昨年5月、「スーパーフードを食べているのに肌が汚いと書かれていたので…」とInstagramにすっぴんの写真を投稿した道端アンジェリカさん。自身の肌についてネット上でバッシングを受けたことから、素顔と共にある病気をカミングアウトしたのだ。
「ファンに"アンジェリカさん憧れています。すごくきれいです"と言われると辛かった。みんなが見ている私と現実があまりにも違いすぎて、誰とも会いたくなかった。ご飯を食べていても目線が気になっていた」。
道端さんを悩ませていた皮膚の病気、それが「乾癬(かんせん)」だ。免疫機能が異常を起こして自分の肌を攻撃、炎症を引き起こす。また、患部に通常の10倍の速さで皮膚が作られていくことから、できた皮膚が成熟せず積み重なり、ぽろぽろと大量に剥がれ落ちてしまう。原因不明で、根治療法もないこの病気に、日本だけで推計50万人が苦しめられている。
大半の患者が"尋常性"と呼ばれる乾癬だが、中には乾癬性紅皮症、滴状乾癬、汎発性膿疱性乾癬などといったものに罹患する人もいる。免疫の異常が関節に及び炎症が合併、腫れ・痛み・変形を伴う乾癬性関節炎の重篤な患者は「この変形した手を人に見られるのが嫌でずっと手袋をしていた。携帯も親指でしかできない。ツムツムも全部親指でプレイするから、下手くそなんです」と苦悩を滲ませた。
皮膚科医の菅井順一医師によると、比較的、成人した大人に多い病気で、症状にも様々なバリエーションがあり、治療によって症状が止まる人もいれば、なかなか治癒しない人もいるのだという。
5日、道端さんは都内で開かれた乾癬の啓発イベントに登壇、病気に対する正しい理解を訴えた。頭皮が剥がれてしまうため、美容室で不快な思いをさせていないか不安に思う。電車内で誰も隣に座らないと、避けられているのではないかと自分を追いつめてしまう。寝室で身体を見せられず、性的な関係を避けてしまう…。イベント会場には、認知向上のため、患者が日々悩みを感じる象徴的なシチュエーションを表した展示も設置された。
道端さんは「どうしても"うつるもの"だと思われてしまう。でも感染しないということを知ってほしい。一緒にお風呂やプールに入ったり、触ったりしても絶対に平気。男性とスキンシップをしても何の問題もない」と訴えた。
■「不潔だと見られてしまうことがあるので、隠すことばかりを考えていた」
8日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に生出演した乾癬の当事者の一人、山下織江さん(39)は、道端さんの告白は患者会でも話題になったと話す。「SNSで自身が乾癬であることを告白する人が出てくるなど、言いやすい世の中になってきたように感じている。私も今ここにいるのが夢のようです」と話す。
そんな山下さんは13歳の頃、頭皮に乾癬が発症した。「最初はフケだと思い、髪の縛り方やシャンプーを変えてみたり、女の子なので坊主にはできないが、できるところまで短くしたりした。それでも治らないので皮膚科に行き、乾癬だということがわかった。フケのようなものがパラパラと落ちて、"どうしたの?髪の毛洗っているの?"などと言われてグサッとくるときがあった」。
酷い時には腕全体に症状が出たため、人目を気にして長袖しか着られなかったという。「異性の関係においても乾癬があることで積極的になれず、"結婚は難しい"と言われショックを受けたこともある」。
お天気キャスターの仕事をしていた大学時代には、全身に症状が広がった。下を向くだけでフケが雪のように降り、ものの数分でフケの山ができる時もあった。「頬に乾癬が出ることがあったので頬で隠したり、良くないとは分かっていながらもファンデーションを厚めに塗ったりするなどして一生懸命隠していた」。華やかだがプレッシャーも多い仕事の中、乾癬であることを周りに明かすことができず、ストレスも相まって症状が悪化。新たに関節炎の症状も出た。
