4日夜、自民党総裁選(7日告示、20日投開票)への出馬を表明している石破茂元幹事長がAbemaTV『AbemaPrime』に生出演した。
■「本当のことを言うために、そしてそれを実行するために政治家になった」
冒頭、2分間の持ち時間で自己PRを求められた石破氏は、次のようにスピーチした。
「みなさまこんばんは、自民党衆議院議員の石破茂と申します。昭和32年2月生まれですので、61になりました。鳥取で小学校・中学校を出て、高等学校から東京です。学校を出てから株式会社三井銀行というところで、チャリンコを漕ぎながら日本橋で4年間仕事をしておりましたが、私が24の時に父親が亡くなったので、田中角栄さんに「お前が政治家になれ!」と言われて、国会議員になったのが昭和61年、29歳。当時では一番若かったです。
もう33年目になりました。当選11回。主に防衛の仕事、農林水産の仕事、地方創生の仕事をやってきました。ライフワークは防衛、憲法、農林水産、地方なのですが、私は「政治家の仕事ってのは、勇気と真心を持って真実を語る、それが仕事だ」と、渡辺美智雄さんというすごく偉い政治家に教わりました。「本当のことは自分で見つけなさい。その努力をしなさい。本当のことを見つけたら、それがウケなくてもきちんと語る勇気を持ちなさい。そしてそれを人にわかってもらえる真心を持ちなさい」。そのように言われました。
私は本当のことを言うために、そしてそれを実行するために政治家になったんだ、と思っています。勇気と真心を持って真実を語る。自分の保身を考えずに、ただひたすら国民に真実を語る誠実さを持っていたいなと。まだ至りませんが、そのように思っております石破茂であります。どうぞよろしくお願いいたします。」
■「ネット・若者受け」ができていないと自己評価!?
次に番組では「決断力」「誠実さ」「対話力」「ネット・若者受け」「健康力」の5項目で自己評価をしてもらった。
結果は意外にも控えめなもの。5段階中、最も高い4を点けたのが「健康力」「誠実さ」「対話力」だった。「20年以上診ていただいているお医者様には、"両親に感謝しなさい"といつも言われる。中学生の時から病気で休んだことが一度もない。無遅刻無欠席。大学の時もサラリーマンの時も政治家になってからも、体調が悪くて休んだことは一度もない」と、総理の激務にも耐えうる健康体であることを示唆した。また、自己PRでも登場した「誠実さ」に関しては「"私は誠実です"と言い切れるほどの度胸はない。一日を省みて、誠実じゃなかったと思うこともたくさんある。でもそうありたいなとずっと思ってきたし、亡くなって37年になるが、父親の教えはそれだけだった。だから4なんか付けちゃいけないのかもしれない」。
そして「対話力」については「私たちの仕事では"言いっ放し"はダメ。防衛大臣の時も、農林水産大臣の時も、結構難しい状況で就任した。"イラク派遣反対!有事法制とんでもない!コメの生産調整反対!"と。ただ、どれだけ相手が自分と違う立場であっても、話をとにかく全部聞いてから、どうしたら分かってもらえるかなと考える。そして"分かってください"と一生懸命言うしかない。それが仕事だし、ずっと心がけていること」と説明。
「国会答弁でも、相手の立場が違う人があればあるほど、その党の主張、その人の書いていること、言っていることを全部調べあげている。相手を知らないでいきなりぶつかれば議論にならないし、ともすれば議論しても仕方ないという雰囲気が生まれがち。例えば日本共産党の立場は我々と正反対。主義主張も違うが、すごく論理的に緻密。だから、なぜ反対なのか、どういう論理構成なのか、その人はどういう例を引いて演説しているかを調べ上げる。インターネットが発達していなかった時代は国会図書館にお願いして、機関紙なんかも出してもらった。資本の手先だとか、権力の手先だとか、労働者の敵だとか、そういうことじゃなくて、なぜ石破はこんなことを言っているのか、そこを大勢いらっしゃる共産党の支持者の方に理解いただきたいと思ってやってきた」。
ネットユーザーや若者の知名度も高い石破氏だが、「ネット、若者受け」の項目は他と比べて低く採点した。「ネットは使うように努力はしている。今回の総裁選挙でもインスタもやっている。ただ、なかなか若い世代の方々の文化に同化できないところがあって、そういうところがなかなか受けないかなと。"キャンディーズ全曲歌えます"と言っても"母が好きでした"と言われて(笑)。あと、顔が怖いというのも定評になっているから。変に媚びたり、おもねったりしてもしょうがないし、このままいくしかないとも思うが、できるだけ若い方々と話をしたいという思いはすごくある」。
