将棋の第31期竜王戦七番勝負が、10月11日から開幕する。防衛すれば前人未踏のタイトル通算100期、失冠すれば1991年以来、実に27年ぶりに無冠になる羽生善治竜王(48)は前日の10日に取材に応じ「いよいよ始まるんだなあというところですね。少しずつ緊張感というか、緊迫感を感じています」と、心境を語った。挑戦者は今期11連勝なども記録した実力者の広瀬章人八段(31)。タイトル1期、順位戦A級と確かな力を持つだけに、白熱したシリーズになりそうだ。
大偉業か、無冠への転落か。長年に渡り第一人者として将棋界を盛り上げ、引っ張り、育ててきた羽生竜王が、大きな節目に立っている。既に史上最多となっている通算でのタイトル獲得数は99。あと1つで初めて100の大台に到達する。一方、敗れれば1991年以来、1つ以上は持ち続けていたタイトルをついに全て失い「羽生九段」と呼ばれることになる。若手棋士であれば、羽生竜王が段位で呼ばれることを聞いたことがない棋士も大勢いる。それだけ偉大な記録が途切れる可能性がある。
将棋界大注目のシリーズを前にしても「永世七冠」は、いたって自然体だ。対戦相手の広瀬八段については「非常に若い頃から活躍していましたし、シャープな棋風ということもあります。(今期11連勝には)いつも活躍されている棋士でもあるので、地力といいますか、実力もある人と思っているので、そういうこともあるのかなと思っています」と、いつもと変わらぬ口調で答えた。
報道陣からタイトル100期、さらには無冠について質問が飛んでも「(タイトル100期は)結構言われることなので、意識するところも多いんですけど、対局が始まってしまえば盤上に集中して、打ち込んでやりたいなと思います」と、将棋の内容とは関係ない数字は、持ち込まない思いでいる。
今年は一時、8大タイトルを8人が1つずつ持ち合う群雄割拠の状況が起き、その中から20代の豊島将之二冠が、唯一の複数冠となり一歩抜け出た。40代、30代、20代にタイトルホルダーがいる、まさに世代交代のうねりの中で、今なお頂点に君臨するのが羽生竜王だ。「今回のシリーズは非常に歴史的に由緒ある場所で数多く対局することになるので、その舞台にふさわしいものが残せたらいいなと思っていますし、ファンのみなさんにも楽しんでもらえるような内容を残せればと思います」と締め括った羽生竜王。まさに将棋界の歴史に残るシリーズで、どんな将棋を棋譜に残すのか。
竜王戦七番勝負は持ち時間が各8時間の2日制。第1局は10月11、12日に東京都渋谷区のセルリアンタワー能楽堂で行われる。AbemaTVではこの対局を終了まで生中継する。
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