「なんとなく手先がこわばって、指先と足が腫れてきた。痛いときには牛乳パックや缶を開けることができないほどだった。当初は乾癬と関係があるとは思わず、放っておいたら全身がこわばってきて、息をするのも痛いことがあって、朝起きられないこともあった。整形外科でリウマチの治療をし、痛みを抑えていたが、自分で調べていくうちに乾癬と関節炎に関係があると知り、医師に相談をして総合的に治療を行ってきた」。
20代後半で結婚、出産を経験して関節炎の症状は和らいだが、皮膚症状は悪化した。昨年から生物学的製剤の治療を開始した。新しい治療薬のおかげで症状は止まったが、今も腕や背中には乾癬の跡が残り、「半袖を着るのは勇気がいる」と話す。
「不潔だと見られてしまうことがあるので、隠すことばかりを考えていた。フケのような症状が出るので色の濃い洋服は着られず、かといって皮膚を掻くと血が滲むので、なかなか白い洋服も着られない。タイトな洋服を着ると肌がこすれて悪化することもある。だからぼやけた色で、ダボダボとした洋服ばかり着ていた。お洒落できないのが悲かった。周囲の人から"どうしたの?"と言われても"日焼けをしたくないから"と答え、暑いときでも長袖長ズボンを履く人が多い」。
「見た目問題」に取り組むNPO法人「マイフェイス・マイスタイル」の外川浩子氏は、「当事者が声をあげるのは勇気が必要だ。聞いたり触れたりすることを見る側がタブー視せずに向き合えば、もし治らなかったとしても当事者の生き方は楽になる」と話す。
山下さんも「日本ではあまり知られていないがアメリカでは認知度の高い病気で、アメリカ留学の際にはホストファミリーが薬を売っている場所を気軽に教えてくれ、気持ちが楽になった。半袖半ズボンで過ごすこともできたので、症状も良くなった。そういう経験から、社会的認知度を高めることがとても重要だと考えている」と話した。
■新たな治療法も「諦めないでほしい」
20代の頃に「強皮症」に罹り、今も額に痕が残るカンニング竹山は「症状はこれ以上進まないと言われているし、前髪で隠れているから世の中の人はほとんど知らないと思う。実はバラエティ番組で有吉やザキヤマがいじってるんだけど、スタッフが気を遣っているのか、カットされてるんだよね」と話し、皮膚病による見た目問題に悩む人たちに共感を示す。
治療法はまだ確立されていない乾癬だが、外用薬(塗り薬)のステロイド・ビタミンD3、内服薬のアプレミラストなどのほか、近年登場した生物学的製剤(注射・点滴療法)によって、人が生成するタンパク質をもとにした薬免疫機能などに関わる物質(サイトカイン)の働きを弱め正常に近づける療法も有効だという。
菅井医師は「細胞は病気を作る際に色々な細胞と連絡を取り合っているので、その情報を伝達する物質(サイトカイン)をブロックすることで病気を出てこなくするということだ。この薬が出てきたのはここ5~10年くらいで、現在は高額な薬だが、需要が高まり、時間が経過すると値段が下がることもある。収入や保険によって個人差はあるが、高額医療の減免制度があるので工夫すれば使うことができる」と話す。
山下さんも、患者会で生物学的製剤の治療を受けている人の話を聞き、「子供と海やプールに行きたい」と治療を希望したという。「お医者さんから"一生治らない病気"と言われたことが一番つらかったというアンケートもあり、治療を諦めがちになってしまう患者もたくさんいるし、判断ミスで悪化させてしまう人もいるが、正しい情報に繋がり、実際に治療を受けている患者の声に耳を傾けて、積極的に治療を行ってほしい。乾癬を理由に何かを諦めるようなことはしないでほしい」。
菅井医師も「乾癬の元々の原因は分かっていないが、どのようなメカニズムでこの病気ができてくるのかは分かってきた。医学が進歩すると共に、この病気は様々な細胞が連絡を取り合ってこの病気を作り上げていることが分かったので、様々な治療法が出てくるだろう。生物学的製剤もどんどん新しい種類の薬が出てきているので、担当の先生に聞いたり、患者をサポートする学習会に出向いて正しい知識を身につけたりするなどしてほしい」と訴えた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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