【インタビュー】
『ひとりと佳代子と気になるお嬢』テレビ朝日・寒川ディレクター
「それってどんな仕事?」と興味が湧いてしまう、珍しい職業の女性たちが登場する、トークバラエティ『ひとりと佳代子と気になるお嬢』。6月の特番放送を経て、現在AbemaGOLDチャンネルにて隔週レギュラー放送中だ。
劇団ひとりがお客として、オアシズ・大久保佳代子が“ママ”に扮するキャバクラにやってくる本番組。そこで“佳代子ママ”が“新入りキャバ嬢(珍しい仕事をしている女性)”をオススメしていくのだが、お客が「まだまだ話を聞きたい!」と思えば「延長」しても良し、もう充分と思えば「チェンジ」しても良し、というシステムのトーク番組となっている。
番組では、カリスマレズビアン風俗嬢、プロトラベラー、春画ールなど、少し話を聞くと、思わず延長したくなってしまうお嬢たちが次々と登場する。本作のディレクターを務めるのは、テレビ朝日・寒川拓郎(さんがわ たくろう)さん。前回のインタビューではお笑い愛と「あやまんJAPAN」愛が炸裂したが、今回のレギュラー放送にかける意気込みはいかに?
▼ 女性AV監督 鈴木リズが登場!【バラステ】ひとりと佳代子と気になるお嬢 #3
9月2日(日) 23時~
(※見逃し防止は番組表から「通知を受け取る」がオススメです)
「番組を観て泣いた」のツイートがうれしかった
――『ひとりと佳代子と気になるお嬢』がレギュラー放送化しました! 反響はいかがですか?
寒川:「あやまんJAPAN」と「あやまんJAPANを好きな人」が観てくれたんですかね(笑)。レギュラー放送化して、レズビアン風俗嬢のカリスマ・ゆづきさんという方に登場していただいたのですが、ゆづきさんはTwitterのフォロワーが4万人近くいて、ゆづきさんのファンの方が観てくださった。18歳以下はレズビアン風俗のサービスを受けられないので、特に中高生の子たちが見て感動したみたいで、動くゆづきさんを見て「感動して泣いてしまった」というツイートもありました。そのことで、次からは「個性的な仕事をしているお嬢」という事だけではなく、コアファンがいる人を選ぼうという、自分の中で新しい軸ができましたね。
――なるほど。5万人のフォロワーの方の半分が観てくれれば、それだけでもすごい数です。
寒川:Twitterのフォロワーで熱意がある方って、絶対に番組を観てくれるんですよね。タレントさんの場合だと、ファンでも「この人が出るなら見よう」と思う人って1%いるかいないか。そういう意味では一般の方でも濃いファンを持っている方のほうが、出演することで喜んでくれる人も多いのではないかと。
――ゆづきさん以外にも、プロトラベラーや春画ールという、面白い職業の方も登場しました。
寒川:この番組を放送して分かったことが、女性が多く観てくれているということだったんです。メインターゲットを男子10代~40代に向けて作ったけれど、女の人が見て楽しめるような番組も悪くないなと。それで、深夜番組的なノリというか、エロいことは盛り上がるって分かるけど、エロだけだと「お下品なことをやりたいんだな」って思われる、ふざけた番組だと思われてしまうので、そこのバランスはとっていきたいと思っています。
春画って、皆さん存在は知っていると思うのですが、20代の女性が海外の人に向けて英訳してSNSにアップして……ということをしてる人がいるのはあまり知られてないと思います。実際に番組ではいろいろな春画を見せていただいて、紹介しきれなかったものもあるのですが、タコだけではなく、エイと絡み合っている絵なんかもあって、エロさもちょうどよくて。あっ、先ほどエロだけじゃダメと言いましたが、「早くエロが見たいっていう」っていう男子からのコメントはやっぱりあります(笑)。
劇団ひとりに恩を感じる? “女体盛り”アート集団が登場
(▲「NYOTAIMORI TOKYO」)
――芸術としてエロさを感じるのは正しい春画の捉え方かもしれませんよね。改めて他の番組では聞けないお話ばかりで面白いです。
寒川:今後の放送で「NYOTAIMORI TOKYO」という、女体盛りでアート表現している方に出ていただくのですが、3年半くらい活動していて、バラエティ番組からのお声がけもあったけど1回も出たことがなかったそうです。なんでこの番組に出てくれるのかというと、劇団ひとりさんに恩があるから、ということで。昔、友達とカラオケに行ったときにお金がなくてハニートーストが食べられなかったそうなんですが、「お誕生日の人がいるか、ファンクラブでの集まりでそのファンの芸能人が誕生日だったら無料」というサービスを見て、その日誕生日の芸能人を調べたら劇団ひとりさんがいたと。その場で劇団ひとりさんのファンクラブを結成して、ハニートーストを食べられたらしく、ずっと恩を感じているそうです。ひとりさんは「俺を利用しただけじゃないか!」と言ってましたが(笑)。
――でも実際に劇団ひとりさんのことが好きなのは本当で、それをきっかけに番組に出ていただいたんですね。
寒川:実際に番組に出てくださる人を探す為にリサーチを行ったり、出演をお願いしたりすると「劇団ひとりさんの番組なら」「大久保佳代子さんが出ているなら」って方は多いです。特に、性業界の方にお話を聞くと、大久保さんはすごく人気があるんです。「ああやって、女性の性欲とか、きっぱり話しているのはカッコいい」って。やっぱりお2人は、ふざけている部分と真面目な部分の両方が素晴らしいですよね。そして、2人ともボケもツッコミもできる。大久保さんがボケて、劇団ひとりさんがツッコんでいたのに途中から逆転してる時か、(番組を)作っていて最高に楽しいです。
――劇団ひとりさんも、すごく生き生きしていらっしゃるというか、楽しそうですよね。
寒川:ありがたいです。台本もほとんど作り込まずに、その場で話してくださっている感じなんですよ。9月2日の放送では、女性AV監督にご出演いただいているんですが、劇団ひとりさんが好きなAVの話を熱弁してくれました。しかも、大久保さんも「私は実はこういうAVが好き」って自分のことも話してくれて。大久保さんはいろいろな番組で活躍されていますが、そういう趣味嗜好をシンプルに話すって意外と珍しいなと思い、ラジオっぽくてうれしかったです。そしてこの2人は、レズビアン風俗や女体盛りをふざけて語ることはなく、大切な仕事、芸術作品として、上品に受け取ってくださるのでそれも有難いです。
――自分の活動や仕事がバカにされた感じで演出されたら絶対嫌だと思いますが、上品さがあって賢い、ひとりさんや大久保さんの力ですね。
寒川:「収録が楽しかった」と言ってもらえるのが、一番うれしいんです。以前出演いただいた「手コキ研究会」の代表さんもあの後、AbemaTVの『日村がゆく』に出演されたそうで、『ひとりと佳代子と気になるお嬢』に出演してくれた方が、他の番組で活躍されていくのは楽しみです。
「女性を救う企画をやりたい」番組への思い
――今後はどのようなお嬢をピックアップしていきたいですか?
寒川:これはレギュラー放送化して、番組作りをしていく中で気付いたのですが、女性を救う番組を目指したいなと思いました。女性が人に言えなかったり、自分自身に不安を感じている性のことであったり、悩みを解消できるような話を取り上げたいなと。
今後、女性用の性感マッサージ店を立ち上げた方や、女性用SMサービス店をオープンした方に出演いただく予定なのですが、今までMの女性がSの男性に出会う為にはそういうバーで出会ったり、マッチングアプリを使ったりしていたそうで、でも知らない人と会ってって怖いじゃないですか。そういう「怖い思いをする女性を減らしたい」と、そういうお店を自分で立ち上げて。リピート率8割だそうで、大久保さんも「行ってみようかな」とコメントしてくださったのですが、意外と女性が求めていたサービスだったかもしれません。
――本当に救われる女性が多そう。寒川さんの着眼点はいつも面白いです。
寒川:あとは、先日吉原にロケに行ったのですが、吉原で働く女性の為のフォトスタジオを取材しました。これは、もともと吉原で働いていた女性が立ち上げたのですが、通常風俗店ってお店と契約しているスタジオで写真を撮って、その仕上がりに満足していない子って多いんです。その新しいスタジオは、トータルプロデュースして、4時間くらいかけてしっかり撮影してくれて、女の子の希望を全て叶えてくれるのです。実際にあやまんJAPANに体験してもらったのですが、吉原の中でもなかなか入れない場所の映像が見れるので、こちらも注目です。
――新しい職業、団体、新しい企画がどんどん飛び出してきて、これからの放送も楽しみです!
寒川:レギュラー放送化して、企画を長期的に見られるようになったことが有難いんです。短いスパンだったら、毎回レズビアン風俗のようなキャッチーで強い企画じゃないと厳しいけど、隔週放送だと「今度はこういう人を取り上げてみよう」とチャレンジができる。僕は若ければ若いほど、時代の新しさ面白さを知っていると思っているので、20代の子をできるだけ出したいと思っています。そういう子たちの感覚の方が僕より優れているから意見せず、教えてもらう気持ちでいつも番組を作っています。
そして個人的なレギュラー放送での楽しみは、毎回1人、今50人程いると言われているあやまんJAPANユースに出てもらえること(笑)。今、変な人が多くてたけし軍団みたいになってるんですよ。あやまんJAPANは飲み会を盛り上げるゲームをたくさん持っているのですが、いつか番組内でゲームを紹介して、学校とかで流行って欲しいなって思います。過去に放送していた『学校へ行こう』(TBS系)とか、ネプチューンさんの「たけのこニョッキ」とか、小規模でも番組をきっかけにそういうゲームが流行ったら面白いなって。
「妊婦をたくさん集めて、生放送で……」斬新すぎる企画力
――『ひとりと佳代子と気になるお嬢』はもちろん、今後AbemaTVでやってみたい企画はありますか?
寒川:妊婦さんをたくさん集めて、生放送で赤ちゃんが産まれてくるのを見守る番組を作りたいですね。スティービー・ワンダーさんを呼んでおいて、産まれた瞬間にハッピーバースデーを歌ってもらう。緊張感を出演者も観客も共有して、全員が子供の誕生を祝うって最高にハッピーだと思うんですよね。
「17live」とか「LiveMe」などの生配信サービスって、作りこみすぎてないから支持されていると思うんです。どれが作り物で作り物じゃないか、子供も分かっていて。Instagramのストーリー機能もそうですが、作りこまない凄さがあって、つい見てしまう。その生っぽさってリアルを見れているという利点がある分、「面白かったらラッキー」くらいで、面白くなくても文句が出ないというのはよくできた仕組みだと思います。
――それは、かなりチャレンジな企画だとは思いますが、人間が必ず産まれているわけですから、みんな興味ありますよね。
寒川:昔のように、老若男女全ての人が同じ番組を楽しめるというのは無理な時代になりました。10代女子と40代男性が観たいものが違っていて当たり前で。AbemaTVだと、こういう年齢の人が見ているというデータが細かく出るので、ターゲットをもっと絞った番組を作りたいです。「20代のこの番組を観ている男性は、こういう商品を欲しいと思っている」とかCMももっとダイレクトにあてるというか。ライバーとかYouTuberの多くの人が、自分の好きなことだけをやっているように見えて、どうやって制作費を生み出せるかって考えてやっている。テレビの番組制作の人たちはみんな面白さへの追求に関しては全力なんですが、効率的にお金を稼ぐためのターゲティングとかマネタイズに関しては興味がない人が多い。制作費が少ないという愚痴は言うのにお金を生み出すシステムに関してはあまり考えていない気がするんですよね。ライバーやYouTuberから思考を学ぶべきだと思います。
この『ひとりと佳代子と気になるお嬢』は、僕自身「自分だったら観るか」と考えながら面白い番組を目指していますが、そういったお金を稼ぐ仕組みも考えて取り入れていきたいなと思っています。
――寒川さんがこれからどんな番組を作るのか、ますます楽しみになりました。今日も楽しいお話をありがとうございました。
▼ 女性AV監督 鈴木リズが登場!【バラステ】ひとりと佳代子と気になるお嬢 #3
9月2日(日) 23時~
(※見逃し防止は番組表から「通知を受け取る」がオススメです)
(テキスト:中村梢)
(写真:オカダマコト)