日本三大酒処のひとつとして有名な東広島市・西条を舞台に、伝統文化の象徴である日本酒造りを軸としながら、その土地で暮らす人々の生活、そして幻の日本酒を巡る物語を描いた作品『恋のしずく』が10月20日より公開される。日本酒造りの魅力に惹かれる平凡な女子大生を瑞々しく演じるのは、本作が初主演となる女優の川栄李奈だ。作品について、そして本作が遺作となった大杉漣さんへの想いを語ってくれた。
映画初主演に不安も「日本酒苦手なのに、この映画の主演をやるってどうなんだろうって(笑)」
――今回の作品のオファーを受けていかがでしたか?
川栄: マネージャーさんから主演映画をやると言われたのですが、私は日本酒があまり得意ではなかったので、最初はすごく不安でした。アルコールが強いお酒が苦手で、好んで飲まないので、そういう人がこの映画の主演をやるってどうなんだろう、って(笑)。でも演じる役が、日本酒が苦手な役ときいたので、やってみようと思いました。日本酒に関しては本当無知の状態でしたので、そこが役柄とリンクして演じやすかったです。
――その“あまり飲まない”日本酒ですが、この作品を通じて飲むようになりました?
川栄:広島の撮影で、杜氏の方がいろんな日本酒を用意してくださったので、それは飲みやすかったですね。でもお酒って無理矢理飲むものじゃないので、ビールも飲まない人がある時急に飲めるって言うじゃないですか。今はそれを待とうと思っています(笑)。
まるで合宿状態!キャストと密に過ごした撮影期間
――撮影中の雰囲気はいかがでした?
川栄: キャストの方々がとてもフレンドリーで優しくて、本当に親戚の集まりみたいな雰囲気でした。環境がそうさせてくれたところがあって、休憩中は皆でこたつを囲んでご飯を食べたりして、自然に話して仲良くなっていきましたね。撮影期間は1ヶ月弱だったのですが、ご飯もほぼ毎日みんなで行ったりしていたので、だいぶ密な時間を過ごしました。
――皆さんとはどんなところへ行かれました?
川栄: 焼肉とか居酒屋とか。それこそ劇中で出てくる居酒屋にも行きましたね。今回共演者の方々は年齢が結構離れている方が多くて、みなさんお姉さんとかお兄さんみたいな感覚で接していたので、とても楽しかったです。私、2つ上とか3つ上とか、微妙な年の差の方とはすごく距離が空いちゃうタイプなんです。小市さん(小市漫太郎)や宮地さん(宮地真緒)は同じシーンが多かったのですが、年も少し離れていたので、すごく話し易かったですね。
――相手役の小野塚さんとの共演はいかがでしたか?
川栄: 小野塚くん(小野塚勇人)は2つ上なのですが、それを感じさせない地元感というか。地元にこういう友達いるなぁ、みたいな(笑)。そんな親しみ易さがあったので全然気を使わなかったです。小野塚さんはこの役がぴったりすぎて、完成した映画を観終わって、「小野塚さん、めちゃめちゃイイじゃん!」って思いました。本当に私が主演?みたいな(笑)。でもこの映画はみんなの物語がちゃんと描かれているので、私は主演にさせていただいていますが、みなさんが主演の映画だと思っています。
クランクアップの日、大杉漣さんから言われた言葉
――今回本作が遺作となった大杉漣さんと共演されていらっしゃいますが、初共演ということで、共演されていかがでしたか?
川栄: すごく優しかったです。初共演だったのですがとても気さくな方で、今回共演ができてすごく嬉しかったです。最初、この役が最後まで決まってなかったので、誰になるんだろうって思っていたら、「もしかしたら大杉漣さんになるかも」と聞いて、「めちゃくちゃ嬉しいです」って言っていました。なので、本当に大杉さんの出演が決まってとても嬉しかったです。大杉さんは作品への熱量がすごくて、ひとつひとつの作品をすごく大事にされているなと感じて、その思いが主演としてすごく嬉しかったです。
漣さんがクランクアップした日に、「また川栄さんとはお仕事一緒にすると思うから、またね」って言って下さって、すごく嬉しかったです。それからご一緒できなかったのが本当に残念ですが、こういう大先輩とお芝居できる環境にいたということを、本当に誇りに思っています。
広島・西条への想い「みなさんの背中を押す作品へ」
――西条での撮影はいかがでしたか?
川栄: 地域の方たちが本当によくしてくださったし、すごく空気が綺麗でのどかで素敵な街でした。私は神奈川出身でおばあちゃんも神奈川なので、地方でお正月を迎えるということがなかったのですが、西条はまるで田舎に帰ってきたような気持ちになりました。
――広島での撮影期間で美味しかったものは?
川栄: みんなで焼肉を食べたのですが、そこが美味しかったですね。たまたま小市さんと宮地さんが行ったお店の焼肉屋が営業をしていなかったのですが、そしたら違うお店を紹介してくれて。営業していないのにお肉を大量に持ってきてくれたりして(笑)、美味しかったです。今回撮影で、地元の方々とも仲良くさせていただいて、また行きたいですね。
先日の豪雨被害で私たちが控え室で使わせてもらった蔵が浸水されたと聞きました。それでもこの映画を公開させてもらえるって聞いたときは、やはりこの映画を観て、西条の良さをいろんな方に知ってもらいたいなって思ました。本当に広島の方にたくさん見てもらって、みなさまの背中を押す作品になっていたらいいなと思います。
ストーリー
舞台は酒蔵で有名な東広島市・西条。農大に通う大学三年生の詩織(21)は、意に反して日本酒の蔵へ実習に。やる気のない蔵元の息子、厳格な杜氏、不倫に悩む美咲。老舗酒蔵での出会いに彼らの人生は転がり始める。愛らしくて、せつなくて、そしてじんわり味わい深いヒューマンドラマ。
(C)2018「恋のしずく」製作委員会
インタビュー:編集部
カメラマン:You Ishii