東京オリンピック・パラリンピックの開催まで２年を切る中、猛暑への懸念から大会期間中のサマータイム導入が議論されている。日本では戦後、GHQの指示でサマータイムが実施されるも、わずか４年で廃止。1995年以降も何度か議論が浮上したが、自民党内の反対などで実現していない。８月18、19日にANNが行った世論調査では、導入を「支持する」が36%、「支持しない」が53%となっている。また、EUでは実に84%の市民がサマータイム廃止に賛成しており、欧州委員会も健康面への悪影響や交通事故の増加などを理由に、欧州議会や加盟各国に廃止を提案している。
15日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ！』に出演した元大蔵官僚の高橋洋一氏は「韓国でもソウルオリンピック開催のために導入したが、うまく行かずにすぐやめた。オリンピックのために導入するというのはなかなか難しいだろう」と話す。
経済紙などでサマータイム批判を展開してきた高橋氏は「私が小泉政権の中にいた時代にも、経産大臣の意向で検討されたことがある。小泉さんに"どう思うか"と尋ねられたので、"朝早く起きないといけない"と答えると"じゃあ反対だ"と（笑）。システムを変えるのにも時間がかかるし、もしできたとしても健康面、経済面での損失もある。日本は世界の中でも睡眠時間が短い国。さらに早起きさせれば、睡眠不足で仕事を間違えるし、それによる経済ロスは下手をするとGDPの3%、15兆円ほどの損失になるという試算もある」と指摘。「以前は省エネに繋がるからという話もあったが、最近は電球もLEDになるなど、省エネ効果も少なくなってきている。そこで余暇の話が持ち出されている。社員を早く来させて残業させたいという経済界の意図も透けて見える」と推進派を批判した。
組織委員会の森喜朗会長が先月、安倍総理との会談の中で導入を要請、安倍総理も自民党に検討を自民党に指示。構想では、６～８月の３か月間だけ時計を２時間早めるというもので、推進派は来年夏の試験実施を視野に入れているという。導入のメリットとしては「照明や冷房などの使用量が減り、省エネや温室効果ガス削減につながる」「アフター５の活動が活発になり、経済効果が見込まれる」「通勤・通学時に明るい時間が増え、犯罪や交通事故の減少につながる」といったことが挙げられているが、高橋氏が主張するように「コンピューターのプログラムや交通ダイヤの変更などに手間とコストがかかる」「就業時間がまだ明るいので、残業時間が増加する」「体内時計が乱れ、睡眠不足など体調への悪影響がある」といったデメリットも予想されている。
自民党は秋の臨時国会への法案提出に向けた研究会を27日にも設置する予定だが、菅官房長官が「暑さ対策の1つのご提案として受け止めているが、国民の皆様の日常生活に影響が生じるものであり、大会までの期間はあと２年と限られていることもある」と述べるなど、慎重論も根強い。
すでに暑さ対策で、マラソンのスタート時間は30分前倒しとなっているが、猛暑だった今夏の場合、午前７時時点ですでに35.2℃となっている日もあった。自民党の川松真一朗都議は「マラソンのスタート時間をさらに早めて５時にすればいいという人もいるが、準備する人は２時、３時から動かないといけないことになり、現実的に無理だ。だから時間を動かしましょうというのは、マラソンのことだけを考えればありだと思う。ただ、もともとはサマータイムを考えずに競技スケジュールも決めた。実は準備している皆さんはあまりサマータイムの議論には入っていない。森会長たちの議論も、一つの可能性として検討してみたらどうだろうという段階だ」と説明した。（AbemaTV／『みのもんたのよるバズ！』より）
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