黒木華が主演を務め、大森立嗣監督がメガホンを取った映画『日日是好日(にちにちこれこうじつ)』が10月6日(土)より8日(月・祝)までの3日間限定で先行上映、そして10月13日(土)より全国公開される。原作はエッセイスト・森下典子が約25年間、茶道教室に通い続けた日々を綴ったエッセイ『日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』(新潮文庫刊)。今回AbemaTIMESは、就活や失恋などに悩みながらも茶道を通して成長していく主人公・典子を演じた黒木華にインタビュー。1ヶ月間特訓したという茶道シーンの裏側や、今年9月15日に亡くなった樹木希林さんとの共演について聞いてきた。(なお、このインタビューは9月6日に実施されたものである)
『日日是好日』は等身大の女性・典子の悩みを描いている
(C)2018「日日是好日」製作委員会
ーー物語の第一印象を教えてください。
黒木:最初お話をいただいたときは「お茶の映画ってどんな物語になるんだろう」と思ったんですけど、大森監督から説明を受けて、森下さんのエッセイを読ませていただいたら、「お茶」もすごく重要なポイントではあるけれども、一人の女性が「お茶」と出会ったことによって成長していく過程を描いている物語だと分かりました。また、たくさんの方が共感する悩みが描かれていて、これは人間ドラマとして面白そうだなと思いました。
ーー典子という女性についてはどのように捉えましたか?
黒木:典子はいわゆる普通の女性です。就活に関しての悩みだったり、自分が本当は何がしたいのかなど、恋愛もそうですけど、いろんな人に(考えていることが)当てはまる。逆に活発で自分のやりたいことが決まっている美智子(多部未華子)のような人は少ないと思うんです。典子の不器用だけど前に進んでいく感じに励まされます。
ーー典子はかなりの年月をかけて前に進んでいきましたね。
黒木:自分が経験した年齢っていうのはある程度想像と実感とでできますけど、40代は難しかったです。しかもお茶を24年間続けてきたという蓄積のある雰囲気・佇まいというのは、どう出せばいいか分からなくて、監督や着物に助けてもらいながらなんとか演じました。
ーー実年齢より上の役はどのように演じましたか?何か参考にしたものや、監督からのアドバイスがあれば教えてください。
黒木:周りの人たちを観察しました。何年も着物を着てきている人の動きだったり、話し方だったり、そういうところに落ち着きというか慣れがあるんです。森下さんが現場にいてくださったので、(森下の動きを)少しだけ真似してみたり、そういうことで少しずつやっていきました。逆に若い頃は落ち着きなく振る舞ったり。
ーー最初の方で、「畳一帖を6歩で歩く」という作法に苦戦するシーンがありますね。とても難しそうだと思ったのですが、所作に苦労したシーンはありますか?
黒木: “即立ち”というのがすごく難しかったです。正座から両足を揃えて立たなきゃいけないんです。最初は典子と一緒で、混乱することばかりでした。なので、そこはすごく素直な気持ちで演じられました。畳を何歩で、ここの角を通ってとか、最初は覚えるのがすごく難しかったです。「お茶のシーンは長回しで撮りたいからちゃんと覚えてきてほしい」と言われていたこともあって、1ヶ月くらい練習させていただいたんですけど、大変でした。
ーーでは最初の方のきょどつきはリアルな黒木さんということで。
黒木:リアルです。リアルに初心者が間違えることをやっています(笑)。
ーー一人の女性の半生を演じる、黒木さん出ずっぱりの映画でしたが、プレッシャーはありましたか?
黒木:ありました!原作者の森下さんご本人も茶道監修として現場にずっといらっしゃったので、緊張感もありました。完全に森下さんを真似ているわけではないんですが、「自分なりの典子」でやらせていただいたので、(森下が)楽しんでくれたらいいなと思いました。
樹木希林さんの演技に感動「歳をとるにつれてだんだん小さくなって…」
(C)2018「日日是好日」製作委員会
ーー武田先生役の樹木希林さんはどんな方でしたか?
黒木:樹木さんは役者としても女性としてもすごくかっこいい方でした。あんなに雑味なく、力を抜いて、その人を演じることができるというのにはすごく憧れます。うまく見せようとかもないし、変な気負いがない。ただただその役としてそこに居るというのが、わたしにはまだできないです。「どうしたらいいかな」と試行錯誤しながらやっているのですが、樹木さんにはそういうのが全く見えない。樹木さん自身が生きてこられた厚みが役を通して見えて、すごく魅力的なんです。普段の樹木さんも、人を緊張させない空気感を持ってらして、全くかたくるしい事をおっしゃらないんです。だけどすごく品があって、素敵だと思います。樹木さん演じる武田先生は、歳をとるにつれてだんだん小さくなって、着物がどんどん余っていくんですね。そういう着方とかもすごく考えられているんだろうなと思って、やっぱりすごい方だと思いました。森下さんは樹木さんに「武田先生のお点前に似ている」とおっしゃっていました。会ったことないはずなのにすごいですねって。
ーー最後に、本作には印象的なセリフや言葉がたくさん出てきますが、黒木さんが特に感銘を受けた言葉はありますか?
黒木:「世の中には『すぐわかるもの』と、『すぐわからないもの』の二種類がある。すぐにわからないものは、長い時間をかけて、少しずつ気づいて、わかってくる」というのはグッとくる、腑に落ちる言葉でした。わたしはあまり長続きしない、三日坊主な方なので、余計にしみました。
ーー素敵な言葉ですね! 今日はお話ありがとうございました。
ストーリー
とにかく私はお茶を習うことになった。二十歳の春だった。
たちまち過ぎていく大学生活、二十歳の典子(黒木華)は自分が「本当にやりたいこと」を見つけられずにいた。ある日、タダモノではないと噂の“武田のおばさん”(樹木希林)の正体が「お茶」の先生だったと聞かされる。そこで「お茶」を習ってはどうかと勧める母に気のない返事をしていた典子だが、その話を聞いてすっかり乗り気になったいとこの美智子(多部未華子)に誘われるまま、なんとなく茶道教室へ通い始めることに。そこで二人を待ち受けていたのは、今まで見たことも聞いたこともない、おかしな「決まりごと」だらけの世界だった――。
■黒木華/ヘアメイク:新井克英/スタイリスト:井伊百合子(little friends)デニムパンツ :chimara(チマラ)
『日日是好日』は10/6(土)、7(日)、8(月・祝)先行上映
10/13(土)シネスイッチ銀座、新宿ピカデリー、渋谷シネクイント、イオンシネマほか全国ロードショー
写真:You Ishii
テキスト:堤茜子