるべきかを語ることができること。それは政治家として本当にありがたいことだと思う」とした上で、「私が高校生の頃は"三角大福中"といって、三木武夫さん、田中角栄さん、大平正芳さん、福田赳夫さん、中曽根康弘さんが総裁の座を争っていたが、みんな総理になられた。麻生さんが総理になられた時も私、与謝野馨さん、石原伸晃さん、小池百合子さん、そして麻生さん。前回も安倍さん、石原さん、小池さん、町村信孝さん、私。自民党の総裁選挙には大体、4人から5人が出ていて、侃々諤々討論して、その結果、総裁に選ばれていた。"派閥"と聞くとおどろおどろしい感じがあるが、本来は政策集団だ。自民党の政調会は次の国会に出す法案、今度の国会に出す補正予算案とか、そういう間近の問題に決着をつけないといけない。そこで10年先、30年先、50年先の日本をどうするかということを議論する場として政策集団がある。それぞれが政策を議論して、"こうだ"というのを作ってこそ政策集団。それなのに安倍さんの清和会、私どもの水月会以外から候補が出ないという。どういうことなのかは私には分からない。何が変わっちゃったんだろうな。"安倍総理でいい"ということは、政策もそれで良し、政治のやり方もそれで良し、自由民主党と政府の関係もこのままで良しということ。なぜ(安倍一強)か、ということを対抗馬の私が言うのではなくて、支持されている方々になぜなのかを聞く、ということだと思う」と話した。
2012年の総裁選で石破氏に票を投じた小泉進次郎衆議院議員のほか、無派閥議員45人の動向も注目されている。細田派関係者は「石破氏と小泉氏がタッグを組めばガラリと戦況は変わる」と話しており、石破氏は9日放送のBSフジの番組で「面会する機会を作りたい。色々な人と意見交換して党運営や政策で一致する部分があれば、支持してもらえればありがたい。小泉氏はその有力な1人だ」とも語っている。
番組でも石破氏は「300あった議席が119になって我々が野党に転落した時に、新人で当選してきた人が4人いる。自民党というだけで落ちる中、小泉さん、伊東(良孝)さん、齋藤(健)さん、橘(慶一郎)さん。あの厳しい中で通ってきたので、自民党はどうあるべきか、政治とはどうあるべきかをよく知っている。小泉さんはその中の1人だ」とした。
有馬氏は「自民党には建前上、派閥政治がある。ただ、国民の人気がある小泉純一郎さんが総裁選に出た時は、自分が次に当選できないかもしれないということで、派閥の枠組みがひっくり返った。派閥というのは、誰かがひっくり返ると全部がひっくり返る可能性がある。これから論戦をして、国民にどちらがいいのかを示してもらわないと」と話していた。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より」)