■47の動画でアピールする「石破ビジョン」
総裁選に向け「石破ビジョン」と題して発表した「日本創生戦略」では、「ポストアベノミクスへの展開」「個性と自立性を発揮し、地方で成長と豊かさを実感できる真の地方創生の実現」「より人を幸福にする福祉社会の実現」「人生100年時代の新たな社会の創生」「自立精神に富み安心・安全な国の構築」と、安倍総理の実績・政策に対抗する5つの柱を盛り込んだ。
「アベノミクスは効果があった。株価は上がって、大企業は史上空前の利益だということになっている。ただ、大企業が利益を出して大都市が繁栄すれば、それはやがて地方にも波及していくかといえば、そうではない。東京の一極集中は止まらず、中小企業は厳しい状況で後継者もいない。東京だって高齢化問題や地震など懸念は多い。私が育った鳥取も、中学・高校の頃はすごく賑やかで、シャッター通りもなく、休みにはたくさん人が来ていた。当時はインフラ整備で雇用もたくさんあった。もう昔と同じことはできないが、農業・林業など、のびしろがある産業はいっぱいある。1718の市町村がそれぞれ産業を作って、地方を伸ばしていかないといけない」と、地方創生担当大臣や、農林水産大臣の経験も踏まえ、地方を強く意識。
47都道府県に向けたメッセージ動画を一斉もアップした。各地方の名勝や特産品、課題について5~10分間にわたってスピーチしている。例えば岐阜県の動画では『柳ヶ瀬ブルース』が持ち歌の一つ、という話に始まり、バリアフリーを推進する高山市や、特産の陶器が海外ブランドとコラボした土岐市の話など、県出身者でも知らない話題も盛り込まれている。「訪れる度にその地域のことを調べる。1時間演説するのに、5時間はかけて準備をする。実は"口裂け女"の発祥も柳ヶ瀬で、商店街がお化け屋敷で賑わっている。土岐市で作られた濃いブルーの焼き物がベルサイユ宮殿で使われて、ディオールとコラボしたら5倍の値段がついた。刃物の町・関市の"もしこの世の中に刃物がなかったらどうなるか"というテーマのPR動画がめちゃくちゃ面白い」など、豊富な知識を披露した。
■自民党を離党…かつての決断は「間違いなく私の人生最大の挫折」
そんな石破氏に対し、番組の視聴者からは「国民に寄り添った政治ができる男だ」「言うことがわかりやすい」「防衛に関してなら安倍より石破の方が詳しいやろ」といったコメントに加え、「リーダーには決断力が必要だ」「なんで自民党を離党してまた戻ってきたんだ」というツッコミも寄せられた。石破氏は1993年の離党、そして1997年の復党について「昔は中選挙区制といって、定数が4の選挙区に自民党から3人が出て争う、というような状況だった。そして、それを変えるのが自民党の方針だったのに、選挙に勝つとその方針を変えてしまった。それで自民党にいられなくなった。自民党の外で本当の自民党を作りたいという夢もあったが、行ってみるとやっぱり権力闘争だった。だとすればやはり自民党に戻ろうということで戻った。これは間違いなく私の人生最大の挫折」と振り返った。
今回で総裁選への出馬は3度目となる石破氏。岸田文雄氏や野田聖子氏が不出馬を決断する中、安倍総理との一騎打ちを選んだ理由について問われると、「今の自民党総裁は総理大臣になるなんだから、自民党員だけじゃなく、有権者に対しても選択肢を示すことが国民に対する義務だと思う。しかも"自民党に入ってください"とお願いするときの売り文句は、"党員になれば、あなたも総裁選で1票が入れられます"というものだった。それなのに誰も出なければ、今回の総裁選は無投票になってしまう」と説明。
まもなく告示される総裁選に向け、「同じ自民党だから目指す方向は一緒だけど、やり方が違ってたらどっちが良いか聞いてみないと分からない。選挙はやってみないと分からない。一切の手抜きをせず、一人ひとりと正面から向き合って、具体的にどうやっていくのかを示す。私は権力とか圧力とかそんなものは恐れないけど、国民一人ひとりを畏れて政治をしたいと思う。全身全力でやりたい」と力を込めた。
なお、あす20:30から放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、安倍晋三総理を招き、1時間にわたって話を聞く。